矯正治療 マウスピース矯正
栃木県宇都宮市兵庫塚町の歯医者 やまのうち歯科医院の山之内です。
目次
マウスピース矯正とは
インビザラインについて
マウスピース矯正の得意なことと不得意なこと
今、話題になっているマウスピース矯正について書いていきたいと思います。
矯正治療には通常の頬側につける矯正、裏側につける矯正、マウスピース矯正があります。
マウスピースを使用して矯正をするメジャーな方法として、インビザラインシステムがあります。
金具やワイヤーを使わず、取り外し可能な透明なマウスピース型の装置を使用して歯並びを治す歯科矯正法です。
とても目立たない装置なので、装着しているのを気づかれることはほとんどありません。
使い方は非常にシンプル。薄く透明なマウスピースを一日20時間以上装着し、1~2週間ごとに新しいマウスピース にどんどん交換していくことによって歯をゆっくり移動していきます。
使うマウスピースはすべて最初の段階でまとめて作られますので、頻繁に歯科医院へ通って歯型を取っていくという方法ではありません。
銀色の装置を付けるのではなく、白い詰め物を使用して動かすようにしています。
透明に近いマウスピース装置(アライナー)による矯正歯科治療を提供するAlign Technology, Inc.(米国アライン・テクノロジー社)は、同社の海外地域におけるその年の最も優れたインビザライン治療症例を選出する「Global Invisalign Gallery Peer Review Awards」を実施しています。
各国のインビザライン・ドクターによる公正な投票の結果、矯正の治療症例が決まります。
「Global Invisalign Gallery Peer Review Awards」は、米国アライン・テクノロジー社の海外地域における各国のインビザライン・ドクターから提出された治療症例を掲載する「Global Invisalign Gallery」(http://global.invisaligngallery.com)から、その年の優れたインビザライン治療に与えられる賞だそうです。
治療前後の臨床情報のみによる公正な評価で、各国のインビザライン・ドクターがインターネットにて投票します。
2012年度以降何度も受賞したに日本人歯科医師からの講演で、インビザラインを行うなら通常のワイヤー矯正を行うことができなければいけないと力説していました。
その当時から、数をこなすともらえる称号について疑問を呈していました。
確かに、数多く行うことにより経験値が上がりますが、成功率が低ければ泣く患者さんが増えてしまいます。
マウスピース矯正は装置が薄いため違和感が少なく、樹脂製なのでお口の中を傷つけにくい特徴があります。
金属アレルギーの人でも問題なく治療可能です。 また、ワイヤー矯正に比べて歯を少しずつ動かすため、比較的痛みを感じにくいこともメリットです。
金属ではないので、矯正治療中でもMRI検査をすることができます。
そもそも顎の骨格に原因がある出っ歯の場合は、マウスピース矯正での適応症例外です。
マウスピース矯正に関わらず、ワイヤーを用いた矯正においても顎の骨格矯正は困難で、外科的な措置が必要になる場合があります。
インビザラインを多く手掛けながら、マウスピース矯正が苦手なところはワイヤー矯正にして再度マウスピース矯正にするそうです。
通常の矯正でも矯正だけで完全に治すことは無理なことがあると思います。
先天的な歯の形態異常がある歯に、しっかりと噛めるようなかみ合わせにすることは難しいと思います。
また、骨格的な問題を歯の移動だけでどうにかできないこともあると思います。
そのため、骨切りという外科的な方法を行うことがありますし、インプラント矯正という方法もあります。
骨が薄い人に矯正を行い、歯肉が下がることもあります。
これは、マウスピースでもブラケットを使う通常の矯正でも起こることがあります。
その場合可能であれば、歯肉移植を行い改善することもできることがあります。
それらの治療計画やフォローをできるようにならなければいけません。
マウスピース治療が悪いわけではありません。
それを使用する歯科医師の問題になります。
ブラケットと呼ばれる装置にもたくさんの種類がありますし、つけるワイヤーや
上記のインビザライン専門の歯科医で、10年間で3000症例程度です。
レッドダイヤモンドプロバイダーの年間1000症例がどれほどなのかわかると思います。
マウスピース矯正ができない方は下記の方です。
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歯周病(特に重度の歯周病の方)の人
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顎の骨格に問題がある人
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多くのインプラントが入っている人
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埋まっている歯がある人
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マウスピース矯正に不向きな人
歯周病とは、歯の周辺組織である歯茎が腫れたり、歯を支えるあごの骨が溶けてしまう病気です。
重度の歯周病であごの骨(歯槽骨)が溶けている場合、マウスピース矯正を含め、すべての歯科矯正を行うのが難しいです。理由は、歯科矯正で安定して歯を動かすためには歯槽骨の再生(と破壊)が必要になるためです
対応策
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歯周病を治してから矯正を行う
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ふだんの歯磨きやデンタルケアをしっかり行う
軽度の歯周病であれば治療を行い、症状が改善されたら矯正が可能になることもあります。
また、歯周病は軽度であれば歯磨きや歯科クリニックで受けるクリーニング(歯石取りなど)で症状を改善できる場合があります。ふだんから歯磨きをしっかり行い、あわせて歯科クリニックで定期検診・クリーニングを受け、歯周病の症状を悪化させないように心がけましょう。
あごの骨格に問題がある人
下あごや上あごが前に突き出ているなど、あごの骨格そのものに問題があり、骨格が原因で歯並びが乱れることがあります。あごの骨格が原因の不正咬合(歯並びや噛み合わせがよくない状態)はマウスピース矯正を含め、歯科矯正だけでの対応は困難です。
対応策
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歯科矯正と外科手術を組み合わせて治療を受ける
あごの骨格に問題があり、骨格が原因で歯並びが乱れている場合、歯科矯正に加え、口腔外科や形成外科、美容外科で外科手術を受けることであごの骨格および歯並びを改善が可能なケースがあります。
歯を大きく動かす必要がある歯並びの人
重度の受け口や重度の出っ歯、重度の叢生(ガタガタ歯)の治療で歯を大きく動かす必要がある場合、マウスピース矯正だけでは対応できないことがあります。
マウスピース矯正は少しずつ歯を動かすため、上記の重度の不正咬合の治療で必要とされる「歯の大きな移動をともなう矯正」は苦手です。
マウスピース矯正は歯を内側や外側に動かすのは得意です。しかし、「前や後ろに歯を平行移動させる」動きは苦手とします。奥歯を起点に歯を平行移動させる重度の出っ歯や重度の受け口、抜歯矯正の治療は難易度が高くなります。
対応策
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ワイヤー矯正に変更する
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ワイヤー矯正とマウスピース矯正を組み合わせる
ワイヤー矯正は軽度から重度の不正咬合や抜歯をともなう矯正まで、幅広い症例に対応可能です。マウスピース矯正では対応できない場合でも、ワイヤー矯正であれば対応が可能になるケースがあります。
マウスピース矯正だけでは対応できない症例の場合、ワイヤー矯正とマウスピース矯正を組み合わせる方法もあります。前半にワイヤー矯正で歯を大きく動かし、後半にマウスピース矯正を行います。
歯科矯正では歯に力をかけ、歯を覆う歯根膜を収縮させることで歯を動かします。
しかし、インプラントは人工歯根であり歯根膜が存在しないため、動かすことができません。
インプラントの本数が多いと動かせない範囲も大きくなるため、マウスピース矯正は難しくなるでしょう。
しかしながら通常の矯正も困難といわざるを得ません。
対応策
多くのインプラントが入っていて矯正ができない場合、部分的に歯を動かしてその間にブリッジやインプラントを埋めるようにしたり、被せ物を利用する方がいい場合もあります。
埋まっている歯がある人
埋まっている歯が親知らずの場合は、マウスピース矯正で対応することも可能です。
しかしほかに埋まっている歯があり、矯正によって埋まっている歯を引っ張って動かす必要がある場合は、外科的治療と混合する必要があります。
対応策
埋まっている歯を引っ張り出す治療を「埋伏けん引」と言い、これはワイヤー矯正のほうが得意だといわれています。
歯茎を切開し、埋まっている歯にボタンのような装置にワイヤーやゴムなどをつけたものを取りつけ、それを使って両側の歯のブラケットとワイヤーの位置までけん引します。
マウスピース矯正に不向きな人
歯並びの状態としてはマウスピース矯正が可能でも、生活スタイルがマウスピース矯正に不向きな場合もあります。
なぜならマウスピース矯正は、自己管理が非常に重要な矯正方法だから。
1日20時間の装着時間を守れないと、計画通りに歯が動かないリスクがあります。
そのため不規則なライフスタイルの人や、食事の後にしっかり歯磨きをしてからマウスピースをつけられない人など、自己管理に不安要素がある場合は、ワイヤー矯正をすすめられることもあるでしょう。
マウスピース矯正を含め、歯科矯正はドクターと二人三脚で進めていくもの。
マウスピース矯正の場合、以下のようなルールはしっかり守る必要があります。
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毎日20時間以上装着する
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オーラルケアをしっかり行う
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指示通りに通院する
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マウスピースを破損・紛失・合わなくなったらすぐに連絡する
- お酢や酸性のものをよく飲食するときはよく磨いて、マウスピースもよく洗ってから使用する。過去に酸蝕症になった方がいらっしゃたそうです。
歯科医師は、医師です。
医業は大切ですが、医師として倫理観が最近少なくなってきている感があります。
医療倫理四原則というものがあります。
① 自己決定の尊重(Autonomy):患者の意思を尊重しましょう
② 善行(Beneficence):患者に善いことを行いましょう
③ 無危害(Non-maleficence):患者に害を加えないようにしま しょう
④ 公正(Justice):限りある医療資源を公正に配分しましょう
上記の医療倫理に恥じないように診療していきたいと思います。
新しい治療だから効果がある。ほかの医療で使用しているから歯科でも同様に効果があるわけではないということがわかる文献です。