口臭に効果がある方法は?
宇都宮市兵庫塚町の歯医者 やまのうち歯科医院の山之内です。
今回は口臭について書いていきたいと思います。
現在の口臭予防には、8つの方法があげられており、
機械的創傷清拭、チューインガム、全身脱臭剤、外用剤、練り歯磨き、錠剤、およびその組み合わせ方法の各研究結果を分析した結果と、口臭を管理するための各方法の有効性を裏付ける低いエビデンスしかなく、どの方法で介入をすべきか、またどの方法を集中すると効果的なのかに関しての結論はまだでていません。
今後は十分に計画されたRCT(ランダム介入試験)を行って、介入や濃度を世界的に標準化した試験を実施する必要があります。
SNSや雑誌でよく「口臭にはこの商品がおすすめ!」というマウスウォッシュや舌のお手入れ用品の宣伝を目にします。
とくにTwitterやYouTubeでは歯科医師ですら「これを使えば口臭がほぼなくなる」など安易な発言をしてらっしゃる方も見受けられます。
はたして、これらの情報は本当でしょうか?
エビデンスに基づいた情報や世界的な研究をまとめた論文を分析し検証したものがあるので紹介していきます。
2019年12月に「コクラン」という組織が出している世界的にも信頼性の高い「いくつもの研究をまとめた論文」が出ています。
口腔内の問題が原因の口臭は全体の85%、耳・鼻・喉に原因の口臭は10%、内科的な全身疾患に原因がある口臭は5%となっており、この中に心理的・精神的な原因で口臭を感じてる人も含まれています。
ではまず、口臭の原因について解説します。
口臭の臭いの成分を分析すると、揮発性硫黄化合物(VSC)が主な発生源です。
その主成分は硫化水素、メチルメルカプタンとジメチルサルファイドです。
VSCをはじめ、インドールなどの他の追加の臭気は、食品の残骸、体から剥がれた細胞、唾液タンパク質、歯垢、そして腐敗した微生物を細菌が代謝分解することによって生成されます。
また口臭の部分的な原因として、これらが舌の後部と溝、また歯と歯の間などに蓄積することが主な原因であると考えられています。
また歯肉炎、歯周ポケットも口臭を引き起こす可能性がありますが、それらがどのくらい影響を与えているかはまだ不明です。(世界でも意見がわれています)
ここまでで、口腔内に原因がある口臭が圧倒的に多いということがわかりましたね。
果たしてこれらがテレビで、専門家と思われる方々が勧めている舌磨きやうがい薬で解決できるのでしょうか?
口臭に舌磨きやうがい薬はどのくらいの効果があるのかは、世界各地で様々な研究がおこなわれています。
先ほど紹介したコクランに、それらをまとめて解析していた論文があるのでその中身を覗いてみましょう。
2019年4月8日に投稿された、17〜77歳の1809人を対象とした44件の研究をまとめた論評『Interventions for managing halitosis』というものがあります。
このレビューでは、口腔内に原因のある口臭に対する色々な対策がどれくらい効果があるのか調べています。
対策については、以下の8つの異なる方法を調べました:機械的洗浄(例えば舌クリーナーと歯ブラシ)、チューインガム、全身脱臭剤(食用キノコ抽出物)、局所剤(例:ゲル)、練り歯磨き、うがい薬、錠剤、およびこれらの治療法の組み合わせです。
舌磨き(機械的に舌を洗浄する方法)→効果があるか分からない
0〜5の6段階評価で、平均0.20改善するという結果でしたが、信頼性が殆どない研究が2件しかなく、全体で46人の参加者でしか調べられていません。
うがい薬→効果があるかわからない
0〜5の6段階評価で、平均0.20改善すると言う結果でしたが、信頼性は殆どない研究1件、参加者44人から得られた結果なのでなんとも言えません。
バイアスがかかっていること、研究の対象者が少ないことからエビデンスレベルは低い方法であると言えます。
よってどの方法で介入をすべきか、またどの方法で、どのように行うのかが効果的なのかに関しての結論はいまだでていません。
今後は十分に計画されたRCT(ランダム介入試験)を行って、介入や濃度を世界的に標準化した試験を実施する必要があります。
他にも、機械的洗浄、チューインガム、全身脱臭剤、外用剤、練り歯磨き、錠剤、およびその組み合わせ方法など、さまざまな介入を比較してみましたが、この対策の仕方だけでは精神的な原因で口臭を感じる口臭恐怖症や口臭症に対応できません。
国際ガイドラインには口臭症の国際分類として、
1 真性口臭症(生理的口臭、病的口臭)
2 仮性口臭症
3 口臭恐怖症
と分類することができます。
1は第三者が悪臭と感じられるもの、2と3は第三者が感じられないものです。
特に3は精神的な問題を抱えており歯科単科だけでは解決できないと考えられます。
「仮性口臭症」は口臭がない状態ですが、本人は口臭があると信じている状態です。
「口臭恐怖症」は、口臭が存在することを示す物理的または社会的証拠がないにも関わらず、口臭の治療に対し患者が満足できないことにより、本人の口臭への自覚が持続するため、真性口臭症または仮性口臭症のいずれかの治療の後も持続することがある場合に起こりえます。
このような方は、歯科や医科を歩きまわり、ドクターショッピングをしてしまう可能性があります。
セカンドオピニオンとは異なります。
以上よりこのレビューを作成した人は、このように結論を出しました。
「今後、口臭については十分に計画されたRCTを行って、世界的に標準化した試験を実施する必要がある」
また「口臭症」という、口臭は他人からは感じないかもしれないのに自分はあるかもしれないと気にしてしまい精神的ストレスをかかえている状態になることもありうるので、歯科だけでなく医科と連携して対応に当たらなければいけない場合もあります。
舌磨きやマウスウォッシュについては、効果があるかもしれませんが全ての人に有効というわけではありません。
もし口臭が気になるのであれば、かかりつけ歯科をお持ちの方は、歯科医師と相談の上で口臭商品の使用を検討しましょう。
また最近はセルフメディケーション(「自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てすること」と世界保健機関(WHO)は定義しています)という考えも広まってきていますので、特に医療施設の足りない僻地などにお住いの方は既に通販で口臭商品を購入しているかと思います。
しかし口臭商品を購入しても効果が見込めないときは、原因を探すためにも歯科クリニックなどを窓口にして他の科とも連携できる専門外来などを紹介してもらう必要があります。
成分への詳細について、口臭の臭いの成分を分析すると、揮発性硫黄化合物(VSC)が主な発生源です。
歯周病、歯周ポケットと口臭の寄与について
歯周ポケットは腐敗臭を引き起こす可能性がありますが、口腔悪臭へそれらがどのくらい影響を与えているかはまだ不明です。
日本口臭学会では、歯周病は口腔領域における口臭を発生させる原因疾患の筆頭にあげられます。
口腔清掃指導やスケーリング・ルートプレーニングなどの歯周基本治療は、臭気レベルを軽減させます。
重度の歯周病による口臭の場合、歯周外科手術は効果的といわれています。
と参考エビデンスにある指針で述べており、主に2つの論文をガイドラインの文献としてあげてます。
(1)杉山利子,亀山敦史,角田正健:口臭患者に対する歯周基本治療の効果,日本口臭学会会誌,1,23-27,2010
(2)亀田正健:口臭の原因と対応について〈その2〉,日歯医師会誌,58,973-979,2006
コクランのレビューの詳細について
コクランには、2019年4月8日に投稿された、17〜77歳の1809人を対象とした44件の研究をまとめた論評があります。
このレビューでは、介入(口臭に対してのある対策:VSCの生成を削減、排除、またはマスクできる)VS別の介入、VSプラセボまたは対照と比較しました。
舌磨きは機械的デブライドメントの一種で、舌に対して清掃器具をあてて、VSCを産生する細菌、残留食品、および歯肉と舌からの細胞破片の数を減らすことを目的としています。
機械的デブライド:機械的舌洗浄VS舌洗浄なしの場合、歯科医が報告した官能検査(OLT)スコアのエビデンスは非常に不確実でした。
患者が報告したOLTスコアまたは有害事象に関するデータは報告されていません。
マウスリンス(息をリフレッシュするためにブラッシング前に使用する)、マウスウォッシュ(ブラッシング後に使用する消毒液)の多くのものには、香料に加えて抗菌剤が含まれており、これらは一般に、臭いを中和するものと隠すものに分類されています。
舌磨きやマウスウォッシュについては、現時点では効果がある人もいるかもしれませんが、全ての人に有効というわけではありません。
かかりつけ歯科がある場合は相談してみましょう。
またかかりつけ歯科がいなく、口臭商品を使っても改善を認めない場合は、原因特定していくためにも歯科の受診を推奨します。
舌みがき歯ブラシによる口臭について気になる方は下記をクリックしてください。