妊娠中の歯科治療は大丈夫?

栃木県宇都宮市兵庫塚町の歯医者 やまのうち歯科医院の山之内です。

妊娠中の歯科治療について書いてみたいと思います。

昔の人の言い伝えで、「妊娠するとおなかの赤ちゃんに歯のカルシウムを奪われるから、歯が悪くなる」「子どもを1人生むと、1本歯が抜ける」などというものがありました。
これらはもちろん事実ではありませんが、妊娠すると口内環境が変化して、むし歯や歯肉炎などのトラブルが起こりやすくなるのは本当です。
昔の人は、理由はわからないけど実体験で分かっていたのですね。
まず、妊娠をすると女性ホルモンが増加します。
その影響で歯ぐきが腫れやすくなったり、出血しやすくなったりします。
また、だ液の量や質が変化するので、だ液の量が減少して口の中がネバネバしやすくなります。
だ液の量や質が変化することで、だ液の働きも低下してしまうので、口の中の細菌が増えやすくなります。
口の中も虫歯になりやすい酸性に傾きやすいので注意が必要です。
さらに妊娠中は「つわり」が原因で、歯ブラシを口の奥まで入れるのが難しくなり、うまくみがけずに不衛生になりやすくなります。

また、食べものを口に入れていないと気持ち悪くなる「食べづわり」の人は、間食のペースが増えてむし歯のリスクが高まります。
妊娠後期になって胃が子宮に圧迫され、食事を少しずつしか食べられない時期なので、食事の回数が増えるのでお口の中が酸性に偏りやすく、必然的にむし歯になりやすくなる傾向にあります。

1990年に秋田県の40~59歳の男女1211人(男性562人、女性649人)を対象に、健康状態、生活習慣をヒアリングし、15年後の2005年に歯科検診を実施。第三臼歯を除く28本の永久歯のうち何本残っているのかなど、歯の健康状態について調査しました。
また、出産回数を0回、1回、2回、3回、4回以上の5つのグループに分け、残存歯数を調べたところ、出産回数が4回以上の女性は、0回または1回の女性に比べ約3本少ない結果となりました。
また、奥歯のうち上下で噛み合っている永久歯のペア数についても、出産回数が多いほど少ないという結果に。この傾向は女性に見られ、男性については子どもの数と残存歯数との関連性は見られませんでした。
植野准教授はこの原因について、「妊娠や出産のプロセスに伴い、ホルモンや口の中の細菌のバランスが変化し、免疫力が低下することで、う蝕になりやすかったり、歯周組織の破壊が起こりやすくなったりします。
妊娠ごとにそれが繰り返されることで歯の喪失に至るリスクが高まると考えられる」としている。
また、「妊婦の半数以上が歯科治療を避ける傾向があり、妊娠中に歯が悪くなることは仕方がないと考えている傾向がある」とのことです。

妊娠や出産による歯の健康の悪化を防ぐためには、妊婦に対し、歯の疾患予防を積極的に啓蒙する必要があるのではないのではないかと考察しています。
妊娠や出産する前に、しっかり予防すること悪くさせないようにすることが大事だという啓蒙活動が足らなかったのでしょうね。

では、歯科医院に行くときはどの時期がいいのでしょうか?
一般的に、一番好ましい受診時期は妊娠中期の5~7ヶ月頃といわれています。
なぜこの時期に行うことが良いとされているかは後述に記載しています。
妊娠中の治療は、過度の緊張を避けるため、また長時間にわたる治療はせず、応急処置のみ程度にとどめるようにといわれています

この時期であれば、ほとんどの方が問題なく虫歯治療をお受けいただけます。
母体に負担がかかる為、体調をお聞きしながら処置をおこなうようにしています。
妊娠の特徴である炎症および免疫体の反応の亢進により、妊娠中は歯周病状態が悪化することが多く、妊娠中の患者さんに歯周病の方は多くいらっしゃいます。
歯周炎と妊娠の有害事象の関連性については、文献上相反する研究結果があります。
また、歯周病治療が妊娠の有害事象を有意に減少させるという結果は得られていないといわれています。
妊産婦の患者さんは不安や心配事を抱えてりることがあり、そのため、多くの歯科医師は歯科治療に消極的になることがあります。
しかし、妊娠中の予防歯科治療や単純な歯科治療は安全といわれています。
診断用X線写真は、どうしても必要な場合は、妊娠第1期以降に実施することができるといわれています。
鎮痛剤や歯科で使用する麻酔薬も安全であると考えられています。
感染症の場合は、アモキシシリン、アンピシリン、セファロスポリンやマクロライドなどの抗菌薬も処方します。
器官形成は、胎児が重度の奇形を起こしやすい時期である第1期で行われます。
歯科治療の理想的な時期は、第2期(17週目から28週目)です。
しかし、急性の痛みや感染症がある場合は、歯科医師の介入が絶対に必要であり、緊急の治療は妊娠期間中ずっと行うことができます。

歯周病について

最近の研究では、歯周病の悪化と Porphyromonas gingivalis や Prevotella intermedia などの「red complex」と呼ばれる歯周病のリスクが高い菌の増加との関連が報告されました。
しかし、妊娠中も細菌間の比率は変化しないとも言われています。
別の研究では、妊娠中と非妊娠中の女性の細菌量を測定し、Campylobacter rectusが妊娠中の女性で高いことを明らかにしました。
この結果は、この細菌のレベルが体内の女性ホルモンレベルに直接関連しているとも言われています。
結論として、妊婦の歯周病悪化の主な原因は、病原性の量的・質的組成が変化していないプラークには見出せないことがわかりました。
妊娠中は、炎症マーカーの発現が亢進していることからわかるように、炎症反応が非常に活性化しています。

虫歯について

妊娠中や授乳中の唾液組成の変化は、一時的に歯を侵食や虫歯にする素因となることがあります。
しかし、妊娠中や出産直後のむし歯の発生率の上昇を示した研究はありません。
いずれにせよ、既往のむし歯や未治療のむし歯は、進行するリスクが高いといわれています。

早産について

早産は、歯周病と最も関連性の高い妊娠中の有害事象です。
低出生体重児や子癇前症も歯周病と関連があります。
歯周病と妊娠の有害な転帰との正の相関を強調する論文もいくつかありますが、矛盾した結果となっており歯周病が妊娠悪阻に与える影響は未解決のままになってます。
ただ、妊娠中に歯周病が悪化しやすいことだけは証明されています
ヒトを対象とした観察研究では、歯周病と早産 、膜早期破裂、子宮前症、流産、産後子宮内膜炎などの妊娠の有害事象との正の相関を報告しているものがあります。
Davenportらは、2002年に早産児236名と経産婦507名を対象としたケースコントロール研究を発表しています。
その結果、分娩時にポケットの深さを測定した患者では、早産や低体重児出産のリスクが低いことが報告されました。
そのため、妊婦の歯周病の改善が妊娠予後の改善につながるという仮説を支持する結果にはならな いと結論づけたようです。
Mooreらは、大規模コホート研究および小規模ケースコントロール研究において、早産と歯周病の相関を見いだせませんでした。
Lafaurieらは症例対照研究において、歯周ポケットの存在は子癇前症の危険因子ではないと結論づけたが、歯周ポケットと膜早期破裂、低出生体重、早産との関連性を報告しました。
以上の文献により、妊娠前に歯周病治療と虫歯予防を行うことをお勧めすることがわかります。

 

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歯科Q&A 歯周病は、なりやすい人はいますか?

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