コラム
2024年08月09日

骨粗しょう症薬の服薬について 

栃木県宇都宮市兵庫塚町の歯医者 やまのうち歯科医院の山之内です。

骨粗しょう症の服薬注射を行っている患者さんについて書いていきたいと思います。

MRONJ(Medication-Related Osteonecrosis of the Jaw) は、薬物関連顎骨壊死を指し、特にビスフォスフォネートやデノスマブといった薬剤の使用に関連して発生することが知られています。
これらの薬剤は骨代謝に影響を与え、骨粗鬆症や特定の癌の治療に使用されることが多いです。

原因と発生メカニズム

MRONJは主に以下のような状況で発生する可能性があります。

  • ビスフォスフォネートの使用: ビスフォスフォネートは骨の再吸収を抑制し、骨粗鬆症の治療に広く使用されています。しかし、長期間の使用や高用量の使用により、顎骨の血流が減少し、骨壊死が発生するリスクが増加します。
  • デノスマブ: これは骨吸収を抑制するためのもう一つの薬剤であり、同様に顎骨壊死のリスクを伴います。
  • 抗癌治療: 骨に転移した癌の治療や骨代謝を抑制するための治療もMRONJのリスク要因となります。

症状

  • 顎の痛み
  • 歯肉の腫れや炎症
  • 歯の動揺
  • 顎骨の露出
  • 感染症

治療と予防

MRONJの治療は通常、以下の方法を含みます:

  • 感染症管理: 抗生物質の投与や適切な口腔衛生の維持
  • 外科的治療: 壊死した骨組織の除去

予防策としては、これらの薬剤を使用する前に歯科検診を受け、口腔内の感染源を取り除くことが推奨されます。また、治療中は定期的な歯科検診と口腔ケアが重要です。

MRONJは重篤な症状を引き起こす可能性があるため、これらの薬剤を使用する際はリスクとベネフィットを慎重に検討する必要があります。

MRONJの適切な予防管理治療には医科歯科連携が不可欠とされています。
具体的には、口腔管理や口腔内疾患の状態、現在の骨折のリスク、骨粗しょう症の治療状況、ガンの治療状況に関する情報提供が必要となります。
MRONJのリスク因子には、抜歯、骨リモデリング抑制、感染、炎症、血管新生抑制、免疫力低下など様々なものがあります。
ビスホスホネート製剤(BP製剤)およびデノスマブはMRONJのリスクとなる骨吸収抑制薬の筆頭であり、これらの使用量がMRONJ診断の必要条件とされています。
これは、リモデリング抑制の強さに関連していると考えられています。
骨形成促進薬を含む多くの新しい治療薬が用いられるようになり、骨粗しょう症薬物治療のストラテジーも多様化してきています。
各薬剤の特性を把握することがMRONJのリスクとの関連や休薬の影響などを理解するうえで極めて重要となっています。骨粗しょう症薬を処方する内科医の先生の立場より歯科の先生に理解していただきたいポイントとして、骨粗しょう症薬の骨代謝に及ぼす作用、骨粗しょう症薬の基本的な考えと最近の流れ、ARAによる長期治療の問題点などに解説し、それらを踏まえたうえでの医歯薬間の情報共有のポイントについて書いて文献を以下に書いていきます。

抜歯などによる観血的歯科処置時

原則的には抜歯時の骨粗しょう症治療の中断や処置の待機は不要といわれています。しかしながら、臨床においては密接な連携によって不利益を最小限にしえる可能性があります。

デノスマブは半年に一度の皮下注射を行いますが、骨代謝の抑制は3カ月くらいが最も強く4カ月頃から抑制が部分的に解除されます。したがって、もし処置の時期を選ぶのであれば、最後のデノスマブ投与後4カ月頃に抜歯やインプラントを行い、次の駐車時には創傷部位が治癒しているのが好ましいという意見がります。

BP製剤については、投与歴が数年以上である場合、AFFのリスクなどを鑑みてドラックホリデーや投薬変更を機に検討する場合があります。このような場合は、抜歯を機に変更・中止に踏み切るということもあり得ます。また、新たに投与されたBP製剤の投与予定が抜歯直後にあたる場合には、若干予定をずらしても骨折のリスクの点からほとんど問題ないと思われます。

このような、操作の有効性についてのエビデンスは乏しいですが、患者の心情的にも受け入れやすいと思われます。また、ここに書いてある臨機応変な対応は医科歯科間の件密な情報共有に基づく連携によってのみ可能となると書かれています。

ドラックホリデーの目的

  • 顎骨壊死リスクの軽減: MRONJのリスクを減らすために、特に歯科処置(抜歯など)の前にドラックホリデーが考慮されることがあります。
  • 副作用の管理: 長期使用による他の副作用を管理するため。

歯科治療との関係

  • 治療前の調整: 歯科医師や医師は、患者がビスフォスフォネートやデノスマブを使用している場合、ドラックホリデーを推奨することがあります。特に外科的処置が必要な場合、薬の効果が弱まる期間を設けることで、顎骨の健康を保つためのリスク管理が行われます。
  • ドラックホリデーの期間: 一般的には数ヶ月から一年程度の期間が推奨されることがありますが、患者の状態やリスクに応じて異なります。

注意点

  • 専門家の監督下で行う: ドラックホリデーは専門医の指示の下で行われるべきであり、自己判断で中断することは推奨されません。特に骨折のリスクが高い患者の場合、ドラックホリデーの期間中も適切な骨健康管理が必要です。
  • 治療の再開: 歯科処置が完了した後、再度薬剤の使用を開始する際には、医師と相談して適切なタイミングを決定することが重要です。

ドラックホリデーは、骨粗鬆症やがん患者の治療において安全かつ効果的といわれています。

最後に

MRONJはまれではありますが、重篤な疾患であり、骨代謝回転の抑制という骨粗しょう症薬による骨折抑制効果という患者さんが享受すべき恩恵を奪ってはなりません。逆に医師側が一方的にどんな場合でもすべての骨粗しょう症治療薬を厳格にスケジュール通りに継続すべきというのもナンセンスであろうと述べています。骨粗しょう症治療薬の作用機序とリモデリングに対する効果、患者さんの骨折のリスク及びMRONJのリスクについて、医歯薬の適切な情報共有に基づく緊密な連携により、患者さんの骨折及びMRONJの発生のリスクを抑制する努力を継続する必要があると締めています。

「ドラックホリデー」とは、患者が薬剤の使用を一時的に中止することを指します。これは特に、骨代謝に影響を与えるビスフォスフォネートやデノスマブなどの薬剤を使用している患者に関連して議論されることが多いです。これらの薬剤は骨粗鬆症や骨に関連するがん治療に使用されるが、長期使用により顎骨壊死(MRONJ)のリスクが増加することがあります。

に薬剤を使用するための戦略の一つです。患者の個別の状況に応じて適切に計画されるべきです。

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