親の口に含んでからおしゃぶりを使うとアレルギーになりにくい子供になる?
昔から「長生きする人は唾液が多い」とか「よだれの多い赤ちゃんは健康に育つ」と言われるくらい、唾液と健康との間に深いつながりがあることが知られてました。
昭和、私が子供だったころ、転んで擦りむいた傷は「ツバをつけとけば治る!治る!」なんて「おまじない」のように言われたものでした。
実際、唾液には抗菌成分や消化酵素、皮膚や体内の臓器のの表面や神経の成長因子などが含まれていることがわかってるので、この「おまじない」に医学的根拠が全然ないわけではなさそうですがどうなのでしょうか。
こんな眉唾な話ではなく、ここ10年ほどの間に唾液の新しい作用が明らかになってます。
その一つは、2013年にスウェーデンのサールグレンスカ大学病院の医師らが、「おしゃぶりを親の口に含んでからくわえさせられた子供では、2歳6カ月の時点でぜんそくになるリスクが9割、アトピー性皮膚炎になるリスクが6割それぞれ減少していた」と発表したことです。
さらに、2023年には和歌山県立医大、兵庫医科大学、獨協医科大学、高槻赤十字病院の共同研究で「乳児期に親と食器を共有して親の唾液と接触したら、学齢期になったときのアトピー性皮膚炎発症リスクを48%抑えて、乳児期におしゃぶりから親の唾液と接触したら、学齢期のアトピー性皮膚炎の発症を65%、アレルギー性鼻炎の発症は67%低下させる。」と発表しました。
つまり、親の唾液によって子供のアレルギーが予防できるというわけです。
さて、先進国では子供の3人に1人がアレルギー疾患にかかっているとされてます。この原因の一つに、腸内細菌の異常(dysbiosis:腸内細菌を構成する細菌の種類や数の異常)が関わっていて、これには清潔すぎる子育てが関係すると言われてます。でも、「腸内細菌がアレルギーと関わっているの?」「清潔すぎる子育てのどこが良くないの?」とそのつながりを疑問に思う方は多いことでしょう。そもそも、アレルギーは、本来、無害であるはずの異物に対して不要な免疫反応が起こってしまうことです。免疫にはさまざまな細胞が関わってますが、このなかの免疫抑制細胞(制御性T細胞)は、アレルギー疾患を引き起こす余計な免疫反応が起こらないように調整しています。この免疫抑制細胞が活発に働くには、酪酸が必要で、それを産生する酪酸酸性菌という種類の細菌が腸に定着していることが必須です。酪酸酸性菌は土砂や枯れ草、家畜糞尿などに付着して自然環境中に広く分布してますが、生命力が強くて、ヒトを含めた動物の腸や口の中にも存在して、生きて腸まで届きやすい菌といわれています。
お母さんのおなかにいる赤ちゃんの身体に腸内細菌はいません。生まれてくる時に初めて、お母さんの産道を通るときに腸内細菌が体内に入ります。ほかにも、小さい頃に動物に触れたり、土あそびをしたり、物をなめたりすることで色んな細菌を腸内に取り込んでいると考えられてます。サールグレンスカ大学病院の医師は「貧困、大家族、幼いうちにペットや家畜と接触すること、食べ物を通じて細菌にさらされることなどが、アレルギー疾患リスクを下げることと関連している」と説明しています。さらに「乳幼児期に腸内細菌の獲得が遅れることなどが、アレルギー疾患の危険因子とも指摘されている」と述べています。今回の結果については、「おしゃぶりを通じて親の腸内細菌が子供に移されることで、アレルギー疾患を抑えられた可能性がある」と述べています。 人の免疫システムは、乳幼児期に多くの種類の菌を入れることで完成します。親の唾液は子供の未完成の免疫システムにとって良い刺激になるようです。
一方で、「親の唾液を介して虫歯菌がうつるから、スプーンやお箸などは子どもと共有しないほうがいい」という考え方が広まっています。実は、海外でも親から子へむし歯菌のミュータンス菌が感染することは知られていますが、だからといって、子どものむし歯予防のために食器を分けることを頑張る親はいません。実は、厚労省や歯科予防関係の学会でも「親子で食器の共有を避けていれば、子どもの虫歯は防げる」と推奨しておらず、根拠のない情報がまことしやかに広まっているだけのまさに「噂」にすぎません。
乳児期に親の唾液と接触することが学齢期のアトピーとアレルギー性鼻炎の発症リスク低下の可能性が明らかになったわけですから、「食べ物の口移しや噛み与えをしない」、「離乳食の味・温度のチェックを赤ちゃん用のスプーンで行わない」、「お箸やスプーンの共有はしない」といった対策に神経質にならうことは止めましょう。
家族から子どもにむし歯菌が移ったとしても、砂糖の摂取を控え、親が毎日仕上げみがきを行って歯垢を除去し、またフッ化物を利用することでう蝕を予防することができます。
特に、フッ化物の利用は多くの論文でう蝕予防効果が確認されている方法です。
食物系、金属系、動物系など、なんらかのアレルギーをもつ子どもが急増している昨今。
なぜこういった子どもが増えているのかについては未だわかっていませんが、両親のちょっとした行動で、子どものアレルギー発症を予防できる可能性が明らかになりました。
生後まもなくの赤ちゃんを対象におこなったスウェーデンの研究によると、母親か父親のどちらかの唾液のついたおしゃぶりを子どもに与えると、アレルギーに対しての免疫がつくことが判明したそうです。
研究では、187人の赤ちゃんを生まれてから生後18ヶ月まで追跡調査し、一部の親におしゃぶりを熱湯ではなく自分の唾液で“洗う”ように指示しています。
その結果、18ヶ月の時点で湿疹を発症した赤ちゃんは約25%、喘息を発症した赤ちゃんは5%いたが、親の唾液のついたおしゃぶりを使っていた赤ちゃんがこれらのアレルギーを引き起こす確率は格段に低かったそうです。
なお、同実験によれば、最も湿疹を発症しやすいのは帝王切開で生まれ、おしゃぶりを熱湯消毒している赤ちゃんであることも明らかになったといいます。
米ロサンゼルスの小児科医Ron Ferdman医師によれば、「免疫力は、病原菌に触れることにより強くなる。赤ちゃんも外の世界にさらし、細菌を取り込むことで免疫ができます。
ただし、両親は決してたばこを吸わないように!」と語っています。
タイトルが親の唾液で「消毒」となっていますが、消毒というか原文中ではcleaningですので記事中の親の唾液で「洗う」というイメージで読んでください。
「唾液で洗うよう指示」となっていますが、ここでの唾液で洗うとは親がおしゃぶりを舐めることです。
また、原文をすべて読んでいませんが「指示」したというよりは、あとから電話調査したと書いてあり、また、落とした時に親がよくやる「舐めてから子供に戻すという一般的な方法」みたいなことが原文に書いてありましたので、なんか一般的なことらしいです。
スウェーデンのBill Hesselmar 博士らがpediatricsという雑誌に出したPacifier Cleaning Practices and Risk of Allergy Developmentという論文についての記事です。
論文の内容は以下のようなかんじでした。
赤ちゃんがおしゃぶりを落としたときに、
・水道水で洗ってから赤ちゃんに戻す
・熱湯で消毒から赤ちゃんに戻す
・舐めてから赤ちゃんに戻す
を比べると3番目の舐めてから戻す方法だと、喘息や皮膚炎の発症リスクが下がるそうです。
それから、経膣分娩や帝王切開とおしゃぶりの関連も分析していて、帝王切開で生まれた赤ちゃんは、経膣分娩やおしゃぶりを舐めて戻す親の赤ちゃんよりもアレルギーになりやすかったようです。
(経膣分娩でなおかつおしゃぶり舐めて戻す親の赤ちゃんが最もアレルギーになりにくい)
日本人は、おしゃぶり落としたら舐めてから戻すことに違和感がありますよね。
令和の時代、そんなことする人は少ないと思います。
もちろん、そういう考えのひとがいるから、アレルギー患者が増えているのだと言われそうですが、自分の唾だって汚いから赤ちゃんかわいそうだし、舐めないと落ちないくらい汚れたおしゃぶりを舐めたくないと思います。
ただ、おしゃぶり以外で初期の乳児期に親の唾液が口に入ることはそんなにはないのかなとも思いました。
離乳食を食べる頃になれば、自分が舐めたスプーンで赤ちゃんに口移しとかする人も(今は少ないかもしれませんが)いると思いますが、その頃では赤ちゃんの免疫を刺激して発達させる時期を少し過ぎていると思います。
論文では、親の唾液中の微生物が赤ちゃんの口腔に移行し、口腔周辺の免疫細胞を刺激して(口腔もまた小腸と同様に免疫細胞が多く集まっています)将来のアレルギーのリスクを下げる。
そして口腔の微生物は腸管にも達するので腸管免疫にも影響を与えるのだそうです。
プレバイオティクスよりはプロバイオティクスの方が赤ちゃんの免疫を2か所で刺激できるのでアレルギー予防にはいいのかもしれません。
以上を読んだ親御さんに、疑問が出る方がいらっしゃると思います。
以前、虫歯予防のためには親の唾液に感染させてはいけないといわれた方もいらっしゃると思います。
現在は、そのようなことは気にしなくていいといわれています。
それでも気になる方は、お子さんが生まれるまでに親御さん方は、虫歯の治療を終了された方がいいかもしれません。
親御さんのお口の中に、虫歯の菌がなければ移す心配もありませんよね。
現在は、家やお店もどこも消毒された環境にあります。
免疫を作るための菌などが少なくなっているかもしれないといわれています。
赤ちゃんが何でも口に入れるのは、飲む吸う生きるために行う行動だという先生もいらっしゃいます。
こどもが触れてはいけないものは、周囲におくのはダメですが過剰に反応するのもよくないのかもしれませんね。
このブログが皆さんの参考になればいいと思います。