舌痛症
栃木県宇都宮市兵庫塚町の歯医者 やまのうち歯科医院の山之内です。
今回は、舌痛症について書いていきたいと思います。
舌がピリピリする等の痛みや違和感の症状が出る舌痛症について書いてみました。
舌には異常所見(器質的変化)がなく、何もしていない状態で「舌が痛い」や「舌がピリピリと慢性的に痛む」などの症状(部位は舌の先か舌の縁で表在性で両側性が多い)があるものです。
その他の症状には舌がしびれる感じやヒリヒリする灼熱感(口腔内灼熱症候群)があり、原因を特定が難しい疾患で、中高年の女性に多いです。
舌痛症の診断
アフタ性口内炎・舌炎・扁平苔癬・白板症・舌がん等の痛みを伴う口腔粘膜疾患(細胞診)、口腔カンジダ症(細菌検査)、口腔乾燥症、内服薬(抗うつ薬等)による副作用、金属アレルギー、口腔清掃状態、禁煙、義歯の異常、虫歯等の歯の異常等がないかを確認します。
原因がはっきりした場合はその治療を行います。
次に、血液検査により亜鉛・ビタミン・鉄・葉酸等の数値を確認します。
また、心因性のストレス状態(体の疲労、睡眠不足、不安や心配事、うつ状態等)についても確認します。
舌痛症と言っても、様々な原因や要因があり、この治療を行ったら症状がなくなるというものではありません。
舌痛症の治療
舌痛症は原因が特定できないことが多いため、原因の治療が難しいです。
そのため、症状を緩和させる対症療法が中心になります。
まずは、うがい薬でうがいすることで緩解させる方法があります。
アズノールうがい薬を1日に数回使用することにより、症状が緩和されるケースもあります。
うがい薬を使用する際は、刺激が少ないノンアルコールの物を使用する方がいいかもしれません。
舌痛症の治療では、痛みを全て無くすことは難しいですが、痛みの程度を少しでも低くコントロールすることで、生活に支障のないようにすることが重要になります。
また、仕事や食事等、何かに夢中になっている時は、舌の痛みを感じない方が多いです。
そのため、舌に異常がないことを歯科口腔外科で確認した後は、できるだけ気にしないようにすることも重要です。
亜鉛欠乏(微量元素欠乏)による舌痛症
亜鉛や鉄の不足により舌のピリピリとした痛みを訴える患者さんが比較的多くいます。味覚が感じにくくなること、皮膚や粘膜等の傷の治りが遅くなることもあります。
通常の生活では、亜鉛・ビタミン・鉄・葉酸等の微量元素の欠乏が起こることはありませんが、偏った食事をしている場合は亜鉛等の欠乏になることがあります。
血液検査で亜鉛の数値が低い場合は薬(プロマック等)やサプリメントを服用しますが、その効果が表れるには通常1カ月以上かかります。
また、亜鉛が多く含まれる食品を摂取することも対策の一つで、牡蠣・牛肉・レバー等には亜鉛が多く含まれています。
亜鉛は体内で産生されません
亜鉛は人の身体で作り出すことができない栄養素(ミネラル)です。
身体に蓄えるため、毎日食事で摂取することが大切です。
毎日の食事から、亜鉛を多く含む食品を積極的にバランスよくとり、亜鉛不足を解消しましょう。
1日あたりの亜鉛摂取推奨量
厚生労働省は「日本人の亜鉛摂取基準」を設定しています。
平成27年に行われた「国民健康・栄養調査」で、1日あたりの平均亜鉛摂取量が報告されています。成人では70歳以上の女性以外は、男女とも各年代で推奨量を10%程度下回っています。
日本人の多くが、知らない間に慢性的な亜鉛不足になっているのです。
推奨量に近づくように、もう少しだけ亜摂取量を増やしていきましょう。
1日あたりの亜鉛摂取推奨量
男性 | 18~74歳 75歳以上 |
11mg/日 10mg/日 |
---|---|---|
女性 | 18~74歳 75歳以上 |
8mg/日 8mg/日 |
妊婦 | 10mg/日 | |
授乳婦 | 12mg/日 |
亜鉛を多く含む食品
亜鉛不足を解消するためには、亜鉛を多く含む食品を毎日摂取することが大切です。特定の食品にかたよらず、いろいろな食品をまんべんなく摂取するようにしましょう
食品 | 大人一食分のおおよその量 | 100gあたり 亜鉛含有量 |
|
量 | 亜鉛含有量 | ||
牡蠣 | 60 g / 5粒 | 7.9 mg | 13.2 mg |
---|---|---|---|
豚レバー | 70 g | 4.8 mg | 6.9 mg |
牛肩ロース(赤肉、生) | 70 g | 3.9 mg | 5.6 mg |
牛肩肉(赤肉、生) | 70 g | 4.0 mg | 5.7 mg |
牛もも肉(生) | 70 g | 2.8 mg | 4 mg |
牛レバー | 70 g | 2.7 mg | 3.8 mg |
鶏レバー | 70 g | 2.3 mg | 3.3 mg |
牛バラ肉 | 70 g | 2.1 mg | 3.0 mg |
ほたて貝(生) | 60 g / 3個 | 1.6 mg | 2.7 mg |
米飯(玄米) | 150 g / 茶碗1杯 | 1.2 mg | 0.8 mg |
うなぎ | 80 g / 半尾 | 1.1 mg | 1.4 mg |
米飯(精白米) | 150 g / 茶碗1杯 | 0.9 mg | 0.6 mg |
木綿豆腐 | 150 g / 半丁 | 0.9 mg | 0.6 mg |
たらこ | 25 g / 半腹 | 0.8 mg | 3.1 mg |
カシューナッツ (フライ) |
15 g / 10粒 | 0.8 mg | 3.1 mg |
納豆 | 40 g / 1パック | 0.8 mg | 1.9 mg |
煮干し | 10 g / 5尾 | 0.7 mg | 7.2 mg |
アーモンド (フライ) |
15 g / 10尾 | 0.7 mg | 4.4 mg |
卵黄 | 16 g / 1個 | 0.7 mg | 4.2 mg |
そば(ゆで) | 180 g / ざるそば1枚 | 0.7 mg | 0.4 mg |
プロセスチーズ | 20 g / 1切れ | 0.6 mg | 3.2 mg |
亜鉛を摂取する際の注意
亜鉛を食べ物から摂る際に、一緒に食べる食材との組み合わせに注意する必要があります。
亜鉛を多く含む食品を食べる場合には、「吸収率」を良くする工夫が大切です。
「吸収率」とは同じ量の栄養素を含む食品を食べたときに、どのくらいの栄養素が体内に吸収されるかを計算した値です。
亜鉛は腸からの吸収率が20~40%程度と、吸収効率の低い栄養素です。そして同時に食べる食品によって『吸収率』が変わることがわかっています。
亜鉛の吸収率をアップさせる為に、おすすめの食べ方があります。
- 肉類・魚類に含まれる動物性たんぱく質と一緒に食べる
- ビタミンC、クエン酸、リンゴ酸などの酸が豊富な食品と一緒に食べる
反対に亜鉛の吸収率を下げる食品や栄養素があります。
- コーヒー
- 穀類や豆類に多く含まれるフィチン酸
- ほうれんそうなどに多いシュウ酸
- 加工食品に使われる添加物のリン酸塩やポリリン酸
亜鉛の吸収率を下げる食品や栄養素を同時に摂取すると、亜鉛を吸収できなくなる可能性があります。
亜鉛を有効に摂取するためには、食品や調理法が偏らないことも大切です。
料理例
亜鉛を多く含む食品を使った、おすすめ料理をご紹介します。
この料理例では、他にも付け合わせ・副菜を注意することで、亜鉛摂取量のアップが期待できます。
ぜひ、いろいろな料理に挑戦してみてくださいね。
亜鉛を多く含む食品
牡蠣、豚レバー、牛肩ロース、牛肩肉、牛もも肉、牛レバー、鶏レバー、牛バラ肉、ほたて貝、米飯(玄米、精白米)、うなぎ、木綿豆腐、たらこ、カシューナッツ、納豆、煮干し、アーモンド、卵黄、そば、プロセスチーズなど。
心因性による舌痛症
不安や心配事、うつなど精神的なことから舌の痛みが生じることもあります。
その場合、まずは歯科口腔外科に受診し、必要があれば精神科の診察も併用になることがあります。
最後になりますが、まずはバランスの良い食事をして十分な栄養と十分な睡眠をとり、ストレスの緩和と免疫力を向上することが第一に必要です。心当たりのある方は、これらのことにまず注意してみて下さい。
この記事が少しでも参考になれば幸いです。