フッ化物塗布事業の社会的意義と持続可能性について
栃木県宇都宮市兵庫塚町の歯医者 やまのうち歯科医院の山之内です。
栃木県宇都宮市のフッ素塗布事業について書いていきたいと思います。
近年、むし歯予防に対する関心が高まり、宇都宮市においてもフッ化物塗布事業が実施されてきました。
フッ化物塗布は、むし歯予防や進行の抑制を図るものであり、子供たちの口腔の健康維持につながるとともに、公共衛生の向上にもつながる取り組みです。
このような背景から、私たち宇都宮市歯科医師会は宇都宮市民の口腔の健康維持に取り組むとともに、公共衛生の向上に貢献するため、フッ化物塗布事業を実施してきました。
本事業を通じて、宇都宮市地域医療の貢献のあり方について発表させていただきます。
宇都宮市フッ素塗布事業は、50年以上前から行われており、
1969年度 2歳から就学前、イオン導入法にてフッ化物塗布を東武百貨店にて行っていました。
1970年より中部公民館、中央小学校、県歯科医師会館、市医療保険事業団と場所を変え
1996年度 現在行われている、宇都宮市保健所にて実施することになりました。
2011~2015年度には、対象年齢が2歳~小学1年生まで拡大し、2016年度以降には2歳~小学2年生まで拡大しました。
また、2007年度から2歳児や希望者にゲル法を導入しております。
全国の自治体におけるフッ素塗布事業の開始時期を示します。
開始時期を比較すると 宇都宮市歯科医師会のフッ化物塗布時期は最も古い時期に開始した部類であることがわかります。
フッ化物塗布事業は、満2歳から小学2年終了前までの児童を対象に行っており、3年生からは、健康教育を行っているため、満2歳から小学生就学中の口腔内の健康を把握することができています。
前期と後期にそれぞれ4回実施しており、各1回ずつ受けられるようになっています。
2020年度には行動制限後、密にならないように、後期に5回ずつの計10回実施しており、
2021、22年度においても、密にならないよう、前後期6回ずつの計12回行っています。
フッ化物塗布だけでなく、口腔内の診査、歯の無料相談コーナーがあり、宇都宮市歯科医師会公衆衛生委員が口腔内の相談を担当しています。
この事業は、宇都宮市歯科衛生士学校生の教育実習も兼ねており、学生の教育、歯科衛生士の認知度を高める働きも担っています。
全国市町村のフッ化物塗布実地者のべ人数は、平均377人、政令市等のフッ化物塗布実施者のべ人数は、平均4057人、
宇都宮市歯科医師会が行ったフッ化物塗布の人数は、過去5年間の平均で、のべ9305人と全国市町村や政令指定都市等の平均と比較しても、多くの人数に対して行っていることがわかります。
せっかくこのようなことを古くから行っているので、宇都宮に在住している方で対象年齢のお子さんは利用しない手はありません。
当日の流れは、開催される数十分前に、スタッフが集合し、実施されるフッ化物塗布のためのミーティング行い、終了後、自分の持ち場に行き待機します。
来場者は、1階にて受付を済ませた方から順番に階段を上り、2階の口腔診査会場にて、歯科医師が患児の口腔内の診査を行い、診査終了後3階に上り作成したフッ化物塗布用トレーをしようし、歯科衛生士がフッ化物塗布を行います。
イオン導入法が主に行われますが、萌出交換期や嘔吐反射が強い子また、小さい子にはフッ素ゲルを使用して塗布する場合もあります。
1階出口付近にて、子供の口腔内について心配事がある両親からの相談会を行っています。
コロナ禍におけるフッ化物塗布事業についてお話しします。
会場内の密集・密接を避けるため、通常、年8回の実施を2020年には後期のみで10回、2021、22年には12回行っています。
来場される前にご家族の方等の体調確認をお願いし、発熱や風邪等の症状がある場合には、来場をご遠慮願いし、マスクの着用・手指消毒等の感染防止にご協力していただいていました。
フッ化物塗布の際も間隔をあけ、最少人数で来場していただきました。
受付状況は、順番がわかるようTwitterにて確認できるようにしており密にならない環境を整えています。
宇都宮市歯科フッ素塗布事業には、多くの人々が関わっています。
施設の準備や運営に、事務スタッフや施設管理者が、事前に、広報紙、ホームページへの掲載、窓口での受診票の配布、コミュニティーFMなどを利用してお知らせしています。
実施時には、歯科医師や歯科衛生士などの歯科医療従事者も、フッ素塗布の実施にあたって必要となります。
また、教育の一環として歯科衛生士学校生が参加しています。
2022年度では、
歯科医師 通常11人のところコロナ禍の為9人
歯科衛生士専門学校生 各学年約10名ずつの30人ほど
歯科衛生士 12人
市職員 9人
事務局 3人
計 63人と多くの人数がかかわって成り立っております。
過去5年間の受診者数と一日の平均人数及び実施日数の表です。
2020年度受診者は、延べ4494人で急激な減少が認められましたが、コビット19流行により後期のみとし、対象者が半分となったためです。密を避けるため、開催数を10回と増やし、一日当たりの受診者を減少させましたが、受診率は軽微な減少となっています。
2021年22年度には受診率は回復し、密を避けるため実施日数を前後期8回から12回と増やし一日当たりの人数を減少させ密を避けることができました。
栃木県、全国平均、宇都宮市の3歳児の虫歯有病率です。
栃木県や全国平均より宇都宮市が低いことがわかります。
12歳児の一人平均う蝕歯数のグラフです。
栃木県全体の平均と比較して宇都宮市が少ないことがわかります。
フッ化物塗布事業は、宇都宮市の子供だけでなくその家族における、一次予防を担っており、地域住民の健康の維持増進に十分寄与し、その社会的意義は重要です。
宇都宮市歯科医師会のフッ化物塗布事業は、全国でも古く1960年代から行われており、政令指定都市と比較しても遜色ないほどの大規模なフッ化物塗布事業となりました。
コビット‑19の影響は軽微であるものの、こうした感染流行に対処し継続させ、フッ化物塗布のさらなる普及と、歯科衛生士学生のさらなる教育が必要なことが感じました。
宇都宮市歯科医師会のフッ化物塗布事業は、宇都宮市歯科医師会員、歯科衛生士、歯科衛生士専門学校生、宇都宮市職員、事務局の支援協力のもと、宇都宮市地域住民の口腔健康維持に十分寄与していることが示されました。
以上が、とある学会で発表しようとした内容の一部ですが、発表をしないことになりましたがせっかくなのでブログでの掲載にしました。
せっかく、このようなことを行っているので利用しない手はありません。
効果は実証されているので、トレーニングも兼ねていくのも手だと思います。
学校検診は、検診するだけです。
定期的な検査だけでは予防はできません。
フッ素塗布は2カ月に一回でもいいといわれています。
たまにフッ素塗布をするだけでは、効果が低いとされています。
家でも、フッ素入れ歯磨き粉を使用して歯科医院でも頻繁にフッ素塗布することを推奨しています。
これは、私見ではなく、論文やシステマティックレビューでも正しいとされているものです。
科学的根拠が高いものです。
お子様のことを考えてぜひ一度考えてみてください。