コラム
2025年11月17日
歯科処置と日常口腔ケアにおける菌血症リスク
はじめに
心臓弁や心内膜に炎症を引き起こす感染性心内膜炎。
従来は「抜歯など侵襲的な歯科処置=最大のリスク」と考えられてきましたが、“歯磨きでも菌血症は起こる”という新たなデータが注目されています。
本記事では、600人を対象とした3年間の前向き研究を中心に、最新エビデンスを患者さん向けにやさしく解説します。
1. 研究デザインと対象
- 対象者: 600名をスクリーニングし、290名を無作為に3群へ
- 歯磨き群
- 歯+アモキシシリン群
- 歯+プラセボ群
- 採血タイミング: 処置前後0–60分で6回
- 評価項目: 菌血症の発生率・持続時間・菌種・程度
- 解析菌種: IEを引き起こす可能性が報告された275種から、検出された98種のうち32種にフォーカス
2. 主な結果
| 介入 | 累積菌血症発生率* | 60分後の持続 (%) | 代表菌種** |
|---|---|---|---|
| 歯磨き | 23% | 9 | 主にレンサ球菌属 |
| 抜歯+アモキシシリン | 33% | 2 | Streptococcus, Prevotella など |
| 抜歯+プラセボ | 60% | 2 | Streptococcus, Prevotella, Actinomyces 他 |
* 6回採血を合算した値 ** 上位4属のみ
ポイント
- 抜歯プラセボ群は歯磨き群の約2.6倍の発生率
- 菌血症のピークは処置後5分以内
- 歯磨きでも4人に1人が菌血症を起こす
- アモキシシリン投与で発生率は半減しますが“ゼロ”にはならない
3. なぜ歯磨きで菌血症?
- 歯肉縁部への微小外傷→血管内へ細菌侵入
- 歯周病やプラーク量が多いほどリスク増
- 毎日のブラッシング回数×年間365日=累積暴露は抜歯より大きいことも
4. AHAガイドラインと現場での対応
| リスク分類 | 抗菌薬予防の要否 | 当院の推奨 |
|---|---|---|
| 高リスク例(人工弁・既往IE・重度先天性心疾患など) | 必要 | 抜歯や歯周外科はAHA推奨量のアモキシシリン2 g内服を実施 |
| 中~低リスク | 原則不要 | 規定なし。ただし重度歯周炎なら主治医と要相談 |
| 日常的ブラッシング | 不要 | 正しいブラッシング指導+定期クリーニングで歯周炎コントロール |
5. 患者さんへの実践アドバイス
- プラークコントロールが最優先
- 歯磨き・フロスで歯肉炎を抑えれば菌血症リスクも低減
- 定期検診で「出血しやすい歯肉」を治す
- 心臓に基礎疾患がある方は必ず申告
- 抗菌薬が処方されたら飲み忘れゼロ
- 処置後の発熱・倦怠感は早めに受診
6. まとめ
- 歯磨きでもIE関連菌血症は起こる──だからこそ毎日の口腔ケアが鍵になります。
- 抜歯時のアモキシシリンは発生率を約半減させるが完全防御ではありません。
- 高リスク患者にとって“抜歯の前後より日常”のほうが累積リスクが高い可能性があります。
なので、過剰に抜歯を心配する必要性はありません。 - 以上により、歯科医院でのプロフェッショナルケア×セルフケア指導が最も現実的なIE予防策になります。
当院では、心臓病をお持ちの患者さんへの個別IE予防プログラムをご用意しています。
持病や服薬歴を詳しくうかがい、安全・安心の歯科治療を提供します。
お気軽にご相談ください。
参考文献
- American Heart Association. Guideline on the Prevention of Infective Endocarditis, 2021.
2–19. Lockhart PB, Durack DT, 他. Circulation. 2022;145:3120–3127 他
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