水道水にフッ化物を入れると虫歯になりにくいって本当ですか?
栃木県宇都宮市兵庫塚町の歯医者 やまのうち歯科医院の山之内です。
水道水にフッ化物があると虫歯になりにくいって本当でしょうか?
おそらく、人類が初めにかかる病気として虫歯があげられています。
そのくらい虫歯の歴史は古く、根深いものとなっています。
東京医科歯科大学は5月24日、水道水中の天然フッ化物濃度が0.1ppm高いと子どものう蝕が3%少ないことについて発表しました。
ppm(パーツ・パー・ミリオン)や百万分率(ひゃくまんぶんりつ)は、100万分のいくらであるかという割合を示すparts-per表記による単位のことです。
「parts per million」の頭文字をとったもので、100万分の1の意味です。
1ppm = 0.0001% であり 10,000ppm = 1% になります。
日本の出生コホートデータ分析により、日本における水道水に含まれている天然フッ化物濃度が高い地域の子供は、虫歯が少ないことが明らかになったとの結果が出たようですね。
わざと混入したわけではなく、自然の中に存在するものなので、人工的に入れているわけではありません。
どうしても、いやな方はフッ素が入っていない地域の水道水からしか水を飲まないようにするしかないですね。
コホート研究は、特定の人々の集団(コホート)を長期間にわたって追跡し、特定の要因や条件とその後の結果や病態の関係を調査する研究デザインのことを指します。
コホートは通常、共通の特徴を持つ人々で構成され、例えば特定の年齢グループ、職業、地域、または疾患のリスクを持つ人々などが含まれることがあります。
コホート研究は、特定の要因が後続の結果や疾患の発生に与える影響を明らかにするために使用されます。
例えば、喫煙と肺がんの関係を調査する場合、喫煙者と非喫煙者の2つのコホートを作成し、長期間にわたって追跡します。
追跡期間中に発生する肺がんの発生率を比較することで、喫煙と肺がんの関連性を評価することができます。
コホート研究は観察的な研究デザインであり、被験者の行動や状態を自然な環境で調査することができます。
ただし、追跡期間が長いため、研究の費用や時間がかかることがあります。また、追跡対象の人々が研究から離れることや、追跡対象のグループが代表的でない(選抜バイアス)ことなど、研究の信頼性に影響を及ぼす要因もあります。
コホート研究は、疾患のリスク要因や治療効果の評価、予防プログラムの効果など、さまざまな健康関連の研究に使用されます。
長期的なデータ収集と追跡により、人々の健康と病気のパターンを理解する上で重要な情報を提供することが期待されています。
この研究は、東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科健康推進歯学分野の松山祐輔准教授らの研究グループで調査されたものです。
研究結果の文献は、国際科学誌のCommunity Dentistry and Oral Epidemiologyに掲載されています。
日本で行う水道水フロリデーションについて
水道水にフッ化物を入れて虫歯にしにくくする、フロリデーションというやり方があります。
水道水フロリデーションは長い歴史をもち、すでにう蝕予防効果と安全性が科学的に証明され、アメリカなどで広く実施されているポピュラーな予防治療なのです。
現在、日本では水道水フロリデーションは実施されていませんが、以前から水道に含まれている水には天然のフッ化物が含まれおり、土壌などの違いにより、その濃度に地域差があることが知られています。
地域により、差が著明なことは古くから言われており、井戸水から直接飲用した時代は、多くのフッ化物が含まれていた地域もあったそうです。
現在問題なっているフッ素化合物は、有機フッ素化合物のことで、天然にはほとんど存在しない物質であり、主に人間によって作り出される化合物のことです。
この「有機フッ素化合物」という名称は、単独の物質を指す言葉ではなく、有機物質中にフッ素原子が含まれている広範な化合物の総称になります。
なので、歯科で使用する無機フッ素化合物や上記に書かれている有機フッ素化合物とは全く異なりますのでご安心ください。
今回の研究で、水道水に含まれるの天然フッ化物濃度と子供のう蝕との関連を明らかにすることを目的として行っております。
フッ素濃度が高い地域の子供はう蝕治療を受ける割合が少ない?
日本の子供を対象とした追跡調査のデータを解析したところ、保護者等の回答から、齢5.5歳から12歳まで34998人に対して、子供のう蝕治療経験の有無を確認しました。
う蝕治療を受けた子供の割合は、7歳(40.3%)がもっとも高く、12歳(24.9%)でもっとも低い結果となりました。
加えて、各年の居住市区町村の水道水中の天然フッ化物濃度は、水道統計から調査し、平均0.0887ppm(標準偏差=0.0422)でした。
これらのデータから、平均所得や歯科医院密度を含む個人・家庭・地域レベルの共変量を調整し、Cross-classified multilevel Poisson回帰分析を行った結果、天然フッ化物濃度が0.10ppm未満、0.10-0.19ppm、0.20-0.29ppm、0.30ppm以上の市区町村でのう蝕治療経験はそれぞれ、35.0%、35.4%、33.4%、 32.3%でした。
そうした結果、水道水に高い濃度のフッ化物が含まれた市区町村に住む子供たちは、う蝕治療を受ける割合が低いという結果を得られたそうです。
水道水に含まれる、天然のフッ化物濃度が0.1ppm増加するごとに、う蝕治療を受ける子どもの割合が3.3%低下したことが明らかになりました(有病率比=0.967、95%信用区間:0.939、0.996)。
水道水に含まれる天然のフッ化物濃度と虫歯治療の関連性のグラフ
今回の研究で、現在の日本においても水道水に含まれるフッ化物濃度の変化が虫歯の増減に関連することが明らかになりました。
これは、水道水に含まれるフッ化物濃度の違いから、虫歯の地域差の原因の一因になっているとも考えられます。
虫歯は、世界でもっとも多い病気であり、以前より少なくなったとはいえ、日本でも子供の3人に1人以上がう蝕に罹患している病気です。
世界各国では、水道水フロリデーションが実施され、約60ヶ国の4億人以上がその恩恵を受けていますが、現在の日本では、フッ化物配合歯磨剤が非常に広く知られている一方で、水道水のフロリデーションは実施されていないのが現状です。
水道水のフロリデーションは、経済的な問題などに左右されずに効果がある有用な施策の一つといわれています。
このような虫歯のポピュラーな予防歯科治療が、日本でも推進されることで、う蝕罹患率の低下へ期待ができるといわれてます。
水道水フロリデーションとは
使用するフッ化物の応用できる普及度を考慮して、安心安全に虫歯予防ができる濃度(機構により変動やフッ化物応用法の普及度により異なりますが、おおよそ0.7–1.0ppm程度)に水道水中のフッ化物イオン濃度を調整する施策のことです。
効果と安全性が科学的に証明され、米国やオーストラリアなど諸外国では広く実施されています(米国歯科医師会2018参照)。
以前のもお話ししたかもしれませんが、大学の公衆衛生の宿題で地元に行き水道水と出身学校の水道水や井戸があれば井戸水を採取し、フッ化物濃度を調査するものがありました。
当時は、意味があるのかと思いましたが、当時でも地域差があり、親戚まで行き井戸水からくみ上げた学生は、周囲が火山があり山間部にから採取したものまでいました。
そのような水には、天然のフッ化物が多く含まれているのが、試薬を使用すると濃度が明らかに異なることがわかりました。
フッ化物に対して、拒否反応する方がいるので日本全国や地域に対しても水道水に入れることはできませんが、学校単位などに広がればいいですね。
現在日本で行うことができるのは、フッ化物配合の歯磨き粉を使用する、歯科医院でフッ素塗布を行う、地域でのフッ化物塗布を受けるなどでしょうね。
出典「 水道水中の天然フッ化物濃度が0.1ppm高いと子どものう蝕が3%少ない 」(東京医科歯科大学)参照
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