やまのうち歯科医院 コラム 予防
2026年08月17日

歯を1本失っただけでも要注意? 中高年の「歯の喪失」と循環器疾患の意外な関係

40~64歳・約55万人を調査した最新研究からわかったこと

「歯を何本か失ってしまったけれど、まだ食事はできるから大丈夫」

そう思っていませんか?

実は、歯を失うことは、単に「噛みにくくなる」というお口の問題だけではない可能性があります。

2026年7月、東北大学大学院歯学研究科の研究グループによる大規模な研究が、米国歯周病学会の学術誌「Journal of Periodontology」にオンライン公開されました。

この研究では、**40~64歳の約55万人(551,386人)**を対象として、歯を失った本数と、その後に循環器疾患を発症するリスクとの関係が調べられました。

その結果、

歯を失った本数が増えるほど、循環器疾患の発症リスクが高くなる

という関連が確認されました。

さらに注目したいのが、1~4本程度の比較的少ない歯の喪失でも、循環器疾患のリスク上昇がみられたことです。

「20本以上歯が残っていれば大丈夫」という単純な考え方ではなく、歯を1本でも失わないようにすること自体が大切なのではないかということを考えさせる研究結果です。


循環器疾患とは?

循環器疾患とは、心臓や血管に関係する病気の総称です。

代表的なものとして、

  • 心筋梗塞などの虚血性心疾患
  • 脳梗塞
  • 脳出血
  • その他の血管に関係する病気

などがあります。

循環器疾患は、日本人の健康や生命に大きく関わる病気の一つです。

そのため、「歯を守ること」と「全身の健康」がどのように関係しているのかを知ることは、これからの健康管理を考えるうえでも重要です。


今回の研究で何がわかったの?

今回の研究では、健康保険組合や自治体から得られた匿名化された診療報酬明細書(レセプト)と特定健診のデータが利用されました。

対象となったのは、

40~64歳の551,386人

という非常に大規模な集団です。

研究開始時点での「歯の喪失本数」と、その後の循環器疾患の発症との関係を調べたところ、

歯を失った本数が多くなるほど、循環器疾患の発症リスクも上昇する傾向

が確認されました。

例えば研究結果では、歯の喪失が4本の場合、循環器疾患のリスクは約1.09倍、27本の場合には約1.21倍でした。

ここで重要なのは、「歯を4本失ったら必ず循環器疾患になる」という意味ではありません。

また、この研究だけから「歯を失うことが循環器疾患を直接引き起こす」と断定することもできません。

しかし、

歯の喪失本数が増えるにつれて、循環器疾患の発症リスクも高くなるという関連が確認された

ことには大きな意味があります。


特に注目したいのが「1~4本の歯の喪失」

これまで、歯の本数と全身の健康について考えるときには、

「80歳で20本以上の歯を残す」

という8020運動が広く知られてきました。

もちろん、20本以上の歯を残すことは非常に重要です。

しかし今回の研究からは、

「20本を切っていないから安心」ではなく、歯を失った本数が少ない段階から健康管理を考える必要がある

可能性が示されました。

つまり、

「まだ1本しか失っていないから大丈夫」

「2~3本なくても普通に食べられるから問題ない」

と考えるのではなく、

「なぜその歯を失ったのか?」

を考えることが大切です。


歯を失う主な原因は「歯周病」と「むし歯」

歯を失う原因として特に重要なのが、

歯周病とむし歯です。

むし歯が進行すると、歯の内部まで細菌による感染が広がり、歯を残すことが難しくなる場合があります。

一方、歯周病では歯ぐきの炎症が長期間続くことで、歯を支えている骨が少しずつ失われていきます。

歯周病が進行すると、

  • 歯ぐきから出血する
  • 歯ぐきが腫れる
  • 歯が動く
  • 歯と歯の間に食べ物が詰まりやすくなる
  • 口臭が気になる
  • 最終的に歯を失う

といった変化が起こります。

そして厄介なのは、歯周病はかなり進行するまで強い痛みが出ないことがあるということです。

「痛くないから大丈夫」

とは限りません。


歯が抜けたら「治す」だけではなく、原因を考える

例えば、40代や50代で歯を1本失ったとします。

「1本くらいなら問題ない」

と思って、そのまま放置してしまう方もいます。

しかし、ここで考えていただきたいのが、

「なぜ歯を失ったのか?」

ということです。

歯周病が原因だったのであれば、他の歯にも同じ問題が起きている可能性があります。

むし歯が原因だったのであれば、毎日の食生活や歯みがき、フッ化物の使用方法などを見直す必要があるかもしれません。

つまり、1本の歯を失ったことは、

「お口の健康管理を見直すサイン」

と考えることができます。


歯を守るためにできること

歯周病やむし歯を予防するためには、特別なことをする必要はありません。

まず大切なのは、毎日の基本的なケアです。

① 毎日の歯みがき

歯ブラシを使って、歯の表面だけでなく、歯と歯ぐきの境目まで丁寧に清掃しましょう。

② 歯間清掃

歯ブラシだけでは、歯と歯の間の汚れを十分に取り除けないことがあります。

デンタルフロスや歯間ブラシを利用することが大切です。

③ フッ化物を利用する

フッ化物には、むし歯を予防する効果があります。

毎日の歯みがきにフッ化物配合歯磨剤を取り入れることも重要です。

④ 食生活を見直す

砂糖を含む食品や飲料をだらだら摂取する習慣は、むし歯のリスクを高めます。

⑤ 定期的に歯科医院でチェックする

自分では見えない場所のむし歯や、歯周病の進行状態を確認するためには、歯科医院での検査が欠かせません。


「歯が痛くない人」こそ歯科医院へ

歯科医院というと、

「歯が痛くなったら行く場所」

というイメージがあるかもしれません。

しかし、本当に大切なのは、

「痛くなる前に行くこと」

です。

むし歯も歯周病も、早い段階で発見できれば、治療や管理の選択肢が広がります。

特に40代以降は、仕事や家庭などで忙しく、自分のお口の健康を後回しにしてしまいがちです。

しかし、この時期に歯を失い始めると、その後さらに歯を失ってしまう可能性があります。

だからこそ、

「今、何本歯が残っているか」だけではなく、「これから何本の歯を残せるか」

を考えていただきたいと思います。


こんな方は一度、お口をチェックしてみませんか?

次の項目に当てはまる方は、一度歯科医院での検査をおすすめします。

  • 40歳を過ぎてから歯科医院に行っていない
  • 歯を1本でも失っている
  • 歯ぐきから血が出る
  • 歯ぐきが腫れることがある
  • 最近、口臭が気になる
  • 歯石がついている
  • 歯が以前より長くなったように感じる
  • 歯がグラグラする
  • 食べ物が歯の間に挟まりやすい
  • むし歯を繰り返している
  • 「痛くないから」と歯科受診を先延ばしにしている
  • 将来も自分の歯で食事をしたい

一つでも当てはまる場合は、現在のお口の状態を確認してみましょう。


歯を守ることは、将来の健康を守ること

今回の研究は、

「歯を失わないことが、中年期以降の全身の健康維持にもつながる可能性がある」

ことを示す重要な研究です。

ただし、歯の喪失と循環器疾患の関係には、年齢、生活習慣、全身疾患などさまざまな要因が関係している可能性があります。

そのため、

「歯が抜けると心臓病になる」

という単純な話ではありません。

大切なのは、

歯周病やむし歯を予防し、できるだけ歯を失わないようにすること。

そして、もし歯を失ってしまった場合には、

「なぜ失ったのか」を確認し、残っている歯を守ること

です。


「1本くらい大丈夫」が、歯を守るタイミングを逃してしまうこともあります

歯は、1本失っただけでは大きな変化を感じないかもしれません。

しかし、その1本をきっかけに、噛み合わせや清掃状態が変化したり、残った歯への負担が増えたりすることがあります。

そして何より、

歯を失った原因が残ったままになっていないか

を確認することが重要です。

「最近、歯医者に行っていない」

「歯が1本なくなったけれど、そのままにしている」

「歯ぐきから血が出る」

という方は、ぜひ一度、お口の状態を確認してください。


いつまでも自分の歯で食べるために

歯科医院の役割は、悪くなった歯を治療することだけではありません。

これ以上、歯を失わないようにすること。

そして、

今ある歯をできるだけ長く使えるようにすること。

それも歯科医院の大切な役割です。

40代、50代は、これからの人生で自分の歯を何本残せるかを考える大切な時期です。

「痛くなったら歯医者」から、

「歯を守るために歯医者へ」

へ。

まずは一度、現在のお口の状態を確認してみませんか?

やまのうち歯科医院では、むし歯や歯周病の治療だけでなく、定期的なメンテナンスを通じて、患者さんができるだけ長くご自身の歯で食事を楽しめるようサポートしています。

歯を1本でも多く残すために、今日からできることがあります。

気になる症状がある方、しばらく歯科医院を受診していない方は、お気軽にご相談ください。

やまのうち歯科医院

「治すから、守るへ。」


参考文献

Kusama T, Tamada Y, Miyano T, et al. Non-linear association between tooth loss and cardiovascular diseases among middle-aged adults. Journal of Periodontology. 2026. DOI: 10.1002/jper.70167.

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