コラム
2024年05月28日

歯周病の原因、診査診断する

栃木県宇都宮市の歯医者 やまのうち歯科医院の山之内です。

歯周病の以前の分類になります。
古い分類なら意味がないと思われますが、どのように変わっていったかという点では知っていてもいいと思います。
知らずにいたら困るものもありますので新しいことだけ覚えるのは怖いところもあります。

プラーク単独性歯肉炎
全身因子関連歯肉炎
①思春期関連歯肉炎
②月経周期関連歯肉炎
③妊娠関連歯肉炎
④糖尿病関連歯肉炎
⑤白血病関連歯肉炎
⑥その他の全身状態が関連する歯肉炎
栄養障害関連歯肉炎
①アスコルビン酸欠乏性歯肉炎
②その他の栄養不良が関連する歯肉炎

非プラーク性歯肉病変の分類
1)プラーク細菌以外の感染による歯肉病変
①特殊な細菌感染によるもの
②ウイルス感染によるもの
③真菌感染によるもの
2)粘膜皮膚病変
①扁平苔癬
②類天疱瘡
③尋常性天疱瘡
④エリテマトーデス
⑤その他
3)アレルギ一反応
4)外傷性病変

リスクファクターによる歯周炎の分類
1)全身疾患関連歯周炎
①白血病
②糖尿病
③骨粗鬆症/骨減少症
④ AIDS
⑤後天性好中球減少症
⑥その他
2)喫煙関連歯周炎
3)その他のリスクファクターが関連する歯周炎

歯周炎を随伴する遺伝疾患
1)家族性周期性好中球減少症
2)Down 症候群
3)白血球接着能不全症候群
4)Papillon-Lefèvre 症候群
5)Chédiak-Higashi 症候群
6)組織球症症候群
7)小児遺伝性無顆粒球症
8)グリコーゲン代謝疾患
9)Cohen 症候群
10)Ehlers-Danlos 症候群(Ⅳ・Ⅷ型)
11)低ホスファターゼ症
12)その他

1)歯肉病変(いずれも限局型,広汎型に分けられる)
(1)プラーク性歯肉炎
歯肉辺縁に存在する細菌群によって発症する歯肉の炎症である。臨床所見としては歯肉の発赤,浮腫,出血,疼痛,腫脹などがみられる。しかし,エックス線所見やアタッチメントレベル(付着レベル)における支持組織の喪失はない。
病理組織所見では,接合上皮の根尖側あるいは側方への
増殖,接合上皮付近の毛細血管の拡張,コラーゲン線維の破壊および炎症性細胞浸潤などがあげら
れる。
(2)非プラーク性歯肉病変
細菌性プラーク以外の原因によって生じる歯肉病変である。分類を表 3 に示す。
(3)歯肉増殖
歯肉組織のコラーゲン線維の過剰増生による歯肉肥大である。プラークコントロールを徹底する
ことで,発症や再発をある程度防止できる。
a.薬物性歯肉増殖症
原因となる薬物として,フェニトイン(抗てんかん薬・ヒダントイン系薬),ニフェジピン(降圧薬・Ca 拮抗薬),シクロスポリン A(免疫抑制薬・カルシニーリン阻害薬)などがある。
b.遺伝性歯肉線維腫症
遺伝的に特発性に発現するものがある。歯肉辺縁,歯間乳頭,さらに付着歯肉に及ぶ歯肉の増殖性の腫脹をきたす,ごくまれな疾患です。
発症は乳幼児期で,上下顎の頬舌側に腫脹がみられますが,
抜歯後には消退します。
常染色体劣性,または常染色体優性と遺伝的な傾向を示す報告もみられます。

(4)HIV 感染に関連してみられる歯肉病変
日本歯周病学会による歯周病分類システム(2006)に記載はないが,HIV 感染者には帯状歯肉紅斑および壊死性潰瘍性歯肉炎という歯肉炎がみられることがあります。
帯状歯肉紅斑は,通常 HIV 非
感染者ではあまりみられず,複数歯の歯肉辺縁に沿って 1 ~ 2mm 幅の帯状の発赤が生じることを特徴です。
2 つの特徴的な歯肉病変は免疫機能の低下(CD4 リンパ球数の減少)によって引き起
こされることから,これらの歯肉の異常所見から HIV 感染の早期発見につなげることができます。
2)歯周炎(いずれも限局型,広汎型に分けられる)
歯周炎は,細菌等によって歯周組織に生じる炎症性破壊性疾患であり,炎症は,歯肉辺縁から歯周組織深部に波及する。外傷性咬合などによって局所的に病変の進行が早まることもあるが,進行速度は比較的緩慢です。
特殊なタイプでは短期間で急激な進行もみられ,その進行の程度は全身
の生体防御機能に影響されます。

リスクファクター(誘因)による歯周炎の分類
(1)慢性歯周炎
歯周病原細菌によって生じる付着の喪失(アタッチメントロス)および歯槽骨吸収を伴う慢性炎症性疾患です。
以前は成人性歯周炎とよばれ,発症時期は 35 歳以後であることが多く認められます。
症状と
しては,歯周ポケット形成,排膿,出血,歯槽骨吸収および歯の動揺を認めます。
慢性に経過するが,
宿主側の組織抵抗力が低下したときに急性化します。
(2)侵襲性歯周炎
全身的に健康ではあるが,急速な歯周組織破壊(歯槽骨吸収,付着の喪失),家族内集積を認めることを特徴とする歯周炎です。
また,一般的には細菌性プラークの付着量は少なく,患者は
10 歳~ 30 歳代が多い傾向にあります。
患者によっては Aggregatibacter actinomycetemcomitans の存在比率が高くみとめられます。

3)壊死性歯周疾患(いずれも限局型,広汎型に分けられる)
歯肉の壊死と潰瘍形成を特徴とする。下記のような歯肉炎および歯周炎に分類される。
(1)壊死性潰瘍性歯肉炎
(2)壊死性潰瘍性歯周炎
診断上,急性と慢性に区別されます。
歯肉の偽膜形成や出血,疼痛,発熱,リンパ節の腫脹,悪臭
などの症状を伴います。
紡錘菌やスピロヘータ,あるいは Prevotella intermedia などとの関連が示されて
いる。
発症原因として不良な口腔衛生状態,ストレス,喫煙および免疫不全などが考えられる。
た,HIV 感染患者の口腔内所見としてみられることがあります。
4)歯周組織の膿瘍
(1)歯肉膿瘍
隣接する歯周ポケットからの細菌感染や歯肉に対する外部からの刺激,歯肉への外傷や感染によって,歯肉結合組織に形成された膿瘍です。
原因となる部位付近の歯肉に限局性の発赤,腫脹
がみられ,疼痛を伴うことが多い。また,歯周ポケットの有無にかかわらず生じます。
(2)歯周膿瘍
歯周組織内に発生した限局性の化膿性炎症によって,局所の組織破壊に,膿の貯留を呈する状態をいいます。
深い歯周ポケットの存在,さらに歯周ポケット入口が閉鎖されて限局性の化膿性炎症が深
部に存在している場合,咬合性外傷がある場合,糖尿病患者などにおいて感染抵抗性が低い場合などに発症します。
5)歯周 – 歯内病変
歯周,歯内各領域の疾患が,互いの領域に波及したものをいいます。
辺縁歯周組織と根尖歯周組織は
解剖学的に近接しているため,互いの領域に疾患の影響が及びやすい。
すなわち,辺縁歯周組織の
異常は根管側枝や根尖孔を介し歯髄に,また,歯髄側からの病変は根管側枝や髄管,根尖孔を介し辺縁歯周組織に影響を及ぼすことがあります。
6)歯肉退縮
辺縁歯肉の位置が,セメント – エナメル境(cemento-enamel junction:CEJ)から根尖側方向へ移動し,歯根表面が露出した状態をいいます。
加齢的なもの,誤ったブラッシングによる機械的なもの,辺縁歯
肉の炎症,対合歯喪失による廃用性萎縮などによって生じます。
歯根表面が露出すると,う蝕,摩耗,
象牙質知覚過敏などが生じることがあります。
7)咬合性外傷
咬合力によって生じる深部歯周組織(セメント質,歯根膜および歯槽骨)の傷害です。
歯肉に
炎症が存在しない場合にはアタッチメントロスは生じず,エックス線により歯根周囲の骨不透過像が認められます。
歯周炎の存在下に過度な咬合力が加わると歯周組織の破壊は増長します

歯肉病変は歯肉にのみ炎症性病変が生じたもので,セメント質,歯根膜および歯槽骨は破壊されていません。
種々ある歯肉病変のうち,臨床上主なものはプラーク性歯肉炎であり,以下にその特徴を示します。

歯肉病変の特徴
(1)原因は細菌性プラーク
口腔衛生管理が不良であると歯面に付着した細菌が増殖し細菌性プラークが形成され歯肉に炎症徴候が生じます。
炎症の程度は宿主の抵抗性等により変化します。
細菌性プラークは歯,歯肉,修復物および補綴物などに付着する多数の細菌とその代謝産物から形成されます。
さらに細菌性プラークが成熟すると異種細菌による共凝集が起こり,菌体外多糖
(glycocalyx)などの extracellular polymeric substances(EPS)によって被覆され,細菌バイオフィルム構造となります。
(2)炎症は歯肉に限局している
セメント質,歯根膜および歯槽骨に炎症は波及していません。
(3)歯肉ポケットが形成されるが,アタッチメントロスは認められません。
歯肉が炎症によって歯冠側方向に腫脹,増殖し,歯肉ポケット(仮性ポケット)が形成されます。
臨床的には,歯肉ポケット底部は CEJ に位置する。すなわち,アタッチメントレベルは変化しないのでアタッチメントロスや歯槽骨吸収はありません。
(4)プラークリテンションファクターによって増悪します。
プラークリテンションファクター(プラークコントロールを困難にしたり,細菌性プラークの停滞を促進する因子のプラークリテンションファクターがあると細菌性プラークを停滞・増加させ,歯肉炎は増悪します。
(5)プラークコントロールによって改善
ブラッシングをはじめとする口腔衛生管理を徹底し,主原因である細菌性プラークを除去あるいは減少させることによって,顕著に改善します。
また,プラークリテンションファクターを除去ある
いは修正することによって,歯肉の炎症はさらに改善します。
(6)歯周炎の前段階と考えられています
一般的に,プラーク性歯肉炎を放置すると炎症がセメント質,歯根膜および歯槽骨に波及し,歯周炎に進行します。
プラーク性歯肉炎のまま持続することもあるが,長期間放置すると大部分は歯周
炎に進行します。
歯周炎は歯肉に初発した炎症が,セメント質,歯根膜および歯槽骨などの深部歯周組織に波及したものです。
プラーク性歯肉炎が歯周炎に進行するには,通常,主原因である細菌性プラークの
長期間にわたる持続的な刺激が必要です
これには,細菌性プラークを増加させたり,細菌性プ
ラークの除去を困難にする因子であるプラークリテンションファクターおよび患者の生活習慣が大きく関与します。
歯周炎が進行する速度は,比較的緩慢で,数年単位で進行します。
しかし,外傷性咬合が加わると
破壊は急速に進行する。さらに,生体の防御反応に影響されます。
たとえば,重度糖尿病による歯周
組織の抵抗力の低下(白血球の機能低下や創傷治癒遅延など)および喫煙などの生活習慣も歯周炎の進行に関与します。
種々ある歯周炎のうち,主なものは慢性歯周炎であり,以下に慢性歯周炎の特徴を示します。
1)歯周炎の発症に関する特徴
(1)プラーク性歯肉炎が歯周炎に進行し,セメント質,歯根膜および歯槽骨が破壊されます。
歯周病原細菌によって産生される酵素や代謝産物などの影響によって生体の防御機構,主として免疫機能が亢進し,歯肉の炎症性破壊がセメント質,歯根膜および歯槽骨に波及します。
(2)アタッチメントロスが生じ歯周ポケットが形成されます。
歯と歯周組織との付着機構が破壊され,アタッチメントロスが生じる。すなわち,歯肉の接合上皮(付着上皮)や結合組織性付着の位置は CEJ から根尖側に移動し,歯肉は歯根から剥離します。
そうして、歯周ポケット(真性ポケット)が形成されます。
歯周炎の特徴
(3)歯周ポケットが深くなると歯周病原細菌が増殖し炎症を持続させます。
歯周ポケット内は歯周病原細菌が増殖しやすい嫌気的な環境であり,細菌や有害な細菌代謝産物等が歯周ポケット上皮を通過して歯肉内へ入り込みます。
慢性歯周炎では,Porphyromonas ginigivalis,
Tannerella forsythia,Aggregatibacter actinomycetemcomitans,Fusobacterium nucleatum および Treponema denticola などが歯周炎の活動部位に多く検出されます。
2)歯周炎の進行に関する特徴
(1)プラークリテンションファクターによって増悪
プラーク性歯肉炎同様,口腔衛生管理を困難にするプラークリテンションファクター(歯石,歯列不正,歯肉歯槽粘膜部の異常,不適合修復・補綴物,歯の形態異常,食片圧入,口呼吸,口腔前庭の異常,歯頸部う蝕,歯周ポケットなど)が存在すると歯周炎は増悪します。
歯周ポケットが形成
されると,歯周ポケット内部は患者自身で衛生管理できないため細菌性プラークはさらに増加し,歯周炎をより進行させます。
(2)外傷性咬合が併発すると急速に進行
早期接触,強い側方圧,ブラキシズムなどの外傷性咬合が併発すると,歯周組織の炎症は増悪し組織破壊は急速に進行し,垂直性骨吸収(angular bone defect),骨縁下ポケットが形成されることがあります。
したがって,外傷性咬合は歯周炎増悪の重要な局所性修飾因子です。

(3)進行度に部位特異性
感染している歯周病原細菌の質(種類)や量および局所性修飾因子などの違いで,同一患者の口腔内においても,部位によって歯周炎の進行度に大きな差異がみられます。
(4)休止期と活動期
一般的に歯周炎は慢性疾患といわれていますが,歯周組織の破壊は常に一定速度で進むのではなく,活動期に急速に進行します。
活動期か休止期かを1 回の検査で診断する方法はまだ確立されてなく,
通常,アタッチメントロスや歯槽骨吸収が急速に進行した場合を活動期,その部位を活動部位とよんでいます。
(5)歯周炎が進行すると悪循環が生じ,さらに急速に進行しやすくなります。
歯周ポケットが深くなると歯周病原細菌が増加します。
また,深い歯周ポケットでは,浅い歯周ポ
ケットよりアタッチメントロスを生じやすくなります。
さらに,歯槽骨吸収などによって支持力が低下
すると二次性咬合性外傷が生じ,細菌感染と合併して歯周組織破壊が進行します。
3)歯周治療に関する特徴
(1)原因除去によって歯周炎は改善あるいは進行停止します。
原因除去療法を主体とした歯周基本治療によって,軽度歯周炎は健康を回復し,進行が停止する。しかしながら,中等度以上の歯周炎では,歯周外科治療および口腔機能回復治療が頻用され,より複雑な歯周治療が必要となります。
一般的に,現在日常で行われている歯周治療では歯周組織再生療法
を含め,失われた歯周組織の完全な再生を期待することは困難です。
(2)歯周治療の一環として生涯にわたるサポーティブペリオドンタルセラピー(SPT)およびメインテナンスが不可欠である主原因である細菌性プラークおよび外傷性因子が口腔内に常に存在すること,適切な歯周治療を行っても深い歯周ポケットや根分岐部病変が残存する場合もあること,および長期間でみると全身的因子の影響を受けることもあることなどから,歯周炎は再発の危険性が高くなります。
したがって,歯周
基本治療,歯周外科治療,口腔機能回復治療によって健康になった,あるいは病状安定となった歯周組織を長期間維持するための歯周治療の一環としての SPT および健康管理としてのメインテナンスが不可欠となります。
SPT は,歯科医療従事者によるプラークコントロール,スケーリング・ルー
トプレーニング,咬合調整などの治療が主体となります。
一方,メインテナンスは,患者本人が行うセ
ルフケア(ホームケア)と専門家が行うプロフェッショナルケア(専門的ケア)から成り立っています
歯周病は,プラークコントロールが不十分だと容易に再発しやすくなるために SPT やメインテナンスが必須となります。
また,これらを適切な間隔で行うことによって歯を長期間保存し,機能さ
せることが可能になります。

古い分類だから意味がないわけではありません。
粘膜疾患がメインとなっているので、歯周組織というより全身疾患の口腔の部位の疾患に近いと思います。
それは、海外の歯科は、医学部の歯学科という分類に近いからといわれています。
大学によって、その内容はまちまちといわれています。
以上が私の私見を含めた内容ですが、新しい分類になったからと言って治療内容が変わったとか治療法が変わったわけではありません。
皆さんの口腔の健康を改善するために頑張りましょう。

新しい歯周病の分類は以下になります。興味のある方は下記をクリックしてください。

歯周病の分類(2017年アメリカ&欧州歯周病学会)

やまのうち歯科医院

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