うがい薬の使い分けについて
栃木県宇都宮市兵庫塚町の歯医者 やまのうち歯科医院の山之内です。
うがい薬、洗口剤について書いていきたいと思います。
うがい薬や洗口剤は現在様々な種類が出ていると思います。
歯科用の洗口剤には、その作用機序から大きく分けると2つのグループにすることができます。
ひとつは、「歯面やプラークの表面に付着して作用する」タイプのものと、もうひとつは「プラークの深部へ浸透して作用する」タイプのものです。
歯面やプラークの表面に付着して作用する洗口剤
このタイプの洗口剤は、歯面やプラークなどの表面に付着することで、殺菌作用を発揮し、プラークの形成を抑制する効果が期待できます。
その主成分としてグルコン酸クロルヘキシジンを含むものと塩化セチルピリジニウムを含むものがあります。
グルコン酸クロルヘキシジンを含むもの
この薬剤を含む洗口剤は海外では広く使用されています。
日本での使用は濃度がかなり下げられています。
虫歯や歯周病予防をお考えであれば、まずはこの薬剤を含む洗口剤を試していただきたいと思います。
商品としては、ウエルテック社のコンクールF、サンスター社のバトラーCHX洗口液などがあります。
塩化セチルピリジニウムを含むもの:この薬剤は、低濃度でも細菌に結合し作用することが特徴で、毒性や刺激を少なくすることができます。
商品としは、ライオン社のシステマSP-Tメディカルガーグル、サンスター社のガムデンタルリンス ナイトケア、アース製薬社のモンダミンプレミアムケアなどがあります。
プラーク(細菌の塊)の深部へ浸透して作用する薬剤
このタイプの洗口剤は、歯面やプラーク表面への結合は弱いが、プラークの中まで薬剤が浸透することによって殺菌性を示す薬剤が主成分となっているものです。
ポピドンヨード
この薬剤は口腔細菌全般に対して強い殺菌作用を示します。
稀にこの薬剤にアレルギーのある方がおられますので注意が必要です。
色や匂いに抵抗なければ良い薬剤だと思います。
頻繁に使用すると歯に色がつくことがありますが、歯医者でのクリーニング等で除去は可能です。
塩野義製薬社のイソジンうがい薬があります。
エッセンシャルオイル
エッセンシャルオイルは、植物に含まれる有機化合物で、フェノールを主成分とする複数の天然由来成分を含みます。
殺菌作用の他に抗炎症作用もあります。
ジョンソン・エンド・ジョンソン社のリステリンがあります。
洗口剤の使い方について
洗口剤は、プラーク(歯垢)の付着抑制や細菌の増殖抑制効果が期待できるため、虫歯になりやすい人や歯周病の方あるいは歯周病予防を考えておられる方などにはお勧めします。
また口臭抑制効果もありますので、口臭が気になる方にも良いかもしれません。
使い方は、各薬剤の説明書等に詳しく書いてありますので、それを参考にしていただければよろしいかと思います。
ただ、大まかに言って、各グループの洗口剤の薬効を考えると以下のような使い方が、より効果的ではないかと考えられます。
まず、「歯面やプラークの表面に付着して作用する洗口剤」のグループのものは、できれば丁寧に歯磨きした後に、あまり時間を開けずに使われるのが良いかもしれません。
例えばガムデンタルリンス・ナイトケアなどは、夜歯磨きをしてしっかりとプラークを除去した後に仕上げとして使われるとより効果的と思われます。
一方、「プラーク深部へ浸透して作用する薬剤のグループ」の洗口剤、例えばリステリンなどは、プラーク内に浸透して作用することから、プラークの形成が始まってから用いる方がより効果的であると思われます。
この薬剤は歯磨き直後よりはむしろ歯磨きをして2〜3時間経ってから用いる方が良いようです。
ですので、昼間歯磨きがなかなかできにくい方とか、夜歯磨きをして就寝までに時間がある方は就寝前にこのような洗口剤を使用されると良いかもしれません。
左からコンクール、ネオステリングリーン、モンダミン
塩化セチルピリジニウム
塩化セチルピリジニウムは0.05%や0.075%の濃度での洗口で口臭抑制効果が報告されています。
市販の物では「モンダミン メディカルケア」「ガム デンタルリンス」「薬用ピュオーラ 洗口液」などの洗口剤に広く利用されています。
クロルヘキシジンに比べると殺菌力は劣りますが、味や刺激が少ないという特徴もあります。
また陽イオン性化合物であるため、バイオフィルム内の細菌に対して殺菌力を発揮できないことが弱点とされていますが、歯面に吸着してバイオフィルム形成を阻害するため、ブラッシングとの組み合わせで効果が向上するといわれています。
実際にブラッシングのみに比較して、口臭が抑制されたという報告があります。
トリクロサン
トリクロサンは、家庭用の抗菌剤として薬用石鹸、食器用洗剤、洗口剤、歯みがき剤などに広く利用されています。
しかし2016年にアメリカではトリクロサンなどを含有する抗菌石鹸を、殺菌成分による耐性菌増加のリクス、ホルモンの働きを阻害するなどの健康への影響を理由として販売停止が発表されました。
現在日本でもトリクロサンを含まない製品への切り替えが進んでいます。
前述は、歯について細菌や歯周病についてのうがい薬についての説明をしてきました。
歯や歯周病以外にも、使用目的があります。
それ以外の分類法として、抗菌成分を含むものと含まないもの、これについても2種類に分けることができます。
口腔内の消毒作用を期待する場合は抗菌成分を含む含嗽薬を使うということになります。
まず抗菌成分が入ったうがい薬というのはどのようなものがあるのでしょうか。
その代表的なものとしては、商品名で申しますと、イソジンガーグルとネオステリングリーンがあります。
イソジンガーグルとネオステリングリーンとはどのようなものでしょうか。
イソジンガーグルの抗菌成分というのはポビドンヨードで、これは抗菌スペクトルも広く、抗菌効果が非常に期待できるものです。
イソジンガーグルのもう一つの特徴としましては、ウイルスに対しても効果を発揮できるという点があります。
うがいを行う際に、うがい薬が浸透する上気道、すなわち口腔内ですか咽頭部に潜伏している細菌に対して有効ですので、咽頭炎とか扁桃腺が腫れる症状が出る病気に対して処方されることが多いです。
それから、ネオステリングリーンですけれども、抗菌成分は塩化ベンゼトニウムで、いわゆる逆性石けんです。
陽イオン界面活性剤ですので、芽胞のない細菌ですとか、かび類に抗菌作用を示して、洗浄作用や角質溶解作用があります。
通常は口腔内の消毒ですとか、歯科の分野で言いますと、歯を抜いた後の感染予防などに用いられます。
イソジンガーグルのほうが守備範囲が広いという感じで、咽頭のほうから口腔内まで、ネオステリングリーンのほうは歯とか歯肉に対してのものに使用する傾向にあります。
実際に、咽頭炎の方などにイソジンガーグルを使うのですけれども、ネオステリングリーンは、歯を抜いた場合が一番多いと思われます。
それ以外にも口腔外科で侵襲的な処置をしたときにも処方することがあります。
つけ加えさせていただくと、抗菌成分を含む含嗽薬として、イソジンガーグルとネオステリングリーンを挙げたのですけれども、そのほかにもう一つあります。
これは薬局で購入できる医薬部外品で、グルコン酸クロルヘキシジンというのが洗口液として販売されています。
グルコン酸クロルヘキシジンはアレルギー反応、アナフィラキシーショックを起こした事例も過去にありましたので、わが国ではグルコン酸クロルヘキシジン配合消毒薬の粘膜への使用は禁忌となっています。
ただ、洗口液や歯磨き剤での使用は許可されています。
我々歯科の分野でグルコン酸クロルヘキシジンは、歯周病やインプラントの外科的手術前後の患者さんへの科学的なプラークコントロールにおいて最も有効性の高い薬剤として評価されています。
グルコン酸クロルヘキシジンの特徴としては、歯の表面への吸着性が非常によいので、歯磨きできれいになった後の歯の面に再び歯垢、つまり食べかす、プラス口腔内の細菌、いわゆるバイオフィルムですが、それが付着するのを抑制する効果があり、抗菌効果の持続性が長いということが挙げられます。
ちなみに、日本ではどちらかというとイソジンガーグルのほうがよく使われるのですけれども、このグルコン酸クロルヘキシジンは、海外、特にアメリカでは、歯科医師会(ADA)と、アメリカ政府食品医薬品局(FDA)の両者によりプラークの蓄積と歯肉炎を予防し、減少させる目的で処方することが承認されている唯一の洗口液なのです。
日本では原液を希釈しまして、欧米で使われている100倍近い低濃度での使用が指示されていますので、その効果のほどがどれほどあるのかは少し疑問があるところです。
このほかに抗菌作用を有しないものがあると思うのですけれども、それはアズレンだけでしょうか。
代表的なのがアズレンですが、その他にアズレンと重曹の合剤であるうがい薬(イソジンとアズレン系など)の使い分けについて書いていきたいと思います。
これらをどのように使い分けるのかですけれども、抗菌作用のあるものは今うかがってだいたいわかったのですけれども、アズレンとか、含嗽用ハチアズレといった重曹が入ったようなものはどうでしょう。
殺菌効果はないのですが、消炎効果ですとか、アズレンには粘膜上皮の形成を促進する作用があります。
ですから、口内炎には有効ですし、出血ですとか潰瘍とか、また外傷のあるときにも使いやすいのです。
先ほど挙げましたイソジンガーグルは、様々な味とか、においなどの添加物を溶かすためにアルコールが入っていまして、弱った粘膜に刺激となったり、脱水を助長し、口腔乾燥を強くする可能性があります。
アズレンにはそういうものも含まれていませんので、乾燥が強く炎症を伴う場合は、含嗽用ハチアズレがお勧めです。
口内炎の原因は、ウイルスとか、免疫力の低下とか、あるいは放射線や化学物質など、いろいろありますけれども、原因が何であっても、対症療法として含嗽用ハチアズレは共通して使えるというメリットがあります。
アズレンと重曹の合剤ですと、弱アルカリ性ですので、唾液の緩衝作用の低下を補ったり、あるいは重曹による粘液溶解作用によって、患者さんによっては使った後すっきりしたという声も聞かれることがあります。
対象と使い方がだいぶ違うような印象ですね。これで治療して、いつまでやるのかということがあると思うのですけれども、これは何か目安があるのでしょうか。
そこは非常に重要なところでして、含嗽薬というのは、抗菌成分を含んでいるものなどは特に、長く漫然と使っていますと、菌交代現象という問題が起きてきます。
口腔の粘膜というのは、腸の粘膜と同じく、通常は常在菌で保護されているわけですから、こういう薬を長期にわたって使いますと、菌交代現象が起こるという問題点があります。
特にイソジンガーグルは、ポビドンヨードが主成分です。
これは甲状腺に影響を及ぼしまして、まれですけれども、甲状腺機能障害を起こす方もいらっしゃいますので、甲状腺に問題のある方にはイソジンガーグルは控えられたほうが無難かなと思います。
そのほかのものにしても、様々な問題が出てきますので、使用目的があって、それが含嗽をすることによって達成されましたら、その時点でやめていただいたほうがいいと思います。
漫然と使用するというのが一番問題で、どの含嗽薬を使うにしても、適応を見極めて、短期的に使用するべきものであるということを知っておいていただきたいと思います。
特に炎症を起こしているとか、感染があるとかいうことがなければ、通常は水でしっかりうがいするのがいいかと思います。
最後に、介護を受けている方とか、手術前の方で、口腔ケアが手術の予後に非常に関係するといわれています。
実は近年、口腔内の環境を改善することが全身にも影響するということが、歯科だけではなくて、医科や看護の領域からも認められてきました。
口腔内というのは、もちろん舌を含めて口腔粘膜があるわけで、その粘膜のケアも非常に重要であるということがいわれています。
粘膜ケアですけれども、含嗽薬ですとか洗口液でうがいができる方はそれはそれでいいのですけれども、できない方、つまり要介護の方ですとか、含嗽用ハチアズレというものがあり、これもよく使われています。
殺菌効果はないのですが、消炎効果ですとか、アズレンには粘膜上皮の形成を促進する作用があります。
ですから、口内炎には有効ですし、出血ですとか潰瘍とか、また外傷のあるときにも使いやすいのです。
先ほど挙げましたイソジンガーグルは、様々な味とか、においなどの添加物を溶かすためにアルコールが入っていまして、弱った粘膜に刺激となったり、脱水を助長し、口腔乾燥を強くする可能性があります。
アズレンにはそういうものも含まれていませんので、乾燥が強く炎症を伴う場合は、含嗽用ハチアズレがお勧めです。
口内炎の原因は、ウイルスとか、免疫力の低下とか、あるいは放射線や化学物質など、いろいろありますけれども、原因が何であっても、対症療法として含嗽用ハチアズレは共通して使えるというメリットがあります。
アズレンと重曹の合剤ですと、弱アルカリ性ですので、唾液の緩衝作用の低下を補ったり、あるいは重曹による粘液溶解作用によって、患者さんによっては使った後すっきりしたという声も聞かれることがあります。
そういう粘膜ケアをすることによって、いろいろな周術期の患者さんの呼吸器感染の発生頻度とか、あるいはもっと言いますと、死亡率が低下したという研究結果も多数、最近は見られるようになりました。
要介護の方、口から食べるのが困難になった方、経管栄養の方などは、口腔内が非常に劣悪な環境になります。
そういう方に関しても、今申し上げたように、粘膜をケアするということが重要になります。
対象と使い方がだいぶ違うような印象になります。
介護する人がしっかり粘膜ケアをしてあげることによって、最近お年寄りで増えてきた誤嚥性肺炎の予防にもなるということで、非常に評価されるようになりました。
最後に洗口剤、含嗽剤で伝えたいこと
一概に、うがい薬と言っても使用の方法や効果、やり方が異なることがわかります。
含嗽薬というのは、抗菌成分を含んでいるものなどは特に、長く漫然と使っていますと、菌交代現象という問題が起きてきます。
口腔の粘膜というのは、腸の粘膜と同じく、通常は常在菌で保護されているわけですから、こういう薬を長期にわたって使いますと、菌交代現象が起こるという問題点があります。
漫然と使用するというのが一番問題で、どの含嗽薬を使うにしても、適応を見極めて、短期的に使用するべきものであるということを知っておいていただきたいと思います。うがいだけで歯周病や虫歯を治すというと、抗菌剤が含まれているので菌交代現象が起きて、黒毛舌等トラブルになることがあります。
逆にそれ以外で歯周病を治そうという場合には、効果があるとは考えにくいということがわかります。
うがいすることは、お口から全身の健康を保つことにもつながります。
気になる方は、かかりつけの歯科医院に聞いてみましょう。
もしくは、歯周病の専門医に聞いてみてはいかがでしょうか?
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