詰め物するときの物性について
栃木県宇都宮市兵庫塚町の歯医者 やまのうち歯科医院の山之内です。
虫歯の治療の際最もよく使用する材料、レジンについて書いていきたいと思います。
レジンペーストの保管温度条件がその硬化物の機械的性質に及ぼす影響について, 曲げ特性および表面硬さを測定するとともに, レーザー顕微鏡を用いてコントラクションギャップの観察を行うことによって検討した文献です。
材料と方法 : 供試したレジンペーストは、ユニバーサルタイプのEstelite Σ Quick、BeautifillⅡ, Filtek Supreme UltraおよびSolareの4製品、インジェクタブルタイプのMI Fillの合計5製品についてです。
レジンペーストの保管温度条件は、5℃冷蔵庫保管 (冷蔵条件)、23℃室温保管 (室温条件) およびコンポジットレジン加温器を用いて45℃にした条件 (加温条件) の合計3条件に対して実験しています。
これらの保管温度条件で硬化させた試片について、曲げ強さ、曲げ弾性率およびヌープ硬さを測定するとともに、レーザー顕微鏡を用いてウシ抜去歯にレジンペーストを充塡した際のコントラクションギャップの観察を行いました。
レジンペーストの保管温度条件が, 曲げ強さおよび曲げ弾性率に及ぼす影響は、いずれの製品においても、冷蔵条件と比較して室温および加温条件で有意に高い値を示しました。
ヌープ硬さについては、いずれの製品においても、冷蔵条件と比較して室温および加温条件で有意に高い値を示したが、その傾向は製品によって異なるものでした。
コントラクションギャップの観察については、いずれの製品においても、冷蔵条件においては窩洞隅角部にギャップの形成が顕著に観察されたが、室温条件ではギャップ幅が減少し、さらに加温条件では、ほかの条件と比較してギャップ幅の減少が観察されました。
結論 : レジンペーストの保管条件としての環境温度は, その機械的性質および窩壁適合性に影響を及ぼすことが示唆されました。
いずれの製品においても,①ヌープ硬さ②曲げ強さ③曲げ弾性率は冷蔵条件と比較し室温および加温条件で有意に高い値を示しました。
コントラクションギャップついても、冷蔵条件においては窩洞隅角部にギャップの形成が顕著に観察されたが、室温条件でギャップ幅が減少し、加温条件では、さらに減少しました。
レジンペーストの温度の上昇は、モノマー間の反応性を向上させより高い重合率を達成できます。
そのため、加温によって物性の向上が見られたと考えられます。
又、加温によってレジンペーストの粘性が変化し、重合 硬化時に適度のフローを生じたために窩壁適合性が向上したと考えられます。
本実験の結果から、レジンペーストを冷蔵庫保管し、これをただちに用いることは、その機械的性質および窩 壁適合性を低下させることが判明しました。
一方,加温条件 では、室温条件と比較してその機械的性質は向上する傾向が認められるとともに、ほかの条件に比較して良好な 窩壁適合性を示しました。
たしかに冷えてるレジンはパサパサして使いにくい感じがします。
あっためたレジンは劣化せんのか思っていたが、重合の関係で逆に物性が上がったとは驚きました。
レジンをあっためてセメントとして使う術式があります。
あっためて大丈夫かと思っていましたが、物性が上がるメリットがあったというのは驚きました。
ただ繰り返しの加温はどうなるかは不明なので、容器ごと加温するより、使用するペーストのみ加温の方がいいと思います。
ちなみに使用時に加温すると適合はいいですが、最後の方のチューブに残ったレジンはパサついてきて使えないことが多いのでもったいないけど廃棄します。
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