コラム
2024年05月20日

食後すぐに歯磨きするのはよくないのですか?

栃木県宇都宮市兵庫塚町の歯医者 やまのうち歯科医院の山之内です。

食後すぐ歯ブラシすると歯が削れると聞いたのですが本当でしょうか?

一部報道で、食後すぐに歯を磨くと、弱っている歯の表面が削れてしまうので、30分時間を空けてから磨く方がいい、と言っているようです。
この話はある実験結果を基に、出来上がった意見ですが、皆さんが誤解しないように、説明しておきたいと思います。

このような実験があります。
抜歯した歯をスプライトライト(多くのスポーツ飲料やイオン飲料も同じ考えていただくといいでしょう)につけると、歯の表面が酸で溶けてしまいます。
この溶けた歯を取り出し、何も飲み食いしていない人の口の中に入れると、だ液の作用で再石灰化が起こり、溶けた歯の表面が強化されてきます。
それが30分以上口に入れたままにしておくと、歯ブラシをしてもあまりすり減ることはないが、30分以下だと(10分や20分では)再石灰化が不十分なため、歯ブラシをするとすり減りやすい、というのです。

しかし、現実にはこのようなことは起こりえません。
飲み食いした人の口の中では、歯が溶ける脱灰のほうが再石灰化より勝っているため、30分まではむしろ歯が溶けるほうが強いのです。


人の口の外の実験と、口の中で起こることを、一緒にしてしまっているところに問題があるためです。

この実験を図を使って詳しく説明すると、以下のようになります。
スプライト(PH2.9)の入った容器に、抜歯した歯を90秒浸け歯を溶かす。(これを脱灰といいます)

次にその歯を取り出し、正常な口の中に入れる。(何も食べていない人の口の中)
酸で溶けた歯を、口の中に入れると、 脱灰された歯に唾液中のカルシウムが取り込まれる。(再石灰化)
再石灰化が進むと、酸で溶けて弱くなった歯が再強化される。
この再石灰化の程度は30分未満では十分でなく、歯ブラシをするとすり減りやすくなる。
30分以上再石灰化された歯は、歯ブラシをしてもすり減る程度は少なくて済むというものです。
確かに30分以上経過したものと、それ以下のものではすり減り方に違いがあります。

実験では、スプライトに入れ脱灰された歯を口の中に入れると、すぐに再石灰化が始まります。
しかし、実際の口の中は何かを飲み食いした後は、脱灰と再石灰化が同時に進行しますが、再石灰化より脱灰のほうが強く起こっており、
約30分ほどは歯が溶けるほうが勝っているのです。
脱灰のほうが再石灰化より勝っている時間は、およそ30分と考えていただけばいいと思います

何も食べていない口の中と、脱灰が進行している食後の口の中では、状況が全く違っています。
日常生活で食後30分歯を磨かないと、充分歯が溶けるのを待つという、何とも矛盾したことになります。

飲食後の口の中は、

飲食後約30分ほど歯は溶け続けています。
再石灰化より脱灰(歯が溶ける)の方が勝っているのです。

これでお分かり頂けたと思いますが、自分で飲み食いする場合、食後はできるだけ速やかに、歯を磨くようにされることをお勧めします。
気になる方は、歯を磨くときは、弱い力で歯ブラシを小さく動かすようにすると、歯がすり減るのを抑えることができます。
歯ブラシを大きく動かして歯を磨くと、歯のすり減りかたも大きくなってしまいます。
すでに象牙質が露出して、知覚過敏になっている方は、特に歯ブラシの動きを小さくされるよう気をつけてください。

あえて「食後30分は歯磨きをしないほうがいい」ケースを考えるとすれば、実験と同じような条件が存在する場合です。
おそらく以下のようなケースが考えられます。

かなり無理のある想定ですが、一つ目は
実験で使った歯は、プラ―ク(歯に付くばい菌のかたまり)が付着していなかったはずなので、何かを飲んだり食べたりする皆さんの歯に、
全くプラ―クが付着していないケースです。プラ―クが付着していなければ、細菌による飲食後の脱灰は起こりません。
食べ物や飲みものの、酸性の影響だけになりますので、実験と同じ条件が整います。
この場合は、歯は磨かないほうが充分な再石灰化を期待でき、歯は削れにくくなるでしょう。
しかし、歯に汚れ(細菌)のついていない人など、恐らくどこを探しても見つからないと思います。

あと一つ、皆さんの口の中と同じように、プラ―クが存在するとして、30分以上たってから磨くほうがいいケースがあるとすれば、歯にプラ―クが付いていても、プラ―クが酸を作り出すことのできる物質(砂糖その他の糖)が全く含まれず、酸のみの飲食物を口にする場合です。
しかし、酸のみの食べ物は存在しませんので、除外することになります。
ノンカロリー飲料にもプラ―クが酸を産生出来る物質が、含まれている可能性が十分あります。
普段使うお酢でも、酸のほかにいろいろな物質が含まれていて、プラ―クに影響を与えると思われますので、これもだめのようです。
酸しか含まれていない飲み物もなさそうです。
でもこのような飲み物なら、多くの飲食物より酸だけの影響に近いといえます。
しかし運動中など、ノンカロリーの飲料でも頻繁に飲んでいると、酸によって歯が溶けるほうが、再石灰化を上回るため、酸蝕症で歯に穴が開く危険が
高くなります。
スポーツにあまり清涼飲料を飲みすぎるのは考え物です。

やはり何かを飲み食いした後は、できるだけ速やかに歯を磨いたほうが良さそうです。
くどいようですが、決して強い力で歯ブラシを大きく動かして、歯を磨かないようにしてください。
乱暴な磨き方をすると、食後の時間に関係なく、歯がすり減ってしまいます。

小児歯科学会でも以下のように発表しております。

これまで保育所・幼稚園、学校では昼食後にはなるべく早く歯みがきをしてから遊びましょうと指導してきています。
その理由としては、むし歯をつくる細菌が多量に含まれる歯垢(プラーク)と食後口の中に残留する糖質を早く取り除くためだからです。

ところが、最近になって、食後すぐに歯をみがくと、あたかも歯が溶けてしまうというような報道が新聞やテレビで伝えられたため、現場がやや混乱しているようです。

これらの報道のもととなったのは、実験的に酸性炭酸飲料に歯の象牙質の試験片を90秒間浸した後、口の中にもどしてその後の歯みがき開始時間の違いによる酸の浸透を調べた論文で、むし歯とは異なる「酸蝕症」の実験による見解なのです。

実際の人の口の中では、歯の表面は上記の実験で用いられた象牙質ではなく酸に対する抵抗性がより高いエナメル質によって被われています。したがって、このような酸性飲料を飲んだとしても、エナメル質への酸の浸透は象牙質よりずっと少なく、さらに唾液が潤っている歯の表面は酸を中和する働きがあり、酸性飲料の頻繁な摂取がないかぎり、すぐには歯が溶けないように防御機能が働いています。つまり、一般的な食事ではこのような酸蝕症は起こりにくいと考えられます。

小児における歯みがきの目的は歯垢の除去、すなわち酸を産生する細菌を取り除くとともにその原料となる糖質を取り除くことです。歯みがきをしないままでいると、歯垢中の細菌によって糖質が分解され酸が産生されて、歯が溶けだす脱灰が始まります。
このように、歯垢中の細菌がつくる酸が歯を脱灰してできるむし歯と、酸性の飲食物が直接歯を溶かす酸蝕症とは成り立ちが違うものなのです。

結論としては、通常の食事の時は早めに歯みがきをして歯垢とその中の細菌を取り除いて脱灰を防ぐことの方が重要です。

学会としても今後より詳細な情報を提供していく予定ですが、現在のところ、園・学校における昼食後の歯みがきについては、現状通りの方法で問題ありません。

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