症例紹介

永久歯の先天欠損

まず永久歯が生えて来ないのには、二通りの理由があります。

1. 永久歯はあるが、埋まったまま出て来られない位置にある

2. もともと永久歯の元(歯胚)がない

「永久歯はあるが埋まったまま出て来られない位置にある」は埋まった状態によって色々なケースがありますが、

顕著な例として「移転歯」という状態があります。

では「もともと永久歯の元(歯胚)がない」という症例ですが、こういった状態を「先天性欠如」といいます。

この先天性欠如は特定の病気や障害などの影響が原因の場合もありますが、ほとんどのケースが原因不明です。

そしてこの先天性欠如は増加傾向にあり、2007年の日本小児歯科学界の大規模調査では、

日本人約1万5千人中、10.01%のお子さんに先天性欠如が発現しているという報告でした。

つまり現代っ子の10人に1人は永久歯の数が足らないということです。

パノラマレントゲンを撮ると分かります。

10人に1人。これは結構な発現頻度です。1クラスに何人かはいるということですので、他人事ではありません。

皆さん、ご自分の、またはお子さんの歯の数をちゃんと把握していますか?

現代人の永久歯の数は上下左右各7本ずつで合計28本です(親知らずを含まない)。

ただ、歯の生え変わりの時期というのは、かならずしも左右対称に生え変わってくれるわけではなく、

一般の方には乳歯と永久歯の区別もつきにくいので、正確に把握することが難しいと思います。

そこで有効なのが、パノラマレントゲンです。

 

小学生になるころに、将来生えてくる予定の永久歯はすでに顎の骨の中にスタンバイしています。

実はこの上記のレントゲンの患者さんは先天性欠如があります。どの永久歯が欠如しているかわかりますか?

一般に先天性欠如は比較的発現しやすい箇所があります。中心から二番目の側切歯と五番目の第二小臼歯です。

もちろんそれ以外の歯でもおこる可能性はあります。また欠如歯は一箇所とは限りません。

先述の統計では先天性欠如のある方のうち、

1歯欠如51.7%、

2歯29.0%、

3歯5.6%、

4歯5.0%、

5歯以上欠如8.6%となっています。

先天性欠如がみつかったらどうすべきか?

では、先天性欠如が早期発見できたらどうしたらよいのでしょう?

まずはご両親に言いたいのは、

「どうしてなってしまったんだろう?」

「妊娠期になにかいけなかったんだろうか?」などとマイナス思考にならないでほしいということです。

先ほど述べましたように先天性欠如は10人に1人はあらわれます。

たとえば髪の天然パーマと同じように、ひとつの個性としてとらえてよいと思います。

天然パーマの髪も癖の強さによっては苦労される方もおられますが、逆に上手くスタイリングして素敵なヘアスタイルにされている方もいらっしゃいます。

顎の骨自体が小さくて歯が並び切らずに凸凹になっている方がたくさん歯列矯正に来られます。

そういった場合きれいに並べるために歯を抜かなければなりません。

もともと顎の小さい方の場合、先天性欠如歯があることで、歯並びの凸凹が少なくなっている場合もあります。

ただ、皆が皆そう上手く納まるわけではありませんし、先述のように咬み合わせに影響が出る場合もあります。

早い段階で先天性欠如を把握して、きちんと将来を予測して計画性をもって対処していきましょう。

先天性欠如の対処法

先天性欠如歯の本数にもよりますが、大別すると二つの方向に分かれます。

まず乳歯が健康な状態であるということが大前提です。

乳歯の歯根は自然に吸収されて徐々に短くなっていく傾向がありますが、

よい状態の乳歯であれば30代40代まで抜けずに残る場合があります。

先天性欠如部分の乳歯は乳歯だからといって虫歯の治療をおろそかにしたりせず大切に長持ちさせてあげてください。

先天性欠如がわかった時にはすでにボロボロだったり、

大事にしていたけれど歯根がなくなって抜けてしまった場合には人工の歯を入れるか、

残された先天性欠如以外の歯で歯並びを作るかのどちらかです。

人工の歯というのは、入れ歯・ブリッジ・インプラントのどれかです。

 

ただし、ブリッジもインプラントもある程度、大人の咬み合わせになって顎の骨がしっかりしてこないとできません。

それまでは、できるかぎり乳歯を温存するか、周囲の歯が倒れてこないように、

入れ歯や保隙装置(隙間を維持する装置)などを入れる必要があります。

では、「先天性欠如以外の歯で歯並びを作る」ですが、

これは、顎の小さい方に向いている治療法で、

永久歯がない部分の隙間は前後の歯を動かして閉じます。

上下左右のバランスをとるために追加で抜歯する必要がある場合もありますが、

たとえば凸凹の歯並びの方で矯正治療のために第一小臼歯を上下左右一本ずつ計4本抜歯が必要な症例ですと、

すでに1本先天性欠如があれば、抜歯は3本ですみます。

 

先天性欠如の部位や本数によってはバランスをとるのが難しくなる場合もありますので、注意が必要です。

矯正治療とブリッジやインプラントを併用する必要がある場合もあり、出来れば比較的早い段階から長期的な計画をもって治療することが望ましいといえます。

最後にもうひとつ自家歯牙移植という方法もあります。

複数の歯が欠如している場合で、上下または左右のバランスが難しい場合、

たとえば下顎の歯は全部そろっているのに上顎の歯は4本も欠如しているといった場合に、下の歯を抜いて上顎に移植するなどです。

技術的に難しく、抜いた部分や移植した歯と周りの歯の形のバランスをどうするか?

などの問題もありますが、もともと自分の歯なので安定しやすいといったメリットもあります。

さて、先天性欠如歯について、一通り述べてまいりましたが、要は歯についてもっと知っていてほしいということです。

先天性欠損が10人に1人という高頻度のわりにいまひとつ認知度が低いのが現状です。

 

現代では対処法いろいろありますので、過剰に不安になる必要はありませんし、何も知らずに放置するのも考え物です。

正しい知識できちんと対応していきましょう。

まずは小学生になったらパノラマレントゲンで確認をしましょう。

上記のレントゲンでは、親知らず以外の永久歯がすべてあります。

上記のレントゲンでは、上下左右の奥から3番目の永久歯の歯胚(成長中の歯)がありません。

この場合は特に、乳歯も可能な限り虫歯などにさせないほうがいいでしょう。

 

 

関連記事

PAGE TOP