歯周病の検査 ポケットの診査時の圧はどれくらい?

栃木県宇都宮市兵庫塚町の歯医者 やまのうち歯科医院の山之内です。

歯周病治療で初めに行う検査の一つ、歯周ポケット検査について書いていきたいと思います。

適切なプロービング圧は何Nなのか?

プローブを使用した検査による人体への侵襲は限りなく小さいといわれています。
プローブ検査とは、、歯周病の進行度を把握するための検査です。

プロービングに関して「プローブのような鋭利なものを歯周ポケットに挿入して害はないか」という疑問がよく挙がります。
プロービングに限らず、何かが身体に侵襲を与えるかどうかを確認するために人体を使って実験することは倫理的に難しいのは当然です。
そこで、動物を使った実験によってシミュレーションになります。
1972年、TaylorとCamplellによる実験では、メスで歯肉溝部の歯肉と歯を切り離したところ、5日間で付着上皮により完全な治癒が起こりました。
→メスのような刃物で切開したとしてもこのような治癒が起こることから プロービングをしても特に大きな問題になるとは思えません。
プロービングを過度に危険視せず、正しい認識と知識をもつことが大事になります。
プロービングを行った後には、当然ながら歯肉縁下のデブライトメントが行われます。
場合によっては、歯周外科手術も行われる。歯周組織への侵襲という点だけを考えたら、これらの治療が引き起こすのはプロービングの比ではないと考えられます。
2004年、Axelssonによる研究でこのようなものがあります。

プラークコントロールプログラムに組み入れた患者を30年間追跡。

その中でも繰り返しプロービングを行っているが、30年間で歯が喪失した原因としてもっとも多かったのは、プロービングが関係するとは考えられない「歯の破折」でした。
→よほどやり方を間違えない限り、プロービングが非可逆的に組織破壊を引き起こす可能性は極めて少ないといえます。
プロービングの結果は、さまざまな要因によって左右されやすいプロービングの結果に影響を及ぼす要因があります。
・プローブの挿入方向
・歯石の有無
・修復物のオーバーハング
・プローブ先端の直径…大PPD浅、小PPD深

・プロービング圧…強PPD深、弱PPD浅
・プローブ先端の形態
・歯肉の炎症

支持組織が減少しているが健康な歯周組織におけるプロービング時の出血とプロービング圧の関係についての研究というものがあります。
慢性歯周炎で支持組織が減少したが、治癒によって歯周組織が健康となった患者における適切なプロービング圧を検証することがテーマです。
中等度から重度の歯周炎に対する治療後のメインテナンスに2~6年通院していた患者10名に対して行っています。
年齢層は36~69歳です。
被験者はメインテナンス期間を通じて極めて良好な口腔衛生状態を維持し、歯肉の炎症症状もごくわずかであった。また、期間中に支持組織の喪失がなかったこともPPDやエックス線写真で確認されました。

研究方法
研究をはじめるにあたって、被験者全員に対し、ラバーカップやMIペーストを使った口腔清掃が行われ、その後、以下の内容を行っています。
研究開始14日後:プラーク指数および歯肉炎指数を記録しています。
研究開始2日後、12日後:各4分の1顎ごとにそれぞれ0,125ニュートン(N)、0,25N、0,375N、0,5Nでプロービングが行われました。
上顎右側、上顎左側、下顎右側、下顎左側の4つに分けて行っています。
規格加重エレクトリックプローブ(先端の直径は0,4㎜)でプロービングを行った後、BOPの有無を記録しています。

ニュートン(N)=力を表す単位。
質量を表すグラム(g)とは意味合いが違うため、厳密には換算できないが、ここでは大体1Nを102gと考えています。

結果として、
プロービング圧が0,125Nの場合、BOPが起こる頻度は2,5%、0,25Nで4,7%、 0,375Nで5,1%、0,5Nで7,9%となりました。
また回帰分析の結果、プロービング圧とBOPの頻度との間に有意な相関がみらえれました。
上記の研究結果と、同じ研究者によって1991年に発表された研究の結果をあわせての結論はプロービング圧は0,25Nを超えるべきでないというものです。
→すなわち、0,25Nを超えると歯周組織が健康状態を保っているにもかかわらず、出血が起こる可能性(擬陽性率)が高くなってしまうということ。
これが、現在一般的にポケット圧が25グラム程度とされている文献だといわれています。
ただし、上記の結果をみると、0,25Nと0,375Nの場合ではBOPの頻度にさほど違いがないように思えます。
上記の研究、1991年の研究ともに、歯肉の炎症が存在する場合にどれだけ疾患を見逃す可能性があるか等の分析はなされていません。
したがって「プロービング圧は0,25Nを超えるべきではない」という結論には少々疑問がのこります。
数多くの文献などから総合的に考えると、プローブ先端の直径が0,35~0,4㍉の場合は0,25N~0,5N、0,63㍉の場合は0,5~0,75Nのプロービング圧が最適であると考えられます。
⇒プローブ先端の直径によって、適切なプロービング圧にはばらつきがあります。

重要なことは治療前と再評価時で同様の圧でプロービングを行うということ。再現性の高いプロービングを目指すことです。

考察
やまのうち歯科医院では頻繁にプロービングを行っています。
メインテナンスに移行した方では3~6ヶ月に1回程度。
歯肉を傷つけることがないよう細心の注意をはらって行いますが、それでもやはり文献にあったような「プローブのような鋭利なものを歯周ポケットに挿入して害はないか」という疑問は挙がって当然ではないかと思います。
よほど間違えない限りプロービングが組織破壊を引き起こす可能性は極めて少ないとあります。
よほど間違えたやり方”をすれば可能性は0ではないともいえます。
心配な方は、歯周病専門医がいる歯科医医院がいる歯科医院で見てもらってはいかがでしょうか?
私たちは、プロービングを行うにあたり、適切なプロービング圧で細心の注意をはらって実施していかなければならないとあらためて感じさせる文献でした。

あとがき
歯科医のなかには、歯周病検査にプローブを行わないという突飛な先生もいます。
検査で感染させてしまうからだというのです。
その先生での歯周病の検査をしていませんので、もちろん自費治療になります。
位相差顕微鏡やRTPCR法による細菌の状態検査がありますが、これだけでは歯周病の状態がわかるわけではありません。
感染症とは、病原体(=病気を起こす小さな生物)が体に侵入して、症状が出る病気のことをいいます。
それであれば、体内にいなくなれば治癒したことになり意味があります。
いなくならない常在菌を調べて、その増減を調べて意味があるのか疑問になります。
さらに治療に抗生物質で菌を減少させるとの暴挙も行っています。
急性症状の時に行うのはわかります。
慢性症状の時に抗生物質を投薬するのはいかがでしょうか?
MRSAによる菌血症とフルオロキノロン耐性大腸菌による菌血症で年間約8,000名が死亡とのこともありますし、その他の耐性菌によってなくなる方もいらっしゃいます。
なので、抗生物質で歯周病菌等を一時的に除去できても、しばらくすれば元に戻ります。
全身の状態を悪くしてまで、抗生物質を服用するメリットは少ないと思います。

歯周病治療には、適切な検査と治療そして、定期的なメインテナンスが最も重要なことになります。
そのどれがかけても良い結果には結び付きません。
皆さんのお口の健康を保つために頑張りましょう。

歯周病検査にはいろいろ方法があります。気になる方は下記をクリックしてください。
歯周病治療に必要な治療 歯周病検査

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