高齢者の口腔状態と死亡率・要介護リスクの関係
― 歯とお口の健康が「健康寿命」を左右する ―
近年、「お口の健康」が全身の健康や寿命と深く関わっていることが、さまざまな研究から明らかになっています。
今回、大阪公立大学や東京科学大学による大規模調査により、高齢者の口腔状態が死亡率や要介護リスクと密接に関連していることが示されました。
歯が痛くないから大丈夫、食事は何とかできているから問題ない——
そう思っていても、実はお口の機能低下が、知らないうちに体力や栄養状態、さらには寿命に影響している可能性があります。
歯の本数と死亡率の関係
大阪公立大学などの研究グループは、大阪府に住む75歳以上の高齢者約19万人を対象に、2018~2020年度の健診データを解析しました。その結果、歯の状態と死亡率の間に明確な関連があることが分かりました。
調査では、
- 健康な歯や治療済みの歯が多い人ほど死亡率が低い
- 虫歯など未治療の歯が残っている人ほど死亡率が高い
という傾向が認められました。
特に注目すべきなのは、歯が1本もない人は、21本以上歯が残っている人に比べて、死亡リスクが約1.7倍高かったという結果です。
虫歯や歯の欠損は、単に「噛みにくい」という問題だけでなく、慢性的な炎症を引き起こし、全身の健康状態にも影響を与える可能性があると考えられています。
オーラルフレイルと健康寿命
一方、東京科学大学の研究グループは、全国の高齢者約1万1千人を6年間追跡し、「オーラルフレイル」と健康寿命との関係を調査しました。
オーラルフレイルとは、
- 歯が少ない
- 噛みにくい
- 飲み込みにくい
- 口が渇く
といった、口腔機能の軽度な衰えが重なった状態を指します。
この研究では、オーラルフレイルのある人は、
- 65歳時点の健康寿命が約1.4~1.5年短い
- 要介護になるリスクが1.23倍
- 死亡リスクが1.34倍
に高まることが分かりました。
さらに、定期的に歯科検診を受けている人は、健康寿命が約1年長くなる傾向も確認されています。
なぜ「口の衰え」が全身に影響するのか
口腔機能が低下すると、
- 噛める食品が限られる
- 食事量が減る
- 栄養が偏る
といった変化が起こりやすくなります。
その結果、筋力低下や体重減少、免疫力の低下につながり、転倒や要介護状態を招くリスクが高まります。また、食事が楽しめなくなることで、外出や人との交流が減り、心身の活力が低下することも知られています。
東京科学大学の相田潤教授も、「歯が痛くなくても、噛みにくさから食事内容や量が偏り、栄養不足や体重減少につながることがある」と指摘しています。
定期的な歯科検診が健康寿命を守る
今回の研究から改めて分かるのは、
「歯があるかどうか」「噛めるかどうか」「定期的に歯科を受診しているか」
が、高齢期の健康を大きく左右するということです。
歯科医院での定期検診では、
- 虫歯や歯周病の早期発見
- 噛み合わせや入れ歯の調整
- 口腔機能低下のチェック
などを行い、将来的なリスクを未然に防ぐことができます。
まとめ:お口の健康は「命を守るケア」
歯やお口の状態は、単なる見た目や食事の問題ではなく、健康寿命や生命予後に深く関わる重要な要素です。
「歯が痛くないから」「今は食べられているから」と安心せず、
定期的な歯科検診と早期治療を続けることが、将来の健康と自立した生活を守る鍵となります。
ご自身やご家族のお口の状態が気になる方は、ぜひ一度歯科医院で相談してみてください。

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