親から子供に虫歯菌がうつるって聞いたけど本当ですか?

栃木県宇都宮市兵庫塚町の歯医者 やまのうち歯科医院の山之内です。

親子間で虫歯が伝播するから、食具は一緒にしない方がいいといわれたのですが本当でしょうか?

論文は、2011年に東北大学から発表された論文で、口腔内細菌の垂直感染を防ぐ行動と3歳児のう蝕経験との関連について調べています。
保護者と子どもの間で食具を共有しないことや、口から口へ食事を与えないことが、子どものう蝕リスクを低くするかどうかを評価しています。

調査方法

今回の研究では、3歳児歯科検診と保護者へのアンケート結果をもとに、3,035人の子どものデータが分析されました。
先述した通り、今回は口腔内細菌の垂直感染を防ぐための行動として、以下の2つが子どものう蝕経験に影響するかを調べています。

  1. 保護者が子どもの食具を共有しないこと
  2. 保護者と子どもの間で口から口への食事を与えないこと

食具の共有は、う蝕リスクに影響について

垂直感染の予防を行った保護者は、口腔衛生行動が良好である傾向があったものの、垂直感染を防ぐ行動と子どものう蝕経験との間に有意な関連性は示されませんでした
垂直感染(vertical transmission)は、感染症が親から子へ伝播するプロセスを指します。
歯と垂直感染の関係については、いくつかの感染症や疾患に関連して考えることができます。
妊娠中の感染症: 妊婦が特定の感染症にかかると、その感染症が胎児に垂直感染する可能性があります。例えば、サイトメガロウイルス、ヘルペスウイルス、サイフィリス、HIVなどの感染症が考えられます。これらの感染症は、胎児の発育や健康に影響を与える可能性があるため、妊婦の適切な医療ケアが非常に重要です。
垂直感染は感染症の予防と管理が重要であり、特に妊娠中や乳幼児期には特別な注意が必要です。
歯と口腔健康もその一環として考えることが重要で、家庭内での感染リスクを最小限に抑えるために適切な予防策と医療ケアが必要です。
したがって、親子間で食具を共有しないことや、口から口へ食事を与えないことは、小児期のう蝕レベルを下げることに対して、効果的でなかったことを示唆しています。

この研究に対する考察

今回の論文では、う蝕リスクを回避するために、親子間で垂直感染を防止することは効果的でないと示されました。
この論文は、システマティックレビューなどの信頼性が高い研究ではないものの、被験者が3,035人もいる日本の研究であることから、知っておいて損はない論文ではないかと考えます。
システマティックレビュー(Systematic Review)は、科学的な方法を用いて過去の研究文献を包括的に収集し、評価し、統合するプロセスのことです。

主な特徴は以下の通りです:

  1. 目的明確性: システマティックレビューは特定の研究質問や疑問に対する回答を提供することを目的とします。研究の範囲と目的が明確に定義されています。
  2. 文献収集: 研究者は関連する文献を包括的に収集します。これには電子データベース、学術論文、専門書、報告書などの情報源を使用することが含まれます。
  3. 厳格な選択基準: システマティックレビューでは、研究の選択に関する厳格な基準が設定されます。これにより、適切な研究だけが含まれ、バイアスが最小限に抑えられます。
  4. 評価とデータ抽出: 選択された研究は、品質評価のために評価され、データが抽出されます。品質評価には、研究デザイン、バイアスのリスク、統計的有意性などが含まれます。
  5. 統合と分析: 収集されたデータは統合され、合成的な分析が行われます。これにより、研究結果のパターンや一貫性を特定することができます。
  6. 結論と要約: システマティックレビューの最終段階では、結論がまとめられ、証拠の質や研究の限界が議論されます。結論は科学的根拠に基づいているため、意思決定や政策形成に役立ちます。

システマティックレビューは、医学、社会科学、教育、環境科学などの多くの分野で広く使用されています。特定の研究分野における知識の最新の要約や、治療効果の評価、政策決定のサポートなどに役立つ方法論です。
また、システマティックレビューはメタアナリシス(統合的な統計的分析)を含めることがあり、合成的な結論を導き出すために統計的手法を用いることも一般的です。
システマティックレビューは、最も高いエビデンスですが、専門家がいう意見も最も低いものですがエビデンスの一つです。

これまでも、う蝕の病因論では S.mutans などの特定の細菌がう蝕を発生させる「特異的プラーク仮説」という説が支持されてきました。
生態学的プラーク仮説(Ecological Plaque Hypothesis)とは、歯科学および歯周病の研究分野で提案された仮説です。
この仮説は、歯周病(歯肉炎や歯周組織の炎症を含む口腔内の疾患)の発症と進行において、口腔内の微生物生態学が重要な役割を果たすという考えに基づいています。

生態学的プラーク仮説の主要なポイントは以下の通りです:

  1. プラークの形成: 歯の表面には日常的に細菌が付着し、これらの細菌がプラークと呼ばれるバイオフィルムを形成します。
    プラークは、細菌、細胞のデトリタス、唾液成分などが結合した微生物コミュニティです。
  2. 細菌の多様性: 口腔内の微生物は非常に多様で、さまざまな種類の細菌から構成されています。
    これらの細菌は共生関係や競争関係にあり、微生物コミュニティのバランスが重要です。
  3. 歯周病と細菌の関連: 生態学的プラーク仮説によれば、歯周病は特定の病原性細菌の増殖やバイオフィルムの変化に関連しています。
    特定の細菌が優勢になることで、炎症反応が引き起こされ、歯周組織への損傷が進行するとされています。
  4. ホスト因子の影響: ホスト(患者)の免疫応答や遺伝的要因も歯周病の進行に影響を与えるとされています。
    ホストの免疫応答が細菌叢にどのように影響を与えるかも考慮されています。

この仮説に基づいて、歯周病の予防や治療においては、細菌の増殖やプラークの管理が重要です。
口腔内の微生物生態学を理解し、バランスを保つための口腔衛生習慣や専門的な歯科治療が行われています。
歯周病の治療と予防には、歯ブラシ、フロス、定期的な歯科検診、プロフェッショナルなクリーニングなどが含まれます。

そのため、う蝕病原菌をもつ親の口から、無菌状態に近い子どもの口に細菌が感染する機会が多いと、子どものう蝕リスクが高まってしまうといわれていました。
しかし近年では、頻繁に糖を摂取することによってプラーク内の細菌叢が変化し、歯面の脱灰およびう蝕を進行させる「生態学的プラーク仮説」が支持されるようになり、う蝕の発生や進行にはさまざまな細菌が関与していることが明らかになっています。
今回の論文は、この生態学的プラーク仮説を裏づける論文の一つともいえるのではないでしょうか。

一方で、「垂直感染の予防を行った保護者は、口腔衛生行動が良好である傾向があった」という結果がでていることから、「保護者の口腔衛生に対する意識が高いがゆえに、垂直感染を予防する行動を起こしている」こともうかがえます。
そのような意識の高い保護者の方に間違った情報を伝えないよう、患者さんに正しい情報を提供し続けられる歯科医療従事者でありたいですね。
毎日同じ環境で働いていると、歯科医院での当たり前が、自分の中の当たり前になっていることがあります。
ネットで調べると、様々なことが書かれています。
正しいこと、間違っていること、一部間違っていることなど様々です。
とあるがん専門医が、専門誌ではない一般向けの本で、売れている本のうち正しいことが書かれている本はごく一部であることを話されていました。
自分が正しいと思っていることに自信をもつためにも、客観的な視点で、活かせる知識を身につけられるよう、日々学んでいきたいものです。
楽に改善できるのであれば、そちらになびくのは当然かと思います。
ただ、間違った方法をしてしまうと後悔してしまう可能性が高くなってしまいます。
皆さんも正しい知識を得て正しい行動をとってください。
この文献も、現段階での仮説です。
常に新しい情報を手に入れてお口と体の健康を保ちましょう。

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