宇都宮市兵庫塚町の歯医者 やまのうち歯科医院の山之内です。
今回は、虫歯の感染について書いていきます。
昨今虫歯の原因菌について言われていることはありますが、子供の虫歯のリスクを高くする菌はミュータンス菌と思われます。
また、一口にミュータンス菌といっても、実はいろいろなタイプがあり、グループ分けもされています。
母子を対象にした研究で、多くの親とその子から性状が同じミュータンス菌が検出されました。
という複数の報告が1970年代からされており、2000年以降も含め、性状だけでなく遺伝子の解析など、多方面から検討がなされました。
そして、親と子では共通のミュータンス菌がいる、すなわち親から子にうつっていることを示す研究結果が積み上げられてきました。
さらに、これら多くの論文を系統的にまとめて再解析した論文においても、子の世話をする人から子への、特に母親が主に世話をする場合は、母から子へのミュータンス菌の伝播には科学的根拠があると結論づけられると述べられています。
以上により、ミュータンス菌が親から子にうつることは、科学的な根拠をもっていわれていることなのです。
しかしながら、乳幼児期のスキンシップの重要性はわかっており、この狭間で悩む人も多いのではないでしょうか?
では、虫歯菌に感染するからと、乳幼児期に口移しで食べたり、キスをしたりすることは避けた方がいいのでしょうか?
虫歯菌の感染が問題なら、口腔ケアを念入りにすればいい話で、口移しも含めてスキンシップを制限する必要はないと思われます。
実際、虫歯菌が移ったとしても虫歯菌が増える環境でなければ悪化はしません。
食生活や飲食物によって変わってくるといわれています。
それでなくともスキンシップが禁じられてしまうパンデミックな状態で、スキンシップ欠如の子供への影響の方が深刻に思われます。
ハーバード大学心理学科は、1歳半ぐらいの幼児は唾液の交換を伴う行動を見て、社会性を判断していることを示した研究でサイエンスに掲載されている文献があります。
幼児期での親密性の概念:幼児期に唾液の共有を人間同士の親密さを判断するのにしようしているというタイトルです。
この研究は、他人の唾液が混じるのをいとわない行為は、人間同士の親密な関係を示すとのことです。
唾液が混じるという行為は、親密でないと行わない行為ですから、大人だけでなく子供もわかるということなのですね。
同じストローでジュースを飲んでいる子供と、別々に分けて食べている男女の子供を見て、唾液が混じっても同じストローでジュースを飲んでいる子供の方がより兄妹である可能性が高いと感じるとのことです。
1歳半の幼児のみならず、8ヶ月の乳児でも、唾液を共有していることを感知し、それを親密なサインとして理解しているとのことです。
他にも様々な確認実験を行い、人はかなり早い段階から社会的親密度を判断でき、その基準として唾液共有が行える仲かどうかで判断しているということです。
いずれにせよ、唾液共有をいとわない関係を積極的に作らないと、子供に親密とは思ってもらえないことを示した論文です。
虫歯菌が感染するからという理由で、お子さんとのスキンシップを避けるということはしないほうがいいとのことですね。
ただし、スキンシップをする前に虫歯や歯周病の治療を行い、虫歯菌や歯周病菌を少なくしたうえでスキンシップをしましょう。
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