電子タバコ 紙巻きたばこ 非喫煙者 歯周病のリスク
宇都宮市兵庫塚町の歯医者 やまのうち歯科医院の山之内です。
今回は、電子タバコと紙巻きたばこと非喫煙者のお口の状態について書いていきたいと思います。
米国ニューヨーク大学の研究チームが、国際学術誌において発表した論文によると、電子タバコ喫煙者は固有の口腔内細菌叢を有しているとのことです。
電子タバコ喫煙者の口腔内細菌叢は、紙巻タバコ喫煙者よりは健康的ですが、非喫煙者よりは健康的でない可能性があり、時間とともに歯周病を悪化させる可能性があります。
本研究は、ニューヨーク大学歯学部分子病理学のDeepak Saxena 教授とXin Li 教授らによって行われました。
紙巻タバコの口腔内環境への影響については長年研究されてきており、その弊害は広く知られています。
一方で、電子タバコの口腔内環境への影響については、電子タバコ自体が比較的新しい嗜好品であるため、その長期的影響についてはまだ十分な研究が行われているとは言い難いところがあります。
本研究は、84名の成人を被験者とし、紙巻タバコ喫煙者群、電子タバコ喫煙者群、一度も喫煙したことがない非喫煙者群に分けて行われました。
6ヶ月の間隔をあけて、アタッチメントロスを主な指標とする歯周組織検査とプラークサンプル採取が行われました。歯周組織検査の結果の分析により、
1回目の検査では、歯周病の重症度は、紙巻タバコ喫煙者群>電子タバコ喫煙者群>非喫煙者群でした。
2回目の検査では、すべての群において、歯周病が重症化している被験者が存在したなどが判明しました。
なお、本研究チームは別の論文において、1回目と2回目の検査結果を比較したところ、電子タバコ喫煙者群のみにおいて、アタッチメントロスが明確に悪化したことを報告している。
さらに、プラークサンプルを用いた口腔内細菌叢の分析により、
それぞれの群が、固有の口腔内細菌叢を有してます。
電子タバコ喫煙者群は、紙巻タバコ喫煙者群とも非喫煙者群とも異なる口腔内細菌叢を有しています。
すべての群において約1/5の細菌が共通していたが、電子タバコ喫煙者群の口腔内細菌叢は、非喫煙者群より紙巻タバコ喫煙者群のものに明確になりました。
具体的には、Selenomonas、Leptotrichia、Saccharibacteriaが、紙巻タバコ喫煙者群と電子タバコ喫煙者群に共通して多く観察されました。
電子タバコ喫煙者群において、歯周病に関連することが知られている Fusobacterium、Bacteroidales などの細菌が特に多く観察されました。
Deepak Saxena 教授とXin Li 教授は、これは電子タバコが、どのように口腔内環境に影響を与えているかを調べた最初の縦断研究です。
電子タバコの喫煙は、固有の口腔内細菌叢の成長を促進し、紙巻タバコの喫煙者にも見られるいくつかの細菌の成長にも影響を与えています。
そして、電子タバコ喫煙者固有の口腔内細菌叢は、口腔内環境にリスクを及ぼすものです。
また、電子タバコ喫煙者群に見られる歯周病の臨床指標に関連するいくつかの細菌は、宿主の免疫反応を変化させるものであることが判明しました。
具体的には、電子タバコの喫煙は、異なるレベルの免疫調整因子であるサイトキシンの多寡と関連しているとのことです。
特定のサイトキシンは、口腔内細菌叢のバランスを崩すことに寄与し、宿主に炎症や感染を引き起こす傾向を持つため、歯周病を悪化させてしまいます。
電子タバコ喫煙者群において、
・炎症を引き起こすサイトキシンの1つである TNAα が非常に高い値を示します。
・IL-4 やIL-1β は低い値を示す。IL-4 は、歯周病患者において減少する傾向にあり、治療をすると増加する傾向にあります。
などが判明しました。
これにより、電子タバコの喫煙により免疫が低下する可能性が示されました。
「電子タバコ喫煙者群に固有の口腔内細菌叢は、宿主の免疫反応を変化させています。そのことは歯周病の臨床指標とも一致しており、電子タバコが口腔内環境にとってリスクになる機序を示しています。
と結論づけています。
電子タバコのかみたばこほどではないにしろ、体だけでなくお口の健康にも悪い影響があることがわかりました。
ですので、電子タバコだから大丈夫というわけではありませんという話でした。
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