歯周病による炎症 歯周病による全身の為害性
宇都宮市兵庫塚町の歯医者 歯周病専門医の山之内です。
今回は、歯周病の炎症はどの程度の影響があるかを書いてきます。
健康な歯の周囲組織は、歯周ポケット(歯と歯ぐきとの間)呼ばれる溝が1~3mm程度あり、
溝に面した歯肉内面の上皮では、歯周病菌から守る防御機構が働き、歯の周囲組織は健康に保たれています。
しかし、歯周病菌が歯周ポケットで増殖し、ひとたび歯肉に炎症が起こると、
歯の周囲組織の細菌に対する防御機構がうまく働らかなることがあります。
歯ブラシすると、歯肉から出血するのも歯周ポケットないが炎症していることを示しています。
進行すると、歯周ポケットの内面がただれたり、くずれたりする潰瘍ができ、
そこから細菌やもしくは細菌成分のリポ多糖(LPS)など、さまざまな病原因子が体内に侵入し、
血流とともに組織や臓器へ移動して全身の健康に影響を与える恐れがあります。
また、歯周ポケット内で増殖した歯周病菌が気道を経て肺へ入り、肺炎などの感染症を引き起こすリスクも大きくなります。
細菌や炎症と書かれていますが、炎症がどれくらい波及しているか今まではわかりませんでした。
炎症部の面積を図る方法として、PISAという方法があります。
PISA(PeriodontalInflamed Surface Area)とは、
2008年に Nesse らによって報告された歯周病の炎症部の面積を定量的に評価できる方法です。
日本歯周病学会で、2018年9月に歯周炎評価指標のPISAが導入されました。
臨床的アタッチメントレベル、歯肉退縮量、プロービング時の出血から算出され、歯周ポケット内部の炎症部位の面積を
平方ミリメートルで表示します。
PISA はプロービングポケットデプス(PPD)、プロービング時の出血(BOP)でも算出することも可能であり、
ソフトを使用することにより自動的に求められます。
この値から歯周炎の重症度だけでなく、炎症創の広がりを数値化することが可能です
例えば、親知らずを除く28本の歯がすべて歯周病になり、そのすべての歯の周りに深さ5ミリの歯周ポケットができたと仮定すると、
歯周ポケットに面したポケット上皮の面積は、約72㎟(大人の手のひらとほぼ同じ面積)にもなるといわれています。
医科であれば、血液検査の高感度CRP値と言って、通常の血中の炎症を客観的に把握することができる指標がありますが、
どこの部位の炎症かはわかりません。
その炎症は、お口の中かもしれませんよ。
その歯周ポケットにできたデンタルプラーク呼ばれる細菌の塊1mg中には、
1億個から10億個もの細菌が集まって共生するバイオフィルムと言われる最近の塊を作っていると考えられています。
歯周ポケット内に潰瘍ができれば、細菌がここから体内に侵入しやすくなります。
さらに、歯周病は慢性の炎症疾患ですので、炎症が起こった歯周組織では、
さまざまな炎症関連物質や炎症を強めるように働くたんぱく質である炎症性サイトカインと呼ばれる、
炎症を調節するたんぱく質が継続して作られるようになります。
その影響により、歯周ポケットから血管を通じ全身にも波及すると、歯周病菌等が全身に影響を与えることになります。
実際に、歯周病は糖尿病だけでなく、
細菌性心内膜炎、その他の循環器疾患、誤嚥性肺炎、早産・低体重児出産、敗血症、
糸球体腎炎、関節炎、掌蹠膿疱症(手のひら、足の裏に膿をもつ発疹ができる皮膚病)
などの原因の一つとなったり、その病状を悪化させたりする危険因子として報告されています。
実に様々な症状を悪化させてしまう病気です。
痛みがないからいいよと、他人事にように思わないでください。
気づいてからでは遅くなるかもしれません。
歯の生殺与奪の権を他人(菌)に握らせないでくださいね。
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