コラム
【歯周病治療のひとつ】“歯の固定”は本当に必要？
栃木県宇都宮市兵庫塚町の歯医者 やまのうち歯科医院の山之内です。
歯周病治療の一つに、暫間固定というものがあります。
歯がグラグラしていると、不安になりますよね。
「抜けてしまうのでは？」「何か固定してもらえないだろうか？」
そんなふうに感じて、歯科医院を訪れる方も少なくありません。
確かに、**歯の動揺（ぐらつき）が強くなると、食事や発音に支障が出るばかりでなく、日常の不安につながります。
そこで登場する治療のひとつが、「暫間固定（ざんかんこてい）」**です。
ただし、やみくもに固定しても、歯周病治療にはつながりません。
今回は、暫間固定の正しい役割と注意点、そして歯周病治療との関係についてわかりやすくお話しします。
暫間固定とは？ 〜歯が揺れているときに行う処置〜
暫間固定とは、歯が動かないように一時的に隣の歯とつなげて固定する治療です。
その目的は「歯を長く使えるようにサポートすること」。
特に以下のようなケースで検討されます。
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歯周病により顎の骨が吸収され、歯がぐらついている
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外傷（打撲や事故など）で歯が動いてしまった
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歯周外科手術後に、歯の安定が必要な場合
このうち、歯周病治療においては、骨移植などの再生療法を行う際に歯を安定させる目的で用いられることがあります。
論文が示した「固定の有効性」
最近の研究では、歯の動揺が強い部位に対して暫間固定を行い、そのうえで骨移植材を使用すると、
術後の歯の安定性が大きく改善するという結果が報告されました。
これは、インプラント治療とも共通しています。
インプラントを埋入する際にも、骨移植部位には外力が加わらないように細心の注意が払われます。
なぜなら、骨の再生や補填材の硬化には“安定した環境”が不可欠だからです。
つまり、動揺のある歯にそのまま再生療法をしても、材料が定着せず失敗に終わる可能性がある。
そのため、術前に「一時的な固定」で安定させることで、再生の成功率が高まるのです。
固定すればいいというわけではない
ここまで読むと、「じゃあグラグラしてる歯は、すぐに固定してもらえばいいんだ！」と思うかもしれません。
しかし、それは大きな誤解です。
暫間固定にはメリットがある一方で、以下のようなデメリットも存在します。
固定による注意点
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清掃がしにくくなり、プラークがたまりやすい
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固定されていると動揺に気づきにくく、症状の進行に気づかない
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固定している健康な歯に負担がかかり、トラブルの原因になることも
つまり、「グラグラしているからとりあえず固定」ではなく、固定が必要な根拠と計画がなければ、かえって悪化するリスクもあるということです。
暫間固定の本当の目的は「歯を守るための一手段」
暫間固定は、歯周病治療の中で特定の状況下において有効となる処置です。
特に、以下のような目的で使用されます。
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骨再生治療中に歯を安定させる
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かみ合わせの調整が必要な場合の一時的な支持
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重度の動揺があり、患者さんの生活の質を下げている場合
しかし、これらは原因をしっかり除去・管理できていることが大前提です。
プラークコントロールができていなければ、どんなに固定しても改善にはつながりません。
まとめ：固定は「最終手段」ではなく「治療の一環」
暫間固定は、あくまでも歯周病治療の中の一つの手段です。
歯がグラグラしているからといって、むやみに固定することは、かえって他の歯まで悪くするリスクがあります。
適切な診断と治療計画のもとで、固定が必要と判断された場合にのみ行うべき処置なのです。
もしご自身やご家族の歯がぐらついていて気になるようであれば、
ぜひかかりつけの歯科医院で歯周ポケットや骨の状態をしっかり検査してもらいましょう。
正しいタイミングでの固定は、歯の寿命を延ばす大切なステップになるかもしれません。
上記のイラストは、固定の仕方です。
部位や条件によって固定の方法は異なります。
その他に、歯周病と力についた内容があるので興味がある方は見てくださいね。
