お口の中の歯周病菌 唾液に含まれる歯周病菌について
栃木県宇都宮市兵庫塚町の歯医者 やまのうち歯科医院の山之内です。
今回は、歯周病菌と唾液について書いていきたいと思います。
歯周病菌は、歯周病(歯肉病や歯周炎とも呼ばれる)の主要な原因となる細菌です。
歯周病は、歯とその周りの組織に影響を与える炎症性の疾患で、口腔内に存在する特定の細菌が主要な要因として関与しています。
以下は、歯周病菌の主要なものです。
ポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis): この細菌は歯周病の主要な原因とされており、歯周ポケット内で増殖し、歯周組織にダメージを与えます。また、免疫応答を調節する能力を持っているため、炎症の進行に寄与します。
トレポネーマ・デンタリス(Treponema denticola): これも歯周病関連の細菌で、歯周ポケット内で活動し、歯周組織への損傷に寄与します。
テノンナイラ・フォルシア(Tannerella forsythia): この細菌は歯周病に関連し、歯周組織に影響を与えることが知られています。
アグレガトィバクター・アクチノマイセテムコミタンス(Aggregatibacter actinomycetemcomitans): この細菌は特に若い年齢層でみられ、歯周病の進行に関与することがあります。
ほかにも、歯周病菌はありますが、今回はコレだけ上げさせていただきます。
これらの歯周病菌は、歯の表面に付着し、プラークとして知られる膜を形成します。
適切な口腔衛生習慣や定期的な歯科検診を怠ると、これらの細菌が増殖し、炎症と歯周病の進行を引き起こす可能性が高まります。
歯周病の早期発見と治療は、歯と歯周組織を守り、口腔全体の健康を維持するために重要です。
この研究の目的は歯肉縁下細菌叢の変化が唾液中に反映されているかどうか知るために、歯周治療前後の歯肉縁下と唾液の細菌叢を特徴付けて比較した研究があります。
それらを理解したうえで、スクリーニングとして唾液を使用した歯周病の検査キットもあります。
医療における「スクリーニング(screening)」は、特定の疾患や健康リスクを早期に発見し、治療や予防措置を行うためのプロセスです。
スクリーニングは、一般的に健康診断や検査を通じて行われ、次のような目的があります。
早期発見:スクリーニングは、病気や健康問題を早期に発見するのに役立ちます。病気が初期段階で見つかれば、治療が成功しやすく、合併症のリスクが低減します。
リスク評価:スクリーニングは、個々の患者のリスクを評価するのに役立ちます。特定の疾患や疾患グループに対する感受性やリスクファクターを特定し、適切な対策を講じるための情報を提供します。
予防:スクリーニング結果に基づいて、予防策や生活様式の変更を勧めることができます。これにより、疾患の発症を防ぎ、健康を維持するのに役立ちます。
例えば、がんのスクリーニングプログラムでは、定期的な検査(マンモグラフィー、大腸内視鏡検査、子宮頸がん検診など)を通じてがんの早期発見を試みます。また、高血圧や糖尿病のスクリーニングも一般的であり、これらの疾患を早期に発見し、適切な治療や管理を行います。
ただし、スクリーニングは必ずしも全ての疾患に適用されるわけではなく、患者の年齢、性別、家族歴、リスクファクターなどに基づいて適切に選択される必要があります。また、偽陽性や偽陰性の結果が発生する可能性があるため、検査結果は医師と十分な議論を行う必要があります。スクリーニングの目的は、早期発見と予防であり、診断そのものではありません。
唾液は口腔内で重要な役割を果たす生体液です。
食物の消化補助: 唾液にはアミラーゼという酵素が含まれており、これは炭水化物を分解する役割を果たします。
唾液が口内に混ざることで、食べ物の嚥下(飲み込み)の際に炭水化物の消化が始まります。
口腔の潤滑: 唾液は口腔内の粘膜を潤滑にし、食事中に食べ物がスムーズに咀嚼(噛み砕く)され、嚥下されるのを助けます。
また、唾液が乾燥を防ぎ、口内の快適さを維持します。
酸の中和: 唾液は酸を中和する働きがあります。
これにより、口腔内のpHが適切なレベルに保たれ、歯や粘膜が酸による損傷を受けにくくなります。
口臭の軽減: 唾液は口内の細菌の成長を制御し、口臭を軽減するのに役立ちます。また、唾液が食べ物の一部を洗い流すことで、食後の口臭を軽減する効果もあります。
歯の保護: 唾液は歯を保護し、酸による歯質の溶解を抑えます。また、カルシウムやリンなどのミネラルを供給し、歯を強化する役割を果たします。
傷口の治癒: 唾液には成長因子や抗菌物質が含まれており、口内の傷口や潰瘍の治癒を促進する役割があります。
舌の味覚受容体の刺激: 唾液は舌の味覚受容体を刺激し、食物の味覚を感知するのに貢献します。
これらの機能により、唾液は口腔内の健康を維持し、食事の消化と快適な摂取をサポートします。また、唾液不足や唾液の質に異常がある場合、口の健康に問題が生じる可能性があります。
特異的な歯周病原菌が存在する口腔内の唾液は、歯周治療の前後で対応する歯肉縁下の状態と関連しているという仮説から、歯周病菌と唾液について研究した文献があります。
この研究の対象者は、25人の広汎型慢性歯周炎患者です。
刺激唾液サンプル、歯肉縁下プラークサンプル、ベースライン時、非外科的歯周治療後2、6、12週間後に採取されたものを対象にしています。
歯肉縁下と唾液細菌叢はヒト口腔微生物次世代シーケンシング(HOMINGS)テクニックと呼ばれる方法で処理され、相対的存在量を元に特徴付けられました。
たまに、歯肉の中に菌をとり、数を調べる検査があります。
スピアマンの順位相関係数が歯肉縁下および唾液サンプルにおける歯周病原細菌の相互関係を調べるのに用いられました。
歯周治療は、歯肉縁下プラークサンプル中のPorphyromonasとTreponemaを有意に減少させるとともに、Streptococcus、RothiaとActinomycesの相対存在量を有意に高めていました。
唾液中の全体の優勢属による相対的存在量は歯周治療の影響を受けなかった。しかしながら、Porphyromonas gingivalis (r = 0.68)、Prevotella intermedia (r = 0.72)、Filifactor alocis (r = 0.58)、Treponema denticola (r = 0.51)、Tannerella forsythia (r = 0.45) とParvimonas micra (r = 0.45)などの特異的な歯周病原細菌の相対存在量に関して、歯周治療の前後で歯肉縁下プラークと唾液サンプル間に正の関連性がありました(p < 0.0001)。
歯肉縁下および唾液の歯周病原細菌量は治療の前後で関連していました。
それゆえ、この研究からのデータは唾液中に同定される歯周病原細菌が歯肉縁下の細菌叢から溢出していることが示唆されました。
「唾液中の優勢菌種であるstreptococcusとPrevotellaの相対存在量は歯周治療前後において変化を受けなかったのですが、その理由として、歯肉縁下細菌叢よりも他の部位(舌、扁桃、咽頭)からの供給が主であるからと考察されています。
歯周病原性細菌について検討すると、ベースライン時から歯周治療後2週後における関連が増加しているので、歯周病原細菌(P.gingivalis、P.intermedia、T.forsythia、T.denticola、F.alocis、P.micra)の唾液レベルが歯肉縁下の変化反映していることが示されました。
それゆえ、唾液中に存在する歯周病原細菌は歯肉縁下の細菌叢から溢出したものであろうとのことでした。
歯がなくなっても、歯周病菌は存在しているので気を付けましょうということですね。
全身疾患の糖尿病と歯周病について気になる方は下記をクリックしてください。
糖尿病による歯周病治療の影響について