意外と知らない味覚障害

栃木県宇都宮市兵庫塚町の歯医者 やまのうち歯科医院の山之内です。

今回は味覚障害について書いていきたいと思います。

味覚障害は、味がわからない、味が薄く感じるなど、味覚の低下や異常によって生活に支障が出る状態です。
味覚障害が起きると、食欲がなくなって栄養不足になったり、味付けが濃くなって塩分や糖分をとりすぎたり、健康に影響が及ぶこともあります。

味覚障害は、味を感じる仕組みが何らかの原因でうまく働かなくなることで起こります。
私たちが食物を食べると味を感じるのは、舌の表面の乳頭という細かいブツブツの中の、「味蕾(みらい)」というセンサーが働くためです。
「味蕾」の中には、味を感じる細胞、味細胞があって、甘さや塩辛さなどの味を感知しています。
感知した味は味覚神経を介して、脳の中枢に伝えられます。

これに加え、嗅覚でとらえられた香りなどの情報も脳に伝えられます。
さらに、食べ物の硬さなどは触覚、噛んだ時の音は聴覚、見た目は視覚でとらえられます。
こうしたすべての情報が、脳の前頭葉で統合され、私たちはおいしさを感じるのです。

味覚障害の主な原因は、「加齢」、味を感じる細胞の再生を促す「亜鉛」の不足、口腔内が乾燥する「口腔疾患」、鼻づまりやアレルギー性鼻炎などによる「風味障害」、糖尿病や腎臓・消化器などのさまざまな病気の「合併症」、「薬の副作用」、ストレスによる「心因性」などです。

味覚障害の診療は、耳鼻咽喉科が専門です。
全国の大学病院では、味覚障害を専門的に診てもらえます。
また歯科や内科が原因の場合もありますので、そのような診療を行っていることもあるので、最寄りの医療機関で、味覚障害に対応してもらえるか調べてから受診するのがよいでしょう。

味覚障害かどうかは、問診、視診、血液検査や尿検査、味覚検査によって診断されます。
問診では、自覚症状や症状が続いている期間、味覚障害を起こす可能性のある病気の有無、薬をのんでいるかなどを確認します。
血液検査では、肝臓や腎臓の機能や、亜鉛欠乏があるかなどを調べます。

味覚障害になると、食の楽しみが減るばかりでなく、食欲不振から栄養不足になったり、味付けが濃くなって塩分や糖分をとりすぎたりと、栄養障害の危険性も高くなるため、早めに受診し、対処することが大切です。

おいしい食べ物を楽しんで食べることは、人生の大きな楽しみの一つです。
そのために味覚は大切な役割を果たしています。
味覚が感じられないと、食べることも、飲み込むことも不快に感じ、また腐った食べ物や毒をもつ食べ物の味がわからないと、生命にとっても危険です。

味覚の働きとしては次のようなものがあります。

  1. 食べ物の味を感じ、食欲を刺激する。
  2. 食べ物の味を弁別し、危険なものを食べないようにする。
  3. 唾液を分泌させる。
  4. 消化液の分泌を促し、消化を促進する。
  5. 生体に必要な成分を含んだ食べ物を選択して摂取することを助ける。

舌のみではなく、軟口蓋および咽頭も味覚に関わっています。
味覚の支配神経は下記のように分かれています。

  • 舌の前2/3:顔面神経(鼓索神経)
  • 舌の後1/3:舌咽神経
  • 軟口蓋:大錐体神経

これらの神経自身、あるいはこれらの神経の中枢になんらかの異常が生じると味覚異常が生じ、味覚低下が認められることとなります。神経性の味覚異常は、まれに脳腫瘍、外傷・手術等の合併によって認められます。
ほとんどの味覚異常は末梢性で、味の伝達を行う味蕾の減少・萎縮、唾液分泌の低下、さらには唾液中の非生理的物質が排泄され、それが異常な味物質として働くことにより生じます。

味覚には「甘味」、「酸味」、「塩味」、「苦味」の4基本味覚をはじめとする様々な味覚があります。この味覚を伝達するのが味蕾という味覚受容器です。
味蕾は舌では表面の乳頭中に、軟口蓋・咽頭では粘膜直下に存在します。舌乳頭が何らかの原因で萎縮・減少すると味蕾の数も減少し、味覚が減退することとなります。
舌の表面は 『舌乳頭』 という突起に覆われていて、これには4つの種類があります。
舌の全面を覆い先の尖った指のような形をしています。
舌乳頭は舌表面に見られる粘膜の突起で、角化して白く見える糸状(しじょう)乳頭、赤く見える茸状(じじょう)乳頭、後方部分に逆V字形に数個並んでいる有郭(ゆうかく)乳頭、後方の舌側縁でヒダ状になっている葉状(ようじょう)乳頭があります。

機能としては、食物をなめとりやすくしていて、舌の感覚を鋭敏にする感覚装置であるとも考えられているそうです。

味覚の異常

味覚の異常は大きく2つに分けられます。

  1. 味覚低下(無味覚)
    味覚の減退です。ある特定の味がわからなくなることもありますが、ほとんどは4つの味覚とも低下します。
  2. 異味覚
    異常な味がすること。また常時「渋味」が感じられたり、口腔に異常な味を覚える。

    原因により、それぞれにあった治療を行ないます。
    貧血:鉄分の投与
    唾液分泌低下:唾液分泌促進剤の投与
    カンジダ症:抗真菌剤による含嗽等
    薬剤の副作用:原因薬剤の服用を中止する
    歯周病:歯周病の改善治療

    細かく分類すると以下のようになります。

  • 乳頭の萎縮・消失……生理的(加齢的)、貧血などによる
  • 唾液分泌の低下……加齢、シェーグレン症候群などによる
  • 唾液中の非生理物質の排泄
  • カンジダ症
  • 医原性の味覚低下……がん治療(放射線、抗がん剤)により、唾液腺機能が障害され分泌低下、舌乳頭が萎縮することによる
  • 亜鉛の不足……食物中の亜鉛と薬剤がキレートをつくり、亜鉛の吸収が障害され、味蕾細胞の若返りが障害されることによる
  • 降圧剤、トランキライザー、抗生物質、抗アレルギー剤等による薬剤の作用
  • 歯周病
  • 特発性、心因性
  • 体感異常症(セネストパチー)

味がわからない、味が薄く感じるなど「味覚障害」の治療の基本は、まず亜鉛を十分とることです。
食事で十分にとれないときは、サプリメントや亜鉛製剤という薬が処方されることもあります。
不足している亜鉛を補うことで、味を感じる細胞の再生を促し、味を感じやすくします。
心因性の場合は、抗うつ薬や抗不安薬を使うなど、心の治療を行うことで味覚障害が改善します。
薬の副作用で味覚障害が起こっている場合には、担当の医師と相談しながら、服用中の薬を見直し、場合によっては薬を中止することもあります。
亜鉛を多く含む食品を積極的にとりましょう。
「牛肉やレバー」、「チーズなどの乳製品」、「牡蠣やカニ、いわしなどの魚介類」、「しいたけ」、「ワカメやひじき、もずくなどの海藻」に亜鉛が多く含まれています。

文献では、下記のようなものがあります。
1981 年 1 月から 1990 年 12 月までに、814 人の味覚障害患者が当科で治療されました。
男性患者と女性患者の比率は 2:3 で、ほとんどの患者は 60 歳代でした。

味覚障害は、薬物誘発性、外傷性口腔疾患、特発性疾患など、さまざまな要因によって引き起こされます。
薬剤性味覚障害が全体の23%、頭部および末梢神経外傷が15%、口腔疾患が14%、風邪が12%を占めた。
特発性味覚障害は 10% に存在しました。 ほとんどの患者は亜鉛で治療を受けました。
風邪後の完全回復率は68%、亜鉛欠乏症後は57%、特発性病因後は47%、薬物治療後は38%でした。
発症後1カ月以内に治療を開始した患者の完治率は78%だったが、発症後1カ月以上経過して治療を開始した場合は約40%となった。
したがって早期の治療が重要と考えられます。
 私たちは、味覚を評価する電気味覚測定法 (EGM) と濾紙ディスク (FPD) 法の有効性をテストし、一般的な臨床応用のためにそれらを簡素化することを試みました。

EGM は、臨床応用に十分簡単な、比較的正確な味覚神経検査の有効な方法であることが判明しました。
我々は、大浅錐体神経(軟口蓋領域)の検査は通常省略可能であり、両者に差異がない場合には片側検査で十分であると結論付けた。
左右はEGMにより検出されます。
FPD法では、「甘味」と「塩味」または「苦味」の2つの味の検査で十分であることが分かりました。

治療における経口亜鉛の有効性に関する研究。 味覚障害では、患者420人中285人(66.7%)で味覚が回復したことが示されました。
70歳以上の患者でも、発症後6か月以内に治療を開始した場合、高い割合で改善が見られました。
亜鉛の有効性は、特に特発性および亜鉛欠乏症の味覚障害患者において、グルコン酸亜鉛とプラセボによる二重盲検試験の結果における統計的有意差によって確認されました。

以上から、味覚異常などの症状が出たらできるだけ早く専門医療機関に問い合わせ治療を行うことがいいとされてますね。
あきらめず、すぐに医療機関に行くと予後が良好のようです。
皆さんも、お口の違和感が出ましたら専門医療機関に行くことをお勧めします。

 

 

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