侵襲性歯周炎の明確な定義とは何でしょう
栃木県宇都宮市兵庫塚町の歯医者 やまのうち歯科医院の山之内です。
侵襲性の歯周炎について書いていきたいと思います。
1999年に導入されて以来、侵襲性歯周炎という用語は多くの研究の話題となってきました。
歯周病分類に対する国際ワークショップを支持する論文はいくつかの疾患の特徴をリストアップしていますが、症例を同定するために使用可能な診断基準を提供は当時では十分にしていないところがあります。
結果として、侵襲性歯周炎の理解に相当な種類が予想されます。
この研究の目的は、歯周研究においてオリジナリティーがある侵襲性歯周炎の定義を系統だてて評価することを説いています。
英語で出版された侵襲性歯周炎に関するオリジナル研究を系統だったレビューがあります。
電子検索から833のアブストラクトがあります。
これらの中から472の公表文献が選定基準を満たしてあり評価されています。
出版物の26.5%には、侵襲性歯周炎操作化に関する情報はありませんでしたが、別の一つの文献を参照しています。
12.7%の出版物には症例がどのように定義されたかに関して情報は提供されていないとのことでした。
症例定義に対する基準の多くの組合せがみられました。
この研究はオリジナリティーがある研究において、侵襲性歯周炎という用語の理解と使用に、かなりの多様性があることと症例同定の記述に不十分であることを示していることがわかっています。
誤った分類の影響と選択バイアスの傾向と大きさは不明で、この用語を用いる批判力のある読者、専門家、と患者によって検討されるべきだとも説いています。
(侵襲性歯周炎、歯周疾患、歯周炎、システマティックレビュー)
これらを見ても、侵襲性歯周炎は、なんでしょうねということになってしまいます。
歯周炎の中で、何かちょっと違う雰囲気の歯周炎。
比較的若いのに、あんまりプラークもないのに、激しく組織破壊が進行したいる患者さん。
そういえばそんな子いますよね。
それがかつて若年性と呼ばれた侵襲性歯周炎です。
でもそれを、明確に定義することは難しいところがあります。
侵襲性歯周炎の診断をする調査票はありますが、どこまでなったら年齢に依存して用語を用いるのは賢明ではではないと提言されていますが、45.2%の文献では定義の基準に年齢制限を含んでいました。
文献で対象となった患者の最少年齢は7から37歳、最高年齢は13歳から82歳ということでした。
定義の12.2%で”家族集積”が用いられています。
また11.8%で沈着物の量と歯周組織破壊が不釣り合いが用いられていたようです。
逆にいうと、残りの大部分の文献はこれらの基準に触れていないことになるようです。
侵襲性歯周炎の定義に用いられているCALで最も多いのは>=5mm、次に>=4mm、プロービングデプスについても同様に>=5mm、 >=6mmとのことでした。
1999 International Workshop for a Classification of Periodontal Diseases and ConditionのAgPに関するコンセンサスレポートでは、AgPの臨床的特徴を定義するに当たってポケットデプスはパラメーターに含まれていないようです。
探索した文献の40%でポケットデプスが含まれていると嘆いています。
でも、見ないといけないのではCALだとおもうのです。
年齢やポケットデプスが前面に出る傾向にあるのは、臨床的にとっつきやすいからでしょうか。
家族集積、それ簡単に調べられないとおもいのですが、家族全員連れてきてCAL測のでしょうか。
入れ歯かどうかはわかりますが、欠損理由はわかりません。
10代で罹患し、全身疾患がなければ家族歴を調べようと思うのですが、30代でお子さんが歯周病はさすがに無いかと。
さて、侵襲性歯周炎という用語の理解と使用に多様性があるといわれているのですが、侵襲性歯周炎の統一された明確な定義とはどのような状態なのでしょうか。
実は私も侵襲性の歯周炎を確実に診断できるかどうかというと、確定できる人とどちらか確定できないかもしれないという人に分かれてしまうことがあります。
もちろん全身疾患が認められない、増悪する因子や遺伝子疾患がないという前提で話しています。
以前では、日本歯周病学会における侵襲性歯周炎データベース構築に向けた考え方はこのようになっています。
「初診時年齢が永久歯列完成後から35歳未満で、歯周病が原因と考えられる垂直性骨破壊を2歯以上認める場合に、侵襲性歯周炎とする(第二大臼歯部の遠心は除く)。
ただし、年齢が35歳以上で45歳未満にあっても、上記の骨破壊の条件を満たした場合で、35歳未満に発症していることが確認できる資料 (診療録または問診履歴等による) が存在する場合は、侵襲性歯周炎の疑いとするとされています。
上記基準を基に、以下のスクリーニングを行うこととしています。
初診時年齢 10代6点 20代5点 30代4点 40代2点50代0点
推定発症年齢 (不明な場合は初診時年齢に準じています) 10代3点 20代2点 30代1点 40代0点
喫煙歴 無 2点 前喫煙者 1点 現喫煙者 0点
矯正治療の既往 無2点 有1点
歯周病に影響を及ぼす全身疾患 無2点 有0点
中切歯/側切歯の喪失または同歯周組織の破壊 有2点 無0点
大臼歯の喪失または同歯周組織の破壊 有2点 無0点
両側性の歯槽骨破壊 有1点 無0点
以上の合計を合わせることにより侵襲性歯周炎かと診断する理由の一つになります。
しかしながら、なん点だから侵襲性歯周炎というわけではありません。
総合的観点から診断するというわけです。
以下の項目は大学病院などにて精査する項目といわれています。
問診等で早期発症年齢が確定できる場合は、上記の年齢の制約を受けないといわれています。
家族歴 (祖父母・父母・兄弟及び子供の関連を疑う歯周病罹患) の有無
根の離開が弱い
初診時のプラークコントロールPCR値は、プラークコントロールが良好にもかかわらず歯周組織の破壊が認められる。
歯列不正の有無
歯周治療歴の有無
オーラルリハビリテーションの必要性 (フレミタス、フレアアウト等)の有無
広汎な補綴処置の有無、もちろんあれば不良補綴物などによる増悪の可能性もあります。
細菌検査の有無、侵襲性歯周炎に特徴的な菌があるので検出されると可能性が高くなります。
以上により、ステージとグレードを診断します。
全身疾患の中には、遺伝子疾患のPapollon-Lefevre症候群(パピヨン・ルフェーブル症候群)乳歯が生えてきてすぐに歯周炎を発症。
歯槽骨(歯を支える骨)が急速に吸収され、早期に乳歯が抜け落ちてしまいます。
永久歯が生えてきても同様の経過をたどり、15歳くらいまでにほとんどの歯が抜け落ちてしまうこともあります。
さらに、チェディアック-東症候群は、非常にまれな遺伝性疾患で、細菌による呼吸器感染症などの感染症が繰り返し生じ、髪、眼、皮膚の色素が欠乏すること(白皮症)が特徴です。
チェディアック-東症候群の患者は通常、皮膚が白く、髪の色が薄いか白髪で、眼がピンク色か薄い青灰色をしています。
さらに、ダウン症のある人は歯周病にかかりやすく、90%以上の確率でかかるとされています。
(ダウン症のない人も30代以上は2/3の確率(66%)で歯周病にかかっているといわれています)
ダウン症のある人が歯周病にかかりやすい原因としては・感染に対する免疫力が低いこと、歯周組織の修復力の低下などが挙げられます。
以上により、よりリスクが高い方は、重症化する前に徹底した予防治療を行う必要があります。
悪化してから治療するより、より確実に改善することになるからです。
そのため、子供のうちから予防治療を行うことが重要になりますので、家で行うプラークコントロールと定期検診を受けることをお勧めします。
今回は、専門用語が多く見ずらいところもあったと思いますが、たまにこのようなことも書いていきたいと思います。
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