そこで、このような文献がありましたので書いていきます。
米国Harvard大学医学部のJieun Jang氏らは、66歳になった韓国の市民が参加した「National Screening Program for Transitional Ages」のデータを利用して、66歳時点のfrailty indexスコアと、その後10年間の総死亡率や加齢関連疾患の状況を調べる後ろ向きコホート研究を行い、スコアによる評価で中等度から重度のフレイルに分類された人は、健常者に分類された人に比べ、死亡や障害のリスクが有意に高かったと報告されました。
2023年3月2日のJAMA Network Open誌電子版に掲載されました。
frailty indexは高齢者の加齢の指標として用いられている指標です。
しかし、大半の人が自立した生活を送れている年齢で評価したfrailty indexのスコアが、将来に発生する加齢関連の障害や死亡リスクを予測できるかどうかは、まだあまり検討されていませんでした。
そこで著者らは、66歳時点の障害累積型(deficit accumulation model)frailty indexとその後10年間の加齢関連疾患、障害、死亡の発生との関係を検討する後ろ向きコホート研究を計画されました。
対象は、韓国のNational Screening Program for Transitional Agesに参加した一般市民または長期介護施設入所者で、2007年1月1日から2017年12月31日に年齢が66歳になった人に対して行っています。
この研究は慢性疾患の早期発見を目的に2007年から行われ、韓国の全国医療データベースからランダムサンプリングされた35%の成人(161万2991人)が参加している。
66歳時点の健康評価では、身体診察に加えて、ライフスタイル質問票、病歴、3m timed up-and-go(3mTUG) test(椅子から立ち上がって3m前に進み、戻ってきて着席するまでの時間を測定)、視覚と聴覚検査、抑うつと認知症スクリーニング、身体測定と臨床検査などを行いました。
Screening Programの参加者のうち、これらのデータと社会人口学的情報がそろっていた96万8885人を選んで分析対象にしています。
66歳時点のフレイルは、39項目からなるfrailty indexを用いて評価しています。
評価項目の内訳は、病歴(過去1年間の慢性疾患の診断)15項目、測定値(BMI)または検査値(血液検査や血圧値など)8項目、身体的健康2項目(身体活動量と3mTUGテストの結果)、精神的健康8項目(気分や記憶力に関する質問)、障害6項目(日常生活動作に関する質問)となっています。
フレイルであることを示した項目数の合計を39で割ってスコアを算出しました。
スコア幅は0~1.00で、0.15未満をロバスト(健常者)とし、0.15~0.24はプレフレイル、0.25~0.34は軽度フレイル、0.35以上は中等度から重度フレイルに分類しました。
主要評価項目は総死亡に設定、副次評価項目は、加齢に関連する8疾患(うっ血性心不全、冠動脈疾患、脳卒中、2型糖尿病、癌、認知症、転倒、骨折)と、長期的な介護サービスを必要とする障害の発生に設定しました。
対象者は10年後まで、死亡まで、加齢関連疾患発症まで、もしくは追跡終了日(2019年12月31日)のいずれかまで追跡しました。
変数として、性別、年収、医療保険の種類、居住地域、飲酒習慣、喫煙習慣、調査年度などに関するデータを解析してます。
96万8885人のうち、51万7052人(53.4%)が女性でした。
63万1320人(65.2%)がロバストに、27万3150人(28.2%)がプレフレイルに分類されました。
軽度フレイルは5万5200人(5.7%)、中等度から重度フレイルは9215人(1.0%)と少なく、これらを合わせた6万4415人(6.6%)が、66歳時点でフレイルと判断されました。frailty indexの平均値は0.13(標準偏差0.07)で、男性は0.12(0.07)、女性は0.15(0.07)でした。
ロバスト群と比べると、中等度から重度フレイル群には女性が多く(47.8%と61.7%)、政府の低所得者向け保険の加入者も多いとのことです(2.1%と18.9%)。
また、中等度から重度フレイル群は不活発でした。
ロバスト群に比べ、中等度から重度フレイル群の、66歳時点の慢性疾患有病率は高い値が出ました。
うっ血性心不全は、ロバスト群の1.0%と中等度から重度フレイル群では12.5%に認められ、糖尿病はそれぞれ11.5%と53.4%、高血圧は32.1%と77.8%、脳卒中は3.9%と37.1%に認められました。
フレイル群では、eGFR、空腹時血糖、収縮期血圧も不良で、3mTUGテストの所要時間は長く(8.2秒と13.0秒)、抑うつ気分があった人の割合は非常に高かった(8.3%と82.7%)。認知機能のスコアも悪く、障害を有する人の割合が高くなりました。
例えば入浴に介助が必要な人の割合は0.2%と34.7%だった。
平均値6.7年(3.0年)の追跡で、6万1783人(6.4%)が死亡していた。うち3万2683人(5.2%)がロバスト群で、2万389人(7.5%)がプレフレイル群、6616人(12.0%)が軽度フレイル群、2095人(22.7%)が中等度から重度フレイル群の人々でした。
100人・年当たりの死亡率は、ロバスト群が0.79で、プレフレイル群が1.07、軽度フレイル群は1.63、中等度から重度フレイル群では3.36でした。
社会人口学的特性とライフスタイル要因を調整した総死亡のハザード比は、ロバスト群と比較したプレフレイル群が1.53(95%信頼区間1.51-1.56)、軽度フレイル群は2.27(2.21-2.33)で、中等度から重度フレイル群は4.43(4.24-4.64)になりました。
10年累積死亡率は、ロバスト群が8.7%、プレフレイル群が11.1%、軽度フレイル群が15.7%、中等度から重度フレイル群は29.2%になりました。
ベースラインで疾患がなかった人を対象に、慢性疾患の新規診断リスクを検討したところ、やはり中等度から重度フレイル群はロバスト群よりリスクが高くなりました。
うっ血性心不全の100人・年当たりの発症率はロバスト群が0.34、中等度から重度フレイル群は1.14で、調整原因特異的ハザード比は2.90(2.67-3.15)になりました。
同様に冠動脈疾患の発症率は0.94と1.84で、ハザード比は1.98(1.85-2.12)、脳卒中の発症率は1.62と3.76で、ハザード比は2.22(2.10-2.34)、糖尿病の発症率は1.79と4.18で、ハザード比は2.34(2.21-2.47)、癌の発症率は1.49と1.44で、ハザード比は1.10(1.03-1.18)、認知症の発症率は0.77と3.25で、ハザード比は3.59(3.42-3.77)、転倒の発症率は0.06と0.20で、ハザード比は2.76(2.29-3.32)、骨折の発症率は2.85と5.07で、ハザード比は1.54(1.48-1.62)でした。
また、長期介護施設の入所対象となる障害を負うリスクも有意に高くなりました。
発症率は0.11と1.29で、調整原因特異的ハザード比は10.85(10.00-11.70)になりました。
10年累積発症率も、癌を除く全ての転帰について、スコアが高いグループほど高くなっていました。
例外となった癌の10年累積発症率は、ロバスト群が14.0%、中等度から重度フレイル11.5%で、調整部分分布ハザード比は0.99(0.92-1.06)でした。
各群で、66歳以降の10年間に新たに診断される加齢関連の慢性疾患の数を比較したところ、ロバスト群は平均0.14疾患/年(標準偏差0.32)で、プレフレイル群は0.23疾患/年(0.88)、軽度フレイル群は0.29疾患/年(0.44)、中等度から重度フレイル群では0.45疾患/年(0.87)となりました。
これらの結果から著者らは、66歳時点で評価したfrailty indexは、その後10年間の加齢関連疾患や障害の発生と、死亡リスクに関連することが示唆されたと結論しています。
また、66歳時点でのフレイル評価は、加齢に伴うリスクを予防する介入機会を与える可能性があると述べています。
この研究は韓国保健福祉部などの支援を受けています。
原題は「Assessment of Frailty Index at 66 Years of Age and Association With Age-Related Diseases, Disability, and Death Over 10 Years in Korea」です。
プレフレイルからフレイルになり、病気やケガなどのリスクが高くなるという結果になりました。
65歳過ぎたら体とお口の健康のために運動をしましょう。