歯科矯正学 コンピューターを使用した支援矯正について
栃木県宇都宮市兵庫塚町の歯医者 やまのうち歯科医院の山之内です。
コンピューター支援の矯正顎、顎顔面のバイオメカニクスとアライナー矯正について書いていきたいと思います。
アライナー矯正は、歯列矯正、歯並びを整える治療の一種で、特に歯並びの軽度な不正や歯間の隙間を治療するための方法です。
アライナー矯正は、従来のブラケットやワイヤーを使用した矯正治療とは異なり、透明なプラスチック製のマウスピース状の装置を歯に装着して使用します。
このプラスチック製の装置は、患者の歯の形状に合わせて作成され、ほぼ透明で目立ちにくいため、見た目に影響を与えずに歯の矯正を行うことができます。
アライナー矯正の主な特徴と利点は次のとおりです。
- 透明性: アライナーは透明であるため、他人からはほとんど目立たず、見た目に自然です。
- 取り外し可能性: アライナーは食事や歯磨きの際に取り外すことができ、日常生活が通常通りに行えます。ただし、装着時間を守る必要があります。
- トータルケア: アライナーは歯を動かすだけでなく、歯並びを改善するために噛み合わせ(咬み合わせ)も調整できます。
- 予測可能な結果: コンピューターシミュレーションを使用して治療計画を立てるため、治療の結果を事前に予測しやすくなります。
- 痛みや口内の損傷のリスクが低い: 金属ブラケットやワイヤーがないため、口内の損傷や痛みのリスクが低いといわれています。
アライナー矯正は、特に歯並びの軽度な不正や矯正が必要な場合に選択されることが多く、病状や症状によっては他の矯正方法と組み合わせて使用されることもあります。
治療の際には、歯科医師が患者の状態を評価し、適切な治療プランを立てることが重要です。
また、アライナーを使用する際には、指示に従って定期的な調整や装着時間の管理が必要です。
アライナー矯正が普及してきたのは、治療中の見た目や歯科医側の見た目上の簡便さ、いい加減なコンサルティング会社の参入などもあって問題が出てしまっています。
アライナー矯正は、矯正治療の一つなので、すべてこれ一つで賄うのではなくほかの治療法と混合して行うのが主流になってきています。
また矯正治療は、個々によって噛み癖や顎の大きさ形態等異なっていますので、私と私のワイフが同じかみ合わせになったらびっくりします。
デジタル技術が発達し、コーンビームX線CTや光学印象、アライナー矯正装置など様々なコンピューター関連技術が矯正歯科診療にも浸透しつつあります。
その中で、前述のようにアライナー矯正はその見た目上の高さから社会における矯正治療の普及に大きく関与してきたとも言えます。
しかしながら、その普及とともに問題症例も数多く発生し、消費者センターや学会への相談や訴訟件数も増加して社会問題化してるといわれています。
解決策には、術者がバイオメカニクスを基盤として顎顔面の診断能力、アライナー特有の移動メカニクスに関する理解、デジタル化されていない生体反応を推測するための経験、不測の事態に対するリカバリー技術や思考の柔軟性などが必要と言われています。
前述したとおり、アライナーも矯正器具の一つです。
アライナーで改善しないところは、ほかの方法でアプローチします。
シュミレーションは、あくまで予測値です。
シュミレーションのように必ずなるわけではありません。
悪いことばかりではありません。
歯科治療におけるデジタルトランスフォーメーションも進行するといわれています。
健康指標を遠隔で歯科医院が管理するシステムへと発展し、医科も含めた従来の医療そのものを変革する可能性がある分野です。
顎骨の成長にともなった下顎下縁平面の傾斜や顎角部の開大などの形態的な変化は、咬筋や側頭筋などの咀嚼筋の機能によって影響を受けています。
これは、下顎頭に発生する筋牽引時の「反力」(reaction force)が刺激となって、軟骨成長の方向とその量が変化するためといわれています。
この「反力」の発生は、咀嚼器官におけるⅢ級テコの原理で説明されています。
Ⅲ級テコとは、支点が力点や作用点の外側にある状態をいうそうです。
下顎骨を咀嚼筋によって吊り下げられた状態とみなし、下顎頭部分を支点、咬合する歯列を作用点、咀嚼筋の付着部分を力点とするテコ理論です。
この理論は、バイオメカニクスの領域ではすでに常識となっており、多くの実験的な証明もなされています。
このモデルでは、咬合時には必ず支点である下顎頭部分に筋牽引の反力が発生します。
この反力は咬合力ほど強大ではないが、力点、作用点の相対的な位置関係と荷重の大きさや方向に左右されます。
つまり、咀嚼筋の牽引の方向と強さ、付着部位、歯列の位置と咬合接触部位、歯軸傾斜、関節円板の位置によって、反力の大きさと方向は決定されます。
このことは、側頭筋優位から咬筋優位に変わる筋機能の成長発育変化や、矯正治療によって歯の位置や歯軸を変更することで顎関節に発生する反力が変わることをも意味しています。
このメカニズムの理解が最も大切といわれています。
この力学状態を知らずに、歯列をいくらでも遠心に移動できるから非抜歯を選択しようとか、下顎の大臼歯を遠心に傾斜させて治療を終了すればいずれ臼歯部が咬んでくるであろう、という曖昧な治療術式を行うべきではないと説いています。
また、咬合と顎関節症の発症には関係がないと考えることは大きな誤りであることも述べています。
咬合彎曲の存在理由の一つも、実はこの反力の生成過程と関係しているといわれています。
咬合彎曲は、歯軸が傾斜することによって、歯に加わる荷重に対して鼻上顎部の抵抗域を集約させています。
特に、上顎は呼吸機能を維持するために骨の厚みは薄く、中に鼻腔を収める必要があるため、上方の鶏冠付近に抵抗の中心を集めています。
そして、側方から見た歯軸傾斜(Spee 彎曲)が、咀嚼筋のベクトルとともに、下顎頸部分に発生する反力の方向を決定しているのⅢ級テコ理論は、日本ではあまり馴染みがないかもしれないようですが、咬合理論の理解や顎関節の診断、成長発育の推定など、歯科臨床のすべてに応用できる基本理論であるので是非この機会に理解していただきたいとも著書では書いています。
ちなみに、この反力は、筋電図の積分値や筋断面積比率を基にして各筋のベクトルを求め、プレスケールなどによる歯牙荷重と歯軸傾斜から作用点に加わるベクトルを算出して、関節円板の位置における平衡条件から三次元モーメント式で計算することができるといわれています。
このような計算方法の有効性は、すでに 1990 年代に検証されています。
下顎頭に荷重が加わっていることの証左とも言える症例もあります。
ちょうどCBCT を開発した直後に遭遇した症例で、それまではⅢ級テコ理論に懐疑的だった筆者を納得させる機会を与えてくれたものといわれています。
CBCT の解像度とシミュレーションソフトが揃っていなければ、今でも理解できいくらいの理論だったといわれています。
Ⅲ級てこの原理によって、顎関節の位置から反発方向に成長することがあるようです。
咬筋と呼ばれる筋肉の力が弱いとそれに対する顎の関節の大きさが小さくなるようです。
逆に、咬筋と呼ばれる筋肉の力が強いとそれに対する顎の関節の大きさが大きくなるようです。
矯正治療後の後戻りは、平衡状態の回帰現象と考えていました。
アライナーの矯正治療は犬歯や引っ張る力に対して弱いとの考えでした。
場合によっては、最もメジャーなインビザラインより、ストローマンのクリアコレクトやシロナの方が歯肉の上まで覆っていて良好な場合があるそうです。
その先生が言うには、6割くらいがアライナーで改善できるとのことでした。
残りは、混合させる治療になるとのことでした。
ワイヤーであったり、外科的な治療であったりです。
まだまだ、アライナー治療は発展途上の治療法です。
より安全で安心な治療を行えるよう研修していきたいと思っています。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
やまのうち歯科医院ではこのような取り組みも行っています。気になる方は下記をクリックしてください。
矯正研究会 ウェブ開催の研修