コラム
2024年05月10日

知覚過敏抑制する歯磨き粉の評価について

栃木県宇都宮市兵庫塚町の歯医者 やまのうち歯科医院の山之内です。

今回は、知覚過敏に対する知覚過敏抑制する歯磨き粉の評価について書いていきたいと思います。

知覚過敏とは、歯の表面が露出してしまい、外部刺激に対して過敏に反応する状態を指します。
一般的には、冷たい、熱い、甘い、酸っぱいなどの刺激によって歯がしみる、痛むといった症状が現れます。

正式名称、象牙質知覚過敏は, エナメル質やセメント質による被覆 を欠いた象牙質面に, 機械的, 温度的, 化学的刺激が加わったときの一過性の電撃的痛みをさし, また自発痛のみられないことが特徴です。
この痛みは,露出した象牙質の感覚が亢進することによって引き起こされ, その程度は各人各様で, 限局された強い痛みを訴 えるものから単なる不快感である場合など一様ではありません。
そのため、その人に合った対処法を探す必要があります。

ほかの人がやった治療法がその人に合うとは限りません。
患者さんが、だれだれがやってよくなったと聞いたから同じ方法をしてくださいといわれても、原因が異なれば同様な治療を行っても改善しないことがあります。
患者さんが言われた通りにしないのはこういったことが理由になります。

変わらないことがわかっていて、治療するのは行わない方がいいと思います。
象牙質知覚過敏に対する治療法には, 薬物塗布法, イオン導入法などの医師側からの治療と, 薬物配合歯磨剤 を用いた患者 自身による方法が挙げられます。
これらはいずれも, 露出した象牙細管開口部を物理的に被覆, 狭窄あるいは閉塞す ることによって,象牙質知覚過敏の抑制 を期待する治療方法です。
歯磨剤による方法は, 日常生活の中で行える簡便で負担の少ない方法であるとともに, 象牙質知覚過敏症状発現の予防にも適用されます。
本邦では従来 より, 乳酸 アル ミニウム , 塩化アル ミニウム, 塩化ス トロンチウムなどの薬用成分 を含んだ知覚過敏用歯磨剤が用いられています。
歯科医院でしみ止めを塗りましょうねと言われた場合は、以上の薬剤を含まれたものなどを使用することが多くあります。
欧米で も最近10年の間に, 種々の成分を含む歯磨剤が開発, 販売され, とりわけ硝酸カ リウムを含む歯磨剤は優 れた知覚過敏抑制効果 をもつことから, その有用性についての高い評価が報告されています。
一方, 本邦での硝酸カリウム含有歯磨剤の象牙質知覚過敏に対する使用効果についての情報は, 現在のところ見当たりません。
今回, 我々は, その効果を調査する機会を得て, 本歯磨剤が象牙質知覚過敏 を訴える本邦の患者に対 して も有効であるという結果がでました。

性別, 年齢および被験者一人 あた りの過敏歯数 について, 試験群 と対照群 との間に偏 りがないかどうかを調査しています。
試験群と対照群との間に, 男女間の差, 年齢による差, および被験歯数の差は, 何
ら認められなかった試験開始時の擦過刺激, 冷気刺激, ならびに自覚評価 において, 試験群と対照群 との問に有意な偏りは認められませんでした。

3.擦過刺激による症状
擦過刺激に対する平均スコアの変化を調査した結果。
試験群群では, 2週 目18.9%, 4週 目48.9%, 8週目74.3%, 12週 目81.0%, それぞれスコアが減少しました。
一方, 対照群群では, 2週 目11.1%, 4週目21.6%,8週 目29.0%, 12週目35.2%の 減少率に過ぎませんでした。
平均スコアは, 試験群, 対照群ともに試験開始時より経時的に減少したが, その減少率は2週 目を除くそれ以後のすべて の診 査 時点 (4, 8, 12週 目) で, 試験群の方が対照群群よりも有意に高くなりました。
例えば試験開始4週目において, 試験群ではすでに対照群 の約2
倍の減少率が認められました 。

4.冷気刺激について
冷気刺激の場合, 試験 群群では,2週 目25.8%, 4週目51.4%, 8週目71.4%, 12週目79.7%の ス コア の減少率を示しています。
一方, 対照群 で
は, 2週 目11.8%, 4週 目23.6%, 8週 目31.1%, 12週 目34.4%の 減少率にとどまっています。
擦過 刺激 試験 と同様, 平均スコアは両群 ともに経時的に減少しました。
しかしながら, 試験群の減少率は全診査時点において対照群のそれよりも有意に高く, 試験 開始2週目にして試験群群では対照群群の約2倍の減少率が認められました。

5.自覚評価について
自覚評価についての平均スコアの経 時的変化についての調査です。
試験群群では, 2週目21.5%, 4週目47.9%,8週目68, 5%, 12週目74.4%と, スコア の減少がみられたのに比べ, 対照群では, 2週 目9.1%, 4週 目16.8%, 8週 目24.5%, 12週 目31.3%の減 少率を示しています。
その減少率は全診査時点において, 試 験群の方が対照群よりも有意に高く, 2週目で約2倍, 4週目
で約3倍の減少率を示しています。
次に, 自覚症状が改善した被験者, あ るい は消失 した被験者 の人数を調べることによ って, 試験 群群と対照群とを比較しました。
試験群では,試験開始後2週目で, すでに半数近くに相当する16名44%の被験者に自覚 症状の改善がみられ, 4週目で (30名 (81%) , 12週 目で32名 (89%) とその数が増加しました。
一方, 対照 群では, 2週目で6名 (16%) , 4週目で11名 (30%) , 12週 目で18名 (49%) と, その数は半数 にも達しませんでした。
これらを比べた場合, すべての検査時点で試 験群の方が対照群よりも有意に高い自覚症状の改善を示していました。
自覚症状の消失は, 2週 および4週目までは試験群,対照群ともにごく少数の被験者にしか認められず, 双方 に有意な差はなかったが, 試験群群では8週目で15名42% , 12週 目で20名 56%と, 約半数の被験者に (自覚症状が消失した。一方, 対照群群では12週目で4名11%) 消失したのが最高でした。
8および12週目では, 試験群と対照群との間にそれぞれ有意な差が認められました。

6.安全性
2週, 4週, 8週, 12週 目の各時点での診査の結果,74名のうち1名の被験者が4週目に口腔粘膜 の違和感を訴え, 実際, 前歯部口腔粘膜に軽度の発赤が認められました。
この症例では, 本人の希望により8週 と12週目の試験を中止しています。
他の73名の被験者については,試験期間中, 何ら障害は認められませんでした。
5%硝酸カリウム配合歯磨剤の象牙質知覚過敏に対する臨床効果 について, 74名 の被験者 を対象に二重盲検法を行って検討 し, 以下のような結果を得ました。
1) 試験群群の擦過刺激に対するスコアの減少率は,2, 4, 8, 12週目でそれぞれ19, 49, 74, 81%と経時的な増加を示しました。
これらの数値 は, 4週 目以降の対象群の減少率 よりも有意に高い値でした。

2) 試験群の冷気刺激に対するス コアの減少率は,2, 4, 8, 12週目でそれぞれ26, 51, 71, 80%と 経時的な増加をしめしました。
これらの数値は対照群に比較して,すべての評価時点で有意に高い値でした。

3) 試験群群の自覚評価 に対するス コアの減少率は,2, 4, 8, 12週 目でそれぞれ22, 48, 69, 74%と 経時的な増加 を示した。これらの数値は対照群に比較 して,すべての評価時点で有意に高い値でした。
4) 試験群群の場合, みずか ら過敏症状が改善したと認めた被験者は, 2週目で44%, 4週 目以降80%を越え, また, 過敏症状が消失した被験者は, 8週目で42%, 12週目で56%に達しました。
これらの数値は, 対群に比較して有意に高い値でした。

5) とくに問題となるような副作用は認められませんでした。
以上の結果, 5%硝酸カリウム配合歯磨剤は本邦においても象牙質知覚過敏の症状緩和に適した歯磨剤であることが明らかとなりました。

以上により知覚過敏が原因であれば、硝酸カリウム配合歯磨剤を含んでいる歯磨き粉は知覚過敏の効果がありましたということがわかりました。
ただし、知覚過敏が原因でなければ効果はありません。
しばらく使用しても改善しない場合は、かかりつけの歯科医院で診てもらいましょう。

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