認知症になりやすい人は、奥歯がない人?
栃木県宇都宮市兵庫塚町の歯医者 やまのうち歯科医院の山之内です。
お口と認知症について書いていきたいと思います。
歯がないことと認知症についての研究はよく聞かれます。
その原因や研究の仕方は統一していないのですが、噛みにくい環境になるとその傾向が高くなるようですね。
奥歯のかみ合わせが失われるとアルツハイマー型認知症の発症リスクが高まるという研究結果を、九州大の研究グループがまとめました。
2040年に高齢の認知症患者数が584万人になるとの推計もある中、研究グループは奥歯のかみ合わせの維持が認知症予防につながると指摘しています。
「入れ歯、毎日洗わない」が4割
九州大大学院歯学研究院の鮎川保則教授らは、複数自治体が参加した健康関連データベースから、17年4月~20年3月のレセプト(診療報酬明細書)を分析しました。
65歳以上の約2万2000人について、奥歯のかみ合わせがそろった箇所の数と、アルツハイマー型認知症の診断時期を照らし合わせました。
その結果、奥歯のかみ合わせが全てそろっている人に比べ、歯の欠損でかみ合わせが一部失われた人は、認知症の症状が1・34倍表れやすいようです。
前歯も含めてかみ合わせが全くない人だと1・54倍高くでました。
食べ物を細かくかみ砕く能力は、奥歯を1本失うと半減し、総入れ歯では通常の3割程度に低下します。
今回の研究で奥歯の喪失と認知症の進行との因果関係が特定されたわけではないが、奥歯の喪失により、脳血流の減少、栄養状態の低下、会話困難や自信喪失による社会活動の低下が進み、認知症の進行リスクが高まるとみられています。
研究結果は、アルツハイマー病に関する専門誌に掲載されています。
「定期検診やお口のケアで自分の歯を大切にし、もし失っても入れ歯やインプラントなどでかみ合わせを回復してほしい」とも発信しています。
最低でも、義歯を作成して使用してほしいと思われます。
噛むことと認知症の間に関係があるのは噛むことで脳が刺激されるから?
歯と脳は神経でつながっており、噛むことによって、脳の神経ネットワークが刺激されます。
噛むことと認知症が関係があるといわれるのはそのためです。
私たちは自分では意識していませんが、噛むことで脳に刺激を与え続けています。
一方、歯がなくて噛めない状態の方は、脳に噛むことによる刺激を与えることが出来ません。
噛むという動作を行わないと、唾液も出にくくなってしまいます。日ごろから硬いものも噛んで食べている方は、唾液が良く出ますので、歯周病になりにくく、高齢になっても歯が残っている割合が高くなります。
インプラントで奥歯を補うことがアルツハイマー病の防止になる?
名古屋大学大学院医学系研究科教授で再生医療の第一人者の上田実教授が雑誌に寄せられたコメントがあります。
「アルツハイマー病を防止するには、よく噛むことが必要になるが、入れ歯では噛む力が不足して、神経の萎縮は止められません。
一方、インプラントであれば、天然歯に近い噛む力が確保できるので、神経の萎縮を防げるといわれています。
失った歯を入れ歯で補ったとしても、噛む力が弱く、脳の神経への刺激が充分でないと、上田教授は指摘しています。
しかし「インプラントでないとダメなのか。入れ歯では認知症になってしまうのか」と決めつけるのは早計です。
入れ歯にも様々な材質や形態があり、実際に不自由なく良く噛めている方もおられます。要は、「日常的に硬いものを噛むように心がけること」であり、いくらインプラントを入れてしっかり噛めるようになっていても、軟らかいものばかりを好んで食べている方は脳への刺激が弱いということです。
歯がほとんどなくて噛めない方は要注意!
日本人の成人が歯を失う原因の一番多いのは歯周病です。
シニアの方で、「年をとったら歯がなくなるのは仕方がない」と思っておられる方は、案外多くおられるかもしれません。
しかし、歯がなくなるのは人が生きていくうえで大変危険なことです。
なくなった歯をブリッジや入れ歯やインプラントで補って噛めるようになった方は、まだ大丈夫です。
一番の問題は、「歯がほとんどないのに噛めるように治療をしていない方」です。
噛めないのでやわらかいものを飲み込むようにして食べている方は、実は認知症になりやすいという調査結果があります。
ガムを噛むと脳の血流量が増えるという実験結果
厚生労働省の調査によると、65歳以上で自分の歯がほとんどなく、しかも入れ歯を使っていない人は、20本以上歯が残っている人と比べて、認知症になり介護が必要になる可能性が1.9倍高くなると報告されています。
その理由としては、歯がほとんどないのに入れ歯を使っていなくて、日常的に噛めない生活を送っているからだと考えられています。
日本チューインガム協会が行った実験によると、ガムを噛むことで脳の血流が良くなるという実験結果が報告されています。
この実験では、20歳〜85歳までの30人にガムを噛んでもらい、噛む前と後の脳内の血流の変化をMRIで調べました。その結果、大脳の運動感覚野という場所の血流量が、ガムを噛むことで20〜40%も増加するという結果が得られました。
血流量の増加はすべての被験者に見られました。
また大脳のその他の場所や小脳でも血流量の増加が見られたということです。
しかし、虫歯予防の観点から、お勧めできるガムとお勧めできないガムがあります。
入れ歯を使用している方は、入れ歯につきにくいガムを使用していただきたいし、虫歯予防の観点からは砂糖が含まれていないガムを使用していただきたいです。
歯科医院でお勧めするのは、キシリトール入りのガムをお勧めされると思いますよ。