iPS細胞から「顎の骨」を再現 ― 再生医療の未来
みなさんは「iPS細胞(人工多能性幹細胞)」をご存じでしょうか?
2006年に山中伸弥教授(京都大学)が開発した技術で、皮膚や血液の細胞から、ほぼすべての細胞に変化できる「万能細胞」を作り出せるという革新的な研究です。
これまで心臓や神経など、さまざまな臓器や組織の再生に応用が期待されてきましたが、実は「顎の骨」を作り出すことは特に難しいとされてきました。
ところが2025年7月、京都大学iPS細胞研究所の研究グループがヒトiPS細胞から立体的に「顎の骨組織」を再現することに世界で初めて成功したというニュースが発表されました。
この成果は、歯科医療にとっても非常に大きな意味を持っています。今回は、この研究がどのようなものか、そして私たちの未来の治療にどう関わってくるのかを分かりやすく解説します。
なぜ「顎の骨」は特別なのか?
人間の骨はすべて同じように見えますが、実は発生の仕組みや構造が異なります。
特に顎の骨(下顎骨や上顎骨)は、全身の骨とは発生の過程が異なるため、人工的に再現することが非常に難しかったのです。
さらに骨は単なる固まりではなく、内部には骨細胞同士がつながったネットワーク構造があります。
この構造があることで骨は新陳代謝を繰り返し、血流や栄養を取り込みながら強さを保っています。
しかし、この精密なネットワークを再現する技術はこれまで確立されていませんでした。
そのため、歯周病やがんの治療で顎骨を失った患者さんに対しては、これまでは自分の腰の骨や足の骨を移植したり、人工骨を用いたりする方法しかありませんでした。
しかしながら、自家骨移植では「採取部位の負担が大きい」ことが問題になりますし、人工骨であれば「人工骨がうまく生着しない」「骨用物質にしかならない」などの課題が残っていました。
iPS細胞から「骨のもと」を作り出す
今回の京都大の研究グループは、まずヒトのiPS細胞を集めて立体的に培養しました。
すると、顎の骨の細胞に分化する前段階の「骨のもとになる細胞群」ができあがり、さらに培養を進めると、直径1.0〜1.5mmほどの米粒状の白い塊が形成されたのです。
この小さな塊の中では、なんと石灰化(カルシウムが沈着して硬くなる現象)が起きており、顎の骨組織に近い状態が再現されていました。
これは「実験室の中で人間の顎骨ができ始めた」という、まさに世界初の成果です。
マウスで移植実験 ― 4週間で血管が入り、骨が完成
研究チームはさらに、この骨の塊をマウスに移植する実験を行いました。
マウスの下顎に小さな穴を開け、iPS細胞から作った骨組織を移植すると、4週間後には血管が入り込み、穴が自然にふさがり、通常の骨移植と同等の骨が形成されたのです。
この結果は、人工的に作った骨が実際に生体内で機能し、血流と一体化できることを示すものです。
これは再生医療にとって非常に大きな一歩となります。
難病「骨形成不全症」の再現と治療の可能性
さらにこの研究では、病気の研究にも応用できることが示されました。
骨がもろくなる「骨形成不全症」という遺伝性の病気の患者さんから作製したiPS細胞を使って培養すると、実際に骨が正常に形成されないという病態を再現できました。
さらに、その遺伝子変異を修復したiPS細胞を使うと、正常な骨組織ができることも確認されたのです。
これは「患者さん自身の細胞から病気を再現し、遺伝子を治して正常な組織を作る」という、いわばオーダーメイドの再生医療につながる大きな成果です。
歯科治療に広がる未来の可能性
この研究成果は、将来的に次のような場面で役立つと期待されています。
- 歯周病やがんで失った顎骨の再生
→ これまで難しかった大きな骨欠損にも、自分のiPS細胞から新しい骨を作り出すことが可能になるかもしれません。 - インプラント治療の基盤再建
→ 骨量が足りずインプラントができなかった患者さんにも、新しい骨を再生して治療の選択肢が広がる可能性があります。 - 難病の研究と創薬
→ 骨形成不全症のような遺伝性疾患を、患者さん由来のiPS細胞で再現し、新しい薬の効果を試すことができます。 - より安全で負担の少ない治療
→ 自分のiPS細胞を使えば拒絶反応のリスクが低くなり、人工骨や他人の骨を移植する必要が減ると考えられます。
まとめ
今回の京都大学の研究は、世界で初めてヒトiPS細胞から顎の骨を立体的に再現したという画期的な成果です。
小さな「米粒サイズの骨の芽」から、実際に血管が入り込み、骨が機能することまで確認されたことは、歯科再生医療の未来を大きく変える可能性を秘めています。
まだ臨床応用までは時間がかかりますが、歯周病やがん、外傷で顎の骨を失った方、インプラントが難しいと言われた方にとって、この技術が実用化される日が来るのはそう遠くないかもしれません。
私たち歯科医師も、このような最新の研究に注目しながら、皆さまに最善の治療を届けられるよう日々研鑽を続けています。
未来の歯科医療に、ぜひご期待しましょう。
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