歯周病治療で糖尿病の「人工透析リスク」が最大44%減少
栃木県宇都宮市兵庫塚町の歯医者 やまのうち歯科医院の山之内です。
歯周病と全身疾患にはかかわりがあることはよく知られるようになりました。
今回は、歯周病治療と人工透析のリスクについて書いていきます。
10万人を追跡した最新研究からわかった重要な事実があります。
糖尿病と歯周病は一見すると別の病気のように思えますが、実は深く関係しています。
そして最近、「歯周病治療を定期的に受けている糖尿病患者では、人工透析への移行リスクが32〜44%も低い」という非常に注目すべき研究結果が報告されました。
このでは、その内容をわかりやすく解説します。
■ 糖尿病と人工透析の関係
糖尿病は、腎臓に大きな負担をかける病気です。長年高血糖の状態が続くと腎臓のろ過機能が低下し、「糖尿病性腎症」という合併症を引き起こします。
進行すると人工透析が必要となり、患者さんの生活の質(QOL)が大きく低下するだけでなく、医療費の負担も非常に大きくなります。
そのため、糖尿病では「腎症の進行をいかに予防するか」が非常に重要です。
■ 歯周病は糖尿病を悪化させるリスク因子
歯周病は、歯を支える組織に炎症が起こる病気です。
実は糖尿病患者の多くが歯周病を併発しています。
さらに、歯周病は血糖コントロールを悪化させることが知られています。
歯ぐきの炎症によって産生される炎症性物質が全身に広がると、インスリンの働きを妨げ、血糖値が上がりやすくなってしまうのです。
つまり、糖尿病と歯周病は「お互いに悪影響を及ぼし合う関係」なのです。
■ 最新研究:歯周病治療で透析リスクが最大44%低下!
2025年1月、国際的な歯周病専門誌「Journal of Clinical Periodontology」に、以下のような研究結果が掲載されました。
この研究では、40〜74歳の糖尿病患者 約10万人の医療データを追跡し、歯周病治療による歯科受診と人工透析移行リスクの関係を分析しました。
結果は非常に興味深いものでした。
- 年1回以上、歯周病治療で歯科受診をしていた人 → 透析リスクが 32%低下
- 半年に1回以上、定期的に受診していた人 → 透析リスクが 44%低下
つまり、定期的に歯科医院で歯周病治療を受けるだけで、将来の人工透析リスクを大幅に下げられる可能性があるのです。
半年に一回以上歯の検診を受けるだけで重症化が防げる可能性があるのです。
■ なぜ歯周病治療で透析リスクが下がるのか?
その理由のひとつは、「全身の炎症が減る」ことです。
歯周病があると、口の中から炎症性物質が常に血液中に放出され、全身の血管や腎臓にも悪影響を与えます。
歯周病を治療・予防することで炎症が軽減されると、
- 血糖コントロールが改善
- 腎臓への負担が減る
- 糖尿病性腎症の進行が遅くなる
といった効果が期待できます。
さらに、定期的な歯科受診は生活習慣の見直しや健康意識の向上にもつながるため、間接的な効果も考えられます。
■ 糖尿病の方におすすめの歯科受診習慣
糖尿病をお持ちの方は、以下のような習慣を意識するとよいでしょう👇
- 半年に1回以上の定期検診・歯石除去
歯周病は痛みなく進行することが多いため、早期発見がカギです。 - 歯ぐきの腫れや出血を放置しない
軽い症状でも放っておくと重症化し、治療が長引くこともあります。 - 日々のセルフケアを丁寧に行う
毎日のブラッシングと、デンタルフロスや歯間ブラシの併用が効果的です。 - 歯科と内科の連携治療を受ける
血糖コントロールと歯周病治療を並行して行うことで、相乗効果が期待できます。
■ 医科歯科連携が糖尿病治療の未来を変える
今回の研究は、医科(内科)と歯科の連携が糖尿病合併症の予防に役立つことを示す重要なエビデンスです。
歯科受診は、単に歯の健康を守るだけでなく、「全身の健康寿命を延ばす医療行為」と言えます。
糖尿病患者の人工透析移行は、本人や家族の生活に大きな影響を与えます。
しかし、定期的な歯周病治療というシンプルな行動が、そのリスクを大きく減らせる可能性があるのです。
■ まとめ
- 糖尿病と歯周病はお互いに影響し合う密接な関係
- 歯周病治療を受けることで、人工透析リスクが最大44%低下
- 半年に1回以上の定期的な歯科受診が重要
- 医科歯科連携によって合併症予防とQoL向上が期待できる
歯周病治療は「口の健康」だけでなく「命を守る医療」です
糖尿病をお持ちの方は、ぜひ歯科医院での定期的な検診・クリーニングを習慣にしましょう。
それが、将来の人工透析や重篤な合併症を防ぐ第一歩になります。